冷静な目で改めてサキの技を見たことになるが、基本もきちんとできているし、年も同じでしかも女性、どんな稽古をしてきたのだろうとその部分には颯玄も興味を持った。それが恋愛感情に結びつくことはなかったが、一空手家として道場にいる限り、しっかり見ていこうと思っていた。
今回、サキの技のお披露目として形を一つだけやってもらったわけだが、他の道場生たちも多かれ少なかれ、サキを女性として見るのではなく空手家としての側面を意識するようになった。その程度は人それぞれだが、この日はいつもと異なる流れになり、稽古は一旦ここで終了し、解散となった。
サキの家は颯玄の帰り道と途中まで一緒だ。他にも2人いるので、合計4人で帰ることになった。颯玄から見たサキは男勝りという印象が強かったが、みんなで帰る時、絶対に前を歩かない。なるべくみんなの後ろを歩くようにしている。しかも無口だ。一緒に帰る道場生のほうがサキに話しかけている。興味津々なのだろうが、最初にあった時の刺々しさは微塵もない。まるで別人のような感じだが、初日なのだからこんなものだろうと颯玄は思っていた。
途中でみんなと別れ、サキは1人で家のほうに帰ろうとしていた。
「送っていこうか?」
一緒に歩いていた真栄城が言った。
「おいおい、サキさんは下手な男より強い。お前が守ってもらうことになるよ。それとも何か他に下心でもあるのか」
冷やかすような感じで城間が言った。慌ててその言葉を打ち消す真栄城だったが、サキの表情は変わらなかった。そのような話には全く興味が無かったのだ。だが別れる際、サキは颯玄の近くに近づいて「また明日」とだけ言って1人で帰っていった。
「おいおい、お前の言葉でサキさんが変な風に思ったんじゃないか」
といった言葉で真栄城と城間は言いあっている。サキが意識しているのは颯玄だけなので耳を貸さないだけなのだが、これからの稽古の様子を心配する颯玄だった。