「わしにはそう思えたからさっきの道場での稽古になったわけだが、お前を外間同様、しばらく知念先生に預けようと思う。そこで投げや関節技を専門にしっかり教わると良い。ただ、普通に行っても教えてはくれないはずなので、わしから手紙を書いておく。もちろん、別に紹介状もお前に持たせるが、しばらくそこで修行してこい」
話の流れからそうなるとは思っていた颯玄だが、実際に口に出されると心が揺れた。
しかし、颯玄以上に動揺したのはサキのほうだった。もともと颯玄を追いかけてこの場にいるサキなので、祖父の話で一気に顔が曇った。
「私も一緒に行きたい」
サキは祖父に直訴した。颯玄はサキの顔を見たが、その真剣な表情を確認するだけだった。祖父も颯玄もサキの性格からすればこういう展開も予想はできていたが、実際に言われると少し返事に詰まった。
この時、サキ以外の3人は顔を見合わせていた。そこで外間が言った。
「サキさん、気持ちは分かるか、今は颯玄の話だ」
「じゃあ、何故この場を私を同席させたのですか。納得できません。こういう話になるのであれば、私はここに来なかった」
サキは怒りと悲しみの表情で強い口調で言った。これまでのことからサキの性格は知っているつもりだが、実際にこういう雰囲気になるとなかなか収集がつかないであろうことも感じていた。
祖父と外間は顔を見合わせ、目で会話しているような状態になっている。一呼吸置いたところで祖父が口を開いた。
「サキさんがここに来た理由は分かっているつもりだ。そのことを考えると颯玄だけを知念先生に預けるという話は撤回しよう。2人で行きなさい。ただ、このことを許可した理由というのはサキさんの実力を認めた上でのことだ。もし、そうでないなら許可しない。この点はきちんと頭に入れ、決して知念先生に迷惑をかけないようにしなさい。出稽古は来月からということで手紙を書く。2人とも、そのつもりで」
サキの表情は祖父の言葉で一気に明るくなった。一方の颯玄はかすかに笑みを浮かべたような感じではあったが、なせそういう表情になったのかは颯玄自身もよく分かってはいなかった。
4人での話が終わった後、再び道場に戻ったが、3人は先ほどの小手返しについて、繰り返し自分たちの技の祖父の技の違いについて、各々で考え、それを互いに口に出して研究した。祖父はその様子を嬉し気な様子で黙って見ていた。