■魔法都市ルミナエア・アイゼン伯爵家カトリーヌの部屋
「定時報告感謝いたします」
「いえ、奥様。私は仕事をしているだけでございます」
ジュリアン様の近況を書いた書類を受け取った女性――カトリーヌ・アイゼン――は目の前にいる私に金貨の袋を渡した。
この部屋にいるのは私と奥様、そして定期的に商談に来ているヴィルヘルム様の3人です。
「ジュリアン君はこの5年あまりすごい成長をしています。私も養子として迎えられてよかったですよ」
ヴィルヘルム様がニコニコと笑いながら紅茶を口につけました。
私もそろって紅茶を飲みますが、茶葉がいいのか淹れ方がいいのかとてもおいしいです。
入れてくれたメイドに詳しく聞かないといけません。
「あの子が無事に育ってくれているのであれば私も安心ですね」
「ジュリアン様は伸び伸びと冒険者をやられております。冒険者としては私はついていけないので、常に心配しているのですが」
「あの子は貴族よりもその方があっていたのかもしれませんね……」
カトリーヌ様はジュリアン様の現状について、納得なされているようでした。
フレデリック様と双子でしたから、離れるのは心配だったことでしょう。
ですから、私が世話係としてついていくことになり定期報告をしています。
「ヴィルヘルム様はどうして、ジュリアン様を養子になされたんですか?」
「私は商人ですから”先行投資”の意味合いが強いですかな……私にはリリアン嬢という伝手がありますので」
私が聞くとヴィルヘルム様は細めていた目を開きました。
確かリリアン様は〈魔力感知〉というスキルを持っているとのこと……だからこそ、ジュリアン様の実力をあらかじめしれたということでしょうか?
「リリアン嬢に気になるといわれたので、食客という形でもいいので入れておきたかったのですが、思っていた以上に冒険者としての実力を高めてくださいました。別の街の闘技場などに連れ出してみてみたいですね。聞いている限り、彼の魔法は
ヴィルヘルム様がいうのは磁力魔法の効果のことでしょう。
私も見たことは少ないですが聞きかじっている限り、確かに闘技場などでは活躍することは想像に難くありません。
「あとは戦争……ですね」
カトリーヌ様の言葉に私は先日の古戦場での戦い、金属鎧などを大量に動かしたと聞いたことを思い出しました。
戦争などではジュリアン様の力はかなり発揮されることでしょう。
けれども、それは人殺しをジュリアン様にやらせるということ……私としては、そういう道に進んでほしくはありません。
けれども、この先どうなるかはわからないので最後までついていけるように私も何かしていくべきでしょうか……。