次の日、祖父に会った時、颯玄は昨日の稽古のことについて質問した。
「どうして昨日、何も言わなかったの? 何か問題があった? もしあれば直すから言って。もっと空手が上手くなりたいので、言われた通りにする。だから教えて」
昨日は祖父に対して質問する気も出なかったが、一夜明け、気持ちの整理がついていたので疑問を解消しようとしていた。
「颯玄、やっている時、途中までは何回やれば良いのかとか、どういう意味があるのかを考えながらやっていただろう。そしてある時を境に、そういうことを何も考えずにやるようになったな?」
祖父は颯玄の目を見ながら語り掛けるような感じで言った。
「そうだけど、何で分かるの? 昨日、何も話していないし、今言われたことは自分の中のことだ。外から見ているだけでは分からないんじゃないの」
不思議そうな表情で颯玄は言った。
祖父はわずかに笑みを浮かべながら、また静かな口調で颯玄に言った。
「そうだな、わしはお前からは何も聞かなった。尋ねもしなかった。だが、やっている様子や表情からどういうことを考えているか、感じているかはある程度分かる」
「えっ、そうなの?」
颯玄は不思議そうな顔で返事した。
「うむ、もし、お前が最初と同じような感じのままだったら、途中で止めて、何か言ったかもしれない。わしがそろそろ止めようかと思った頃、お前の様子が違ってきた。だから、それが本物なのかどうかを判断するためそのままにして、最後までやってもらった。そして、帰る時も何も言わなかったな。本気で教えるとなると、どこから始めれば良いかをどうしても考えてしまう。お前は大事な久米家の武術を継ぐものだ。わしはそう理解している。だからどうしてもいろいろなことを意識してしまう。昨日はお前の心の様子を見るためのことだった。前にも言ったように、武術の段階には
そう尋ねられでも、はっきりこうだった、というほどのことは無いと思っている颯玄に明確な返事はできなかった。それでも自分の言葉でできる限り説明を試みた。