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龍皇伝説 壱の章 龍の目覚め
藤堂慎人
現実世界スポーツ
2024年09月27日
公開日
116,358文字
完結
多くの空手家から尊敬を込めて「龍皇」と呼ばれる久米颯玄。その生涯を3部作で綴る第1章、「龍の目覚め」。幼いころから祖父の下で空手修行に入り、成人するまでの修行の様子を描く。
その中で過日の沖縄で行なわれていた「掛け試し」と呼ばれる実戦試合にも参加。若くしてそこで頭角を表し、生涯の相手、サキと出会う。強豪との戦い、出稽古で技の幅を広げ、やがて本土に武者修行を決意する。本章はそこで終わる。
この話は実在するある拳聖がモデルで、日本本土への空手普及に貢献した稀有なエピソードを参考にしており、戦いのシーンの描写も丁寧に描いている。

回想

「私の人生、ずっと戦ってきた。だが、未だ空手とは、という問いに答えを見出せない」

 武術界で尊敬を込めて”龍皇りゅうおう”と呼ばれる久米颯玄くめそうげんは言った。

 今、颯玄は一人、人里離れたほこらの中にいて、目を閉じ、禅を組んでいる。そこには何もない。中は昼なのに薄暗く、ろうそくが1本あるだけだった。

 外には穏やかな風が吹いている。空には雲一つない。

 穏やかな中で颯玄は自身に対して問い掛けている。それは幼い時の記憶をたどりながらだった。


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