■焔の神殿 ダンジョン部 焔の祭壇
あれからどれだけ立ったのか。
イフリートの召喚する火のモンスターを俺が蹴散らしながら、エリカがウンディーネと共にイフリートを牽制することを続けていた。
「じれったいな、おい……」
水の力を付与していても、相手は火のモンスター。鉄の剣は溶け始めており刃なんてあってないような状態である。
肉体的な疲労を持っていたポーションで強引に抑えて混んだ戦いは同じくじれったいと思い始めただろうイフリートの一撃で変わった。
地面に巨大な拳がたたきつけられ、変形していく。
グラグラと地震のように揺れて、吹き出すのは溶岩だった。
足場を潰して、こちらに攻撃をさせない作戦に入ったのだろう。
だって、イフリート浮いてるしな。
「フレデリックが巻き込まれる! 回収するから、エリカはウンディーネと一緒に下がれ!」
俺は大きく声を上げて指示を出すと駆け出した。
こんな巻き込まれで死なせるなんて、できない。
いろいろとバカやったりした奴だが、血を分けた弟なのだ。
加速した俺が弟の元へ駆け出して、戦闘中にもかかわらずぐったり倒れているフレデリックの体を掴んだ。
思ったよりも軽く、魔術ばかりをやっていた細さがある。
「美味いもん食って、ぶくぶく太っているよりかはいいけどよ!」
溶岩で沸騰するようにぐらつくはじめた地面の上を走りだした。
ボフンボフンと地面が割れて溶岩が噴き出す。
「ジュリアン!」
遠く離れているエリカが叫んでいるのを見るが、俺の目の前からは溶岩でできた柱がいくつもの出来上がっていた。
「逃がしちゃくれないか……」
フレデリックを抱きかかえながら、イフリートの方を振りむく。
仲間と分断したことで、余裕の笑みを浮かべているイフリートがさらなる火炎の渦を手から放った。
移動しようにも溶岩で動けない中では回避は難しい。
もうダメかとフレデリックを守るように、俺が体を火炎の渦のほうに向ける。
熱が俺を襲ってくるかと思ったら、いつまでたっても熱が襲ってこなかった。
「何が起きたんだ?」
俺が振り返ると、俺の周囲に泡のような膜が俺を包んでいる。
「これは水魔法!? 誰が……」
「間に合ったね。積もる話は後にして、イフリートをなんとかするよ!」
俺が声の方を振り向くと、眩い金髪をなびかせて、空を浮いている少女がいた。
フレデリック達と同じ、魔法学園の制服に紫色のマントを付けている。
首からは綺麗な青い宝石を鉄ではない、何かの金属で包んだネックレスを付けていた。
ネックレスは5年前の
「アリ……シア」
「久しぶりね、ジュリアン。あなたのパーティメンバーも一緒に連れて来たわよ」
アリシアがそういうと、レイナやリサ、セレーヌが同じように空を浮いた状態で姿を見せた。
仲間が集まってきたことに俺の頬が緩くなる。
ピンチの時にやってくるなんて、映画みたいじゃないか……さぁ、反撃開始だ。