そう言われた2人は対峙し、構えた。先ほど祖父と颯玄がやったことを再現することになったが、今度は外間が相手だ。以前学んだことあるということだが、この技に特化して稽古を続けていたわけではない。だが指名があった以上、現時点でできることをやるしかないと考えている外間は颯玄からの攻撃を待った。
颯玄は呼吸を整え、先ほど同様、右中段追い突きで仕掛けた。それに対して外間は祖父のような感じで対応して投げることはできたが、何かぎこちない。手首を捕った後、強引に投げたといった感じなのだ。その様子はサキも感じていた。
「3人とも、どうだった?」
祖父が尋ねたが、異口同音にさっき見た技とは何かが違う、としか表現できない。
「颯玄は掛けられた側だが、どう違った?」
「最初の技の場合、自分の突きが吸い込まれるような感じで、いつの間にか投げられた。だから抵抗できず、自然に投げられたといった感じだった」
「そうか、ではサキさんにはどう見えた?」
「颯玄が何か感じれば抵抗したと思うけれど、その様子は見られなかった。だから、自然に、という言葉はよく分かります」
「うむ、ではその違いはどこからのことなのか、分かるか?」
「・・・」
2人ともそう問われても答えられなかった。
「そうか、ではもう一度見せる。注意してよく見ていなさい」
祖父はそう言うともう一度颯玄に突いてくるよう言った。先ほどと同じ結果になったが、やはり分からないと言う。外間にも話が振られたが、掛けた側としてもよく分からないという。ただ、力みがあったことは自覚していた。
「最終的には投げるというところまで行なうという意識でしたが、颯玄の腕に抵抗を感じたんです。だから、その力に打ち勝とうとしてつい力が入ってしまいました。おそらくその時、技の流れが一時中断されて、結果的にぎこちない動きになったのではと思っています」
「では、その力みを感じた理由というのは、颯玄の突きが重かったからか?」
「そうだと思います」
「颯玄は外間から手首を捕られた時、どう感じた。わしの場合と比較して考えなさい」
「終始柔らかく、何も抵抗が無かった。でも外間さんの場合、掴まれた瞬間、その感覚を感じて緊張した」
「そういう違いを外間と颯玄は感じたわけだな。わしは日頃の稽古の中で脱力の大切さや柔の意識について説いたことがあった。だが、今回の稽古ではその実践ができていなかった、ということだな。・・・それでは3人とも、部屋のほうに来なさい。他の者は自分の課題に沿って稽古しておくように」
祖父はそう言うと家の中に入り、颯玄たちは3人とも付いていった。