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第3話 冒険者としての第一歩

「―――様! ジュリアン様、朝ですよ? 今日は冒険者ギルドで冒険者登録に行く日ですよね?」

「ん……おはよう、ミツキ」


 朝の眩しい光の中、微笑み浮かべるメイドの姿を確認すると俺は起き上がった。

 初めて磁力魔法を使ってからすでに5年経って、今日は10歳の誕生日である。


「念願の冒険者になれるんだな」

「はい、それとお誕生日おめでとうございます。今日の夕飯は豪勢にするとヴィルヘルム様は言ってましたよ」

「それは楽しみだ! じゃあ、着替えるから朝食の準備していてね」

「かしこまりました」 


 ベッドから降りて、俺は着替える。

 動きやすい服に皮鎧を着こむ。

 その上で、鉄板の仕込まれた小手とブーツを付ければ完了だ。

 冒険者登録のために実技試験があるとのことで、そのためである。


 磁力魔法はこの5年間で試行錯誤をして使いこなせるレベルになってきたが、実戦経験でもっと磨いていきたいところだ。


「ワクワクしてきたな、まさに冒険日和だ」


 窓から空を見上げればまばゆい太陽が輝いている。

 グウゥと腹がなったので食堂で朝食を食べるために部屋を後にするのだった。


■冒険者ギルド受付


 鉱山都市イーヴェリヒトの冒険者ギルドは立派な建物で、今日も人が多くごった返している。

 酒場も併設されているので、朝っぱらからお酒を飲んでいる人もまばらだがいた。

 夜勤上げの炭鉱夫や昨日から飲み明かしている冒険者だろう。


「ようこそ、冒険者ギルドへ。新規のご登録ですか?」


 酒場エリアから離れた場所にある受付に足を運ぶと眼鏡をかけたデキる事務員という様子の女性が対応してくれる。

 やっぱり受け付けは女性に限るよな。


「はい、今日10歳になったので登録しにきました」

「ふふふ、元気がいいですね。実技試験がありますから後程担当のものに引き継ぎます。まずは登録のための情報記入をこちらにお願いいたします」


 まとめられた茶色い長い髪を揺らし、色っぽく微笑む受付嬢の名前はエミリアといい、鉱山都市イーヴェリヒトの冒険者ギルドでは人気の受付嬢だ。


名前:ジュリアン・シュタイン

年齢:10歳

魔法適正:なし

特技:剣術、投擲


 エミリアに手渡された紙に記入していく。

 魔法適正は公称できるようなものがないので、なしとして置いた。

 特技である剣術は「鋼の守護者」であるアーヴィンから学んだものであり、投擲は磁力魔法で一番ごまかしがきくので合わせて書いておいた。


「できました」

「ありがとうございます。では、こちらも実技の担当の準備ができましたので引継ぎますね。アレックスさん、ジュリアンさんを試験会場へ案内してください」

「おう、任せとけ。坊主、試験は厳しいが泣くんじゃねぇぞ?」


 エミリアさんが振り返って声をかけると筋肉質ないかにも戦士な男が俺をニヤニヤと笑いながら見つめてくる。


「お手柔らかにお願いします」


 アーヴィン以外では初めての手合わせに俺はワクワクを隠せないまま笑顔で答えた。


■冒険者ギルド実技試験会場


 試験会場にたどり着くと、結構な人が俺とアレックスの試験を見ようと集まっていた。

 10歳の新人がどこまでやるのか見定めるようである。

 普通であれば、注目されることもないのだがイーヴェリヒトで有名な「鋼の守護者」が鍛えた新人ということが5年もあれば広まっていたのだ。


(アウェーじゃないだけいいかな……)


 もちろん、試験の見学にはアーヴィンをはじめとした「鋼の守護者」のメンバーもいる。

 フィンは朝なのに酒を飲みながら観戦していた。


「さすがは期待の新人だな……鋼の守護者に鍛えられたって実力見せてもらうぜ?」


 アレックスは木剣を二本持ってきて、片方を俺のほうへ投げ渡す。


(そうか、試験だから真剣じゃないよな……アーヴィンとの手合わせも木剣だったのを忘れてた)


 俺の磁力魔法は鉄をはじめとした磁性体に対して効果があるものだが、そうでなければ影響は出ない。


(だけども、そのために鉄入りのブーツと小手なんだよな)


 フゥーと深呼吸をして木剣を構えた。

 アレックスも同じように構える。

 二人の距離は10メートルほど離れていて、一歩で近づける距離ではない。


「好きに打ってこい、そのうち筋や対応力をみて試験の結果とする」


 アレックスが真剣なまなざしで俺に告げてきた。


「わかった。なら、遠慮なくいかせてもらう!」


 ブーツを対象に《磁力魔法:加速》《マグネス:アクセラ》をかける。

 俺の一歩がアレックスの足元まで一気に加速して伸びた。


「でぇぇいっ!」


 アレックスの腹を狙って横なぎの一発を当てる。

 バシンと木剣が皮鎧を叩いた音だけが響き、試験会場が静かになった。


「今のは何だ……魔法じゃないようだが、特殊なスキルか?」


 何が起きたかわからないアレックスが距離を取りながら再び構える。


(実は魔法なんだが、わざわざ明かすこともないか)


「身体強化のスキルみたいなもんです」

「そういうのも冒険者登録の情報に書いておけよ、パーティ探しに有利になる」


 構えながらお互いに間合いを図った。


「今度はこちらから行くぞ!」


 新人に一発もらったのが悔しいのか、少し荒っぽくなったアレックスが間合いを詰めて木剣で連撃を与えてくる。

 アーヴィンと同じくらい鋭い剣戟でガードするのが精いっぱいだ。

 しかもガードをするにしても力では推し負けるで、後ろに倒れないように足に力を入れる。


(10歳の子供に大人気なさすぎだろ!)


 口には出さないが内心そう思いながら、結局俺のスタミナが尽きて膝をついたことで試験が終わった。


 試験は合格、無事にFランク冒険者として登録がなされた。









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