■焔の神殿 ダンジョン部 焔の祭壇
アリシアが魔法をとなると、俺達の体が宙に浮く。
ふわっとした感覚だが、不思議と体の動かし方はわかった。
溶岩で埋め尽くされた地面から離れられたことで、自由になる。
反撃のチャンスが来た。
「足場の問題はこれで解決よ」
「エリカ! エンチャントにゃ!」
「うむ! やるのだ!」
リサとセリーヌがエリカに指示をだす。
というよりも、いろいろと暴れたい子供のような感じだ。
リサは尻尾を振っているが、セリーヌも生えていたら、絶対ブンブンと振っていると思う。
俺とリサとセリーヌの武器に水の力が宿った。
「ジュリアン、作戦はどうするの?」
アリシアが金髪の髪を揺らしながら、上目遣いで俺の隣に来る。
5年前と変わらない綺麗な髪をしているが、紫を基調としたマントに魔法学園学生服を着ている姿は新鮮だ。
ま、10歳の子供だから見惚れるとかはないけどな。
俺の感覚では親戚の子供が大きくなった感じである。
「作戦の方だが、レイナがポーションで回復や氷結での足止め等、近接戦闘をする俺やリサ、セリーヌが接近する隙をアリシアとエリカが作ってくれ」
「ぷー、わかったわ」
俺が照れも気にすることもなく、さらっと作戦を提示したことに不服なのか、アリシアは頬を膨らませた。
こういった部分がまだまだ子供だし、可愛いところでもある。
「いくぞ、イフリート!」
二人だけではどうしようかと困っていたイフリートだったが、仲間が増えたことで安心感が強まっていた。
俺が先行して正面から斬りかかると、イフリート手を横に凪ぐ。
すると、地面から吹き出していた溶岩が吹きあがって炎の壁となった。
「それくらいで止まる俺じゃないぜ!」
目が回るから使いたくないが、アレをやるしかない。
ぶっつけ本番だが、あっちのパターンを試してみる!
「超電磁ぃぃぃ、スピィィィィン!」
剣を頭上に掲げ、俺自身を高速回転させた。
アニメやゲームで何度も見ていた技のイメージのまま、俺の体はいったん上空に上がったかと思うと、急降下しながら、勢いよく炎の壁を突き破ってイフリートに向かう。
回転している俺の目ではイフリートの表情は見えないが、おそらく驚いているはずだ。
ぶつかる相手の体がでかいので一気に貫くことだって行けるはずだと体当たりをしかける。
グサリと剣の刺さる感触がしたので、えぐるように自らを回転させながら貫いた。
「くぅ……これでも、目がだいぶ……回る」
「何を当たり前なことをいっているのだ?」
「バカなのかにゃ?」
俺がイフリートに攻撃を仕掛け、炎の壁を破って攻撃に成功したはずなのに脳筋な二人からバカにされてしまった。
辛い……。
でもさ、浪漫なんだよ、浪漫。
「腕を抉り取れたか……まぁ、ぶっつけ本番にしては上等だ」
よろよろとふらつきながらでは格好がつかないが俺は結果に満足する。
エリカのウンディーネのエンチャントがしっかり効くのであれば、あとは手数で攻めるだけだ。
「いくにゃよー!」
「私も負けないのだ!」
リサとセリーヌが競い合うようにイフリートへと飛び回りながら接近していく。
拳を突き出して迎撃しようとするイフリートを翻弄しながらも、一太刀、また一太刀と浴びせていった。
裂傷が増えていき、イフリートの顔がゆがみだす。
「ゴォォォォォォッ!」
イフリートが大きく叫ぶと炎で揺らめく髪が広がってそこから、火の玉がいくつも飛び出して俺達に降り注いできた。
「氷結ポーションにはこんな使い方もあるんや! なんちゃって、アイスウォール!」
レイナの叫びに合わせて、エリカがウンディーネを使って水の膜を俺達全員を包むように広げた。
そこに氷結ポーションが当たることで氷の壁が瞬時に出来上がる。
火の玉がぶつかっても、消えることなく壁は広がっていた。
「せっかくの氷を利用しない手はないわね。そーれっ!」
アリシアが呪文を唱えると、竜巻が起きて氷の壁を砕きそのままイフリートへと向かっていく。
普通の嵐のような風もさることながら、そこの混ざった氷の破片がイフリートを包み、傷つけていった。
「グゥゥゥゥゥゥ」
イフリートの動きが鈍り、よろめき始める。
だが、その氷の竜巻をはじき返すようにイフリートも周囲に炎の竜巻を作って氷の竜巻を相殺した。
「決定打にはなりえないか……さて、どうする?」
俺は弱りだしているイフリートを前に次の作戦を考え始める。
だが、その時だった。
俺の腹を炎の槍が貫き、抜けていく。
「あ……が……ふれで……」
抜けていったのは、俺の