■シュテルン邸 ジュリアンの部屋
「―――様! ジュリアン様、朝ですよ? 今日は冒険者ギルドにランクアップ申請に行く日ですよね?」
「ん……おはよう、ミツキ」
朝の眩しい光の中、微笑み浮かべるメイドの姿を確認すると俺は起き上がった。
初めて磁力魔法を使ってからすでに10年余りがたって、今では俺もAランク冒険者になる。
「着替えるから出て行ってよ」
「恥ずかしがらなくてもいいではありませんか、昔からのことですし」
「昔からだから嫌なの! 朝飯はギルドの酒場でみんなと食ってくるからいらないー」
「かしこまりました」
俺のお付きメイドのミツキを部屋から追い出した。
ベッドから降りて、俺は着替えはじめる。
動きやすい服に皮鎧を着こむのも5年前の始めての冒険者試験のことを思い出せた。
鉄板の仕込まれた小手とブーツをつけ、腰に鉄の剣を下げてれば装備は完了。
鏡の前でポーズを決めてしまうのは、昔よりも自信がついた証拠だ。
そのまま部屋を出て、冒険者ギルドへと俺は向かう。
■イーヴェリヒト 冒険者ギルド
鉱山都市イーヴェリヒトの冒険者ギルドは立派な建物で、今日も人が多くごった返している。
酒場も併設されているので、朝っぱらからお酒を飲んでいる人もまばらだがいた。
夜勤上げの炭鉱夫や昨日から飲み明かしている冒険者達もいる。
「ようこそ、冒険者ギルドへ。ジュリアンさんはランクアップですね」
酒場エリアから離れた場所にある受付へ足を運ぶと眼鏡をかけたデキる事務員という様子の女性が対応してくれる。
お気に入りの受付嬢のエミリアさんだ。
優しい微笑みは冒険者として登録し、いろんな依頼を受けている中でも変わらない。
俺は手続きを進めていきながら話をつづけた。
「もうAランクになるけど、何か特典とか制限とかあったりする?」
「そうですね、特典というものは高難易度ダンジョンへの許可がでます。イーヴェリヒトを離れた場所には冒険者ギルド管理でも難しいところもありますのでチャレンジしてみるのもいいかもしれません」
「なるほど、イーヴェリヒトを離れるかぁ……グラディアくらいしか行ってないから、見分広めにいくのはありか」
書類の記入をしながら、エミリアさんと話をする。
半年余りでAランクという超速にランクアップしたので、のんびりしたい気もする。
とはいっても、のんびり物見遊山にいったグラディアで面倒なことになったりもしたので、悩みどころだな。
エリカの住んでいたエルフの森に行くのもいいかもしれない。
「私はジュリアンさんのファンなので、応援していますよ」
「あ、ありがとう……ござい、ます」
「おうおう、ジュリ坊はおませだなァ」
「エミリアほどのナイスバディで色気あったら、男なら気にならないわけねぇだろよ」
急にファンと言われたことで、俺はドギマギしてたどたどしく答えてしまった。
その様子を見ていた先輩冒険者達が酒場の方からヤジを飛ばす。
言われていることが外れてもいないので、俺は文句ということなく手続きをして、仲間のいる酒場のテーブルに向かった。
◇ ◇ ◇
そこは朝からすでに出来上がっている面々がいる。
朝食を軽く済ませるはずが、打ち上げみたいになっていた。
集まるよういったときに俺が奢りといったのが悪かったのか? 誰か教えてくれ。
「Aランクたっせーおめでといぇーいにゃ!」
「うぇいうぇーいなのだ!」
「ああ、ジュリアンさん! リサさんを止めてくださいな」
「俺には無理。ただの筋力でいくと俺よりリサやセレーヌのほうが上だぜ?」
エリカが助けを求めるが、俺にはこのパリピどもを止められる気がしない。
酒場では派手な魔法は禁止されているし、どうしたものか……。
そう考えていた時、俺の頭にひらめきの豆電球が光る。
「これなら、静かになるだろ」
リサとセレーヌの血の流れを操作して、貧血を起こさせた。
割と多用するとマジで危ない業だが、酒場に迷惑が掛かるようなら仕方ない。
「あ、あの!」
騒いでいた二人をテーブルに突っ伏させて沈めた俺に声をかけてくる少年がいた。
俺と同じ10歳くらいだろうか、冒険者になれるギリギリの年齢だろう。
「ジュリアンさんですよね? 最年少、最速でAランクの!」
「ああ、俺が磁力魔法使いで魔法剣士のジュリアン・シュテルンだ」
まるでヒーローを見るような瞳の少年に向けて、俺は名乗りを上げるのだった。
俺だけ使える磁力魔法~追放された転生アニオタ貴族は最強魔法剣士になる~ 第一部 完