私は、スピードを上げて歩き、森の奥へと入り込んだ。
幸いなことに。
私は船のパーティには制服で参加しており、履いていたのはブーツだった。
「早く乾かしたいな……」
先程の砂浜は日差しがよく、着ていた制服はすぐ乾いた。
しかし、ブーツはそう簡単には乾かない。
だが、あいつらの目についたら奪われるかもしれないから我慢していた。
サンディ、裸足だったしね。
あとどれくらいこの島にいるかは、わからない。
その間、あいつらと遭遇して邪魔されたり、隠し持っている装備を奪われてはたまらない。
また、別の生存者に出会う可能性もある。
私としては誰とも接触したくないから、隠れるポイントをいくつか見つけておきたい。
「お、バナナっぽいのがある」
私はちぎって、『冒険者魔法』のごくごく簡単な、鑑定魔法をかける。
冒険者ギルドでは、冒険者に『冒険者魔法』というものを有料で講座を開いている。
『冒険者魔法』はこういうサバイバルに向いている魔法を取り揃えている。
学院で学ぶ専門的なものとは違って、チープではあるけれど、生活に密着してバリエーションに富んでいる。
お貴族様からすると、庶民向けのくだらない魔法なんだけど。
便利なんだこれが。
お貴族様であっても騎士科などでは覚えさせられるようだから、馬鹿にしたもんじゃないんだけどね。
鑑定の結果、バナナっぽい果物は普通に食べられると出た。
よーし! 今日の食事はゲットだ。
私は手頃な木の上に登って、周辺を見渡した。
「……あそこはさっきいた砂浜か……」
海は食料の宝庫だ。
落ち着いたら、魚や貝をとりにいこう。
砂浜を中心にしてぐるっと見渡すと、高い山とそれに連なる低い山が島の中央。それを囲むように森。
森の中がどうなっているかは、直接歩いて見ないとわからない。
川か湖が欲しいところ。最悪沼でもいい。
多少淀んでいようと、冒険者魔法で水を抽出できる。
水属性魔法が使えたら、この海水にまみれた身体もすぐに綺麗にできるのになぁ。
さっき海水使って水を抽出したかったけど、あいつらがいたからやめたんだよね。
そんな事ができるの知られたら、きっと粘着されて良いように使われる。
「あ。滝がある……」
さっそく、水問題は解決!
滝があるなら、滝壺か川があるだろう。
目的地は決まった。
「お、
私は蔦をギシギシと引っ張って、安全を確認したあと飛び乗って、目的地の方へ飛んだ。
やってみたかった~。ターザン!
手は魔力で覆(おお)った。
魔力変質といって、自分の手を怪我しないように覆ったり筋力を補強できたりする。
魔力を持ってる人間は属性に関わらず、まずこれを習得する。
びっくりした鳥や虫が飛び立つ。
「いいね!」
風を切って気持ちいい。
目立って魔物やケモノに見つかるかもしれないけれど、これはちょっと爽快。
蔦は運良く次々見つかって、スムーズに目的地に着いた。
「わ! 綺麗!!」
滝と滝壺、そしてそこから川が流れている。
無害そうな鹿たちが水を飲んでいる。
「こんにちは、私も混ぜてね!」
いつか私の食料になるかもしれない方たちだ、丁重に挨拶しておかないと。
私は制服を脱ぎ捨てて、川へ入った。
滝壺は深さがわからないから、探索は今度にする。
水が澄んでいてとても綺麗な川だ。
すこし深い場所へ進んで身を屈める。
ちょうど座りやすい場所が見つかったので、腰掛ける。
水は冷たかったが、この島は気温が高めなので、心地よい。
「ふーーーーー」
まるで風呂で湯船にはいったかのような声がでた。
スッキリする~。
「さて、海水まみれの制服を洗わないとね」
私は魔力を使い、闇の球を浮かべ、そこから闇の腕を出し、制服を掴んだ。
私は闇属性の魔力持ちで、これは闇属性の魔法の一つだ。
素手より握力強いんよ。便利。
その闇の手で、制服もじゃぶじゃぶ洗う。
さて、制服も洗ったことだし、最後に髪を洗うか。
いや、誰も見てないから堂々、全裸ですよ! ヒャッハー!
ちなみに私は、金髪だ。ふんわり気味のストレート。
前世は黒髪でちょっとくせっ毛だったから、とても嬉しい。
ハニーブロンドいぇーい!
「テモテ、テモテ、テモテ~~♪」
前世でのコマーシャルソングを歌いながら髪を洗い流す。
「テ モ テッ!!!」
髪ぶんっ!!!
「はぁ~~ストレス発散だわぁ…………あ?」
……。
……落ち着こう。
……遠方に 人 影 あ り。
……私は目が良い方だ。
いるんだよ、人が。黒髪の男が。こっちを……口をあんぐり開けて見ている!!
ボサボサの長髪の黒髪に、おそらく青い瞳。
――そして、腰ミノだ!!!!! はっぱ隊だ!! そして肩に鳥が乗ってる!!
前世でいう原始人スタイルぁあああぁああ!?
「いやああああああああああああああ!!」
私は発狂した。
「うわうわうわうわうわうわあああああ!!」
私はとっさに制服やら持ち物、ブーツを持って逃げの体制に入った。
流石に全裸なので、衣類を持って逃げないわけにはいかない!
「?????????????っ」
私は混乱しながらも、とにかく走った。
少しだけ、振り返ると――
――ものっそいスピードで男が走り追って来ている!!!
「いやああああああああああ!!!」
速いッ!!
男の走る音が段々近づいてくる!
追いつかれてる!!
ああ、そうだ! 混乱して魔力使うの忘れて――
ドン!!!
「ああああああっ!?」
タックルされて、草っぱらに転がる!
あああああ、これは、ひょっとしてっ
クッ! 殺せ!!
ってやつ!?
……それとも人食い人種か!?
私タンパク質!? タンパク質になるの!?
どっちにしろ最悪だよ!!
「は、はなしてー!!」
私は暴れた。
「……!?」
ほぼ全裸の男が、全裸の私を押し倒して抱きつき、胸に顔を埋めている!!
なんだこの状況! 『くっ、ころ!』はイヤアああ!!
関係ないが、ついでに言っておくと、私は前世で言うDカップだ!
お、おまわりさーーーーーん!!