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 祖父の道場に戻る 1

 颯玄とサキは半年ぶりに祖父の道場に戻った。

 だが、確かに時間は経過しているが、実際に戻った時、2人にはそういう感じはなかった。まるでそのまま続けて通っていたような感じだったのだ。

 だが、まず祖父のところに挨拶に行くのが筋ということを理解していた2人は、母屋の玄関を開け、声を上げた。

「颯玄とサキです。今、知念先生のところから帰りました」

 その声を聴いた祖父は奥から出てきた。

「おお、帰ったか。ゆっくり話を聞こう。こちらに来なさい」

 2人は奥の部屋に通された。その時の祖父の表情は知念と同じような感じだった。その様子はとても武人には見えない。まさに好々爺という感じだったのだ。

 颯玄とサキは交互に知念のところで経験した稽古の話や技の話をした。知念はその様子をニコニコしながら黙って聞いていた。その上で一言言った。

「2人とも良い経験をしてきたようだな。知念先生のところに行かせたのは良かったようだ。ところで、武術の話だけでなく、他にもいろいろ聞かなかったか?」

 何か見透かしたような質問だった。その言葉に思わず2人はお互いの顔を見た。

 祖父は2人の表情を見て、何かを悟ったような感じだった。

「では、庭に出て、知念先生から教わった技を見せてもらおうか」

 颯玄とサキはその言葉に従い、庭に出た。まだ、誰もいない。3人だけの場なので、ある意味気兼ねなく技を披露することができる。

 2人は互いに中段を意識した構えを取り、対峙した。颯玄たちはどういう技を見せたら良いのか分からなかったので、基本的な技ということでサキが右中段追い突きで仕掛けた。颯玄はそれを奥足である右脚を中心に左脚を左方向に開くようにして躱し、右手でサキの手首を捕り、同時に裏肘に左掌底を当て、肘関節を極める技を披露した。

 祖父の顔を見ると、表情が曇っている。

「なんだ。半年も稽古していたのにそれくらいのことしかできないのか。知念先生から何を学んできた。それでよく帰ってきたな」

 ちょっと強い口調で言った。2人にとっては意外な雰囲気だったが、何を見せれば良いのか分からなかったので、基本的な技を披露しただけという気持ちだった。

「じゃあ、どんな技を見せれば良い?」

 颯玄が尋ねた。それに対して祖父が言った。

「実戦では右中段追い突きでしか攻撃しないのか?」

「そんなことは無い。いろいろな攻撃がある」

 少々むっとした感じで颯玄が答えた。サキも小さく頷いている。2人の表情からは知念のところで稽古してきたことを小馬鹿にされたように思われたのでは、という気持ちが出ていた。もとより、祖父にはそう意図はないが、2人はそう思ってしまったのだ。


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