いろんなことが分かってしまってから一晩明けた翌朝、俺はクラリスに着いていく形でエルフの里を見て回ることに。
クラリスの実家を出ると、里の全容が見てとれた。
なんていうか、俺たちのいるブラウンの街よりも全体的に素朴だよな。
家々も茅葺き屋根の木造だし、それも少しまばらな感じである。
里を歩きながらそんなことを考察していると、クラリスの元にチビッ子エルフたちが四人駆けつけてきた。
「「「「クラリスちゃんおかえり~!」」」」
「ただいま~、みんなー!」
チビッ子エルフたちをまとめて抱きしめるクラリス。
これみてるとやっぱクラリスの母性すげえわ。
俺も入れてもらいたいぜ。
「クグルルル……」
「あれれ、このドラゴンは!?」
「ティッタちゃん。この子はダイナ、お姉ちゃんの大事な使い魔だよ」
俺を指差したティッタちゃんとかいう幼女に、クラリスは目線までしゃがんで伝えてあげる。
すると今度は別のチビッ子が質問してきた。
「つかいまってなぁに?」
「使い魔はね、ご主人に使えるいい魔物のことなんだよ~」
「それじゃあクラリスちゃんはそのドラゴンのごしゅじんなんだね!」
「そうそう! みんなも触ってみなよ!」
「クガッ?」
クラリスはそう言うけど、チビッ子たちみんな俺を怖がってないか?
「え~、あぶなくないのぉ?」
「ぼくたちのことたべちゃわない?」
不安を露わにするチビッ子たちに、クラリスはニコニコしながら俺の顔を豊満な胸元に抱き寄せて見せる。
「大丈夫大丈夫! ほら、こーんなに大人しいんだよ~。ねーダイナっ」
「クガ」
むほっ、いつものことながらクラリスのおっぱい柔らけえ。
するとさっきティッタちゃんって呼ばれた女の子が、勇気を出して俺の顔に触れた。
「おかおかたいんだね」
小さな手でペチペチ触られて、ちょっとくすぐったいぜ。
それを皮切りに、チビッ子たちが俺に群がり始める。
「ほんとだ! すごくおとなしい!」
「せなかにものれるかなあ!?」
「やさしいんだね!」
あれ、俺って人気者なのか?
チビッ子たちにベタベタといじくられることしばらく、一人の男の子がこんなことを。
「そういえばクラリスちゃん、なんできゅうにかえってきたの?」
「なんかね、お姉ちゃん今年の女に選ばれたみたいなんだ」
「きねんさいだね! ぼくもたのしみなんだ~!」
今年の女に選ばれたと聞くなり、チビッ子たちのクラリスを見る目が憧れでキラキラと輝く。
「お姉ちゃんそんなの柄じゃないんだけどな~。でも、選ばれたからには頑張るよ! みんなも応援してね」
「「「「うん!」」」」
「それじゃあバイバ~イ」
チビッ子たちと別れたところで、クラリスは里のエルフたちに挨拶をしながら俺を連れてまた大樹様とやらの根本へ。
するとそこにはいつの間にか起きていたアンナが待っていた。
「アンナちゃん、一人で起きれたんだ!」
「そ、それくらい私でもできるぞ!?」
「え~、いっつもわたしに起こしてもらってるアンナちゃんが~?」
意味ありげな目でクラリスにジトーッと見つめられて、アンナは軽く咳払い。
「……おばさんが起こしてくれたんだ。ウソをついてすまない」
「やっぱりね~」
「それとクラリス、外に行くなら私も連れていけ!」
「あーごめんごめん」
置いてかれてプンスコするアンナに、クラリスは頭の後ろをさすってちょっぴり困り顔だ。
やっぱりこの二人は仲良しだぜ。
「クラリス、ここに来たということはハイエルフ様へのお祈りだろ?」
「そうそう! 久しぶりに帰ってきたんだもんね」
ん、ハイエルフ? 普通のエルフとはまた違うのか?
俺が頭にはてなマークを浮かべると、それを察してくれたのかクラリスが教えてくれる。
「ハイエルフ様はね、わたしたちエルフの上位的な存在で里の守り神でもある存在なの」
「言い伝えによればこの大樹様と共に二千年を生き続けているらしい、ありがたい存在だ」
「クガァ……」
エルフの上にそんなのがいるのか。なんかすごそうだぜ。
想いを馳せているとクラリスとアンナが大樹様の幹に手を触れる。
「ほら、ダイナも大樹様に触れて」
「クガ?」
触れてといわれても、俺の手ってめちゃくちゃ短いからな……。
口先でもいいかな?
恐る恐る口先で触れてみると、一瞬目の前が真っ白になって次の瞬間には木製の高台に立っていた。
「クガァ……!」
もしかして今のでここに転移したのか!?
これって大樹様の樹上だよな……。下は見ないでおこう。
だけど風が気持ちいいな、こんだけ高いと風も冷たいかと思ったんだけど。
そんなことを感じてると、クラリスとアンナが大樹様の方を向く。
「この向こうにハイエルフ様がいると伝えられているんだ、ダイナ」
「クガ?」
ハイエルフがいるって、この向こうに?
大樹様の幹にしめ縄のようなものが巻かれているだけで、人が入れそうな空間もなさそうだけど。
「正直なところ本当にいるのか分かんないけどね、あはは」
「こらクラリス、ハイエルフ様の前でそれは失礼だろっ」
あー、ハイエルフってそういう神格化された存在なのね。
それからクラリスとアンナは大樹様の幹の前で手を合わせて黙祷に入る。
俺もそれっぽいことしたほうがいいのかな。手が短くてうまく合わせらんないけど……。
とりあえず目を閉じて神社にお参りする感覚を思い出すことにした。
しばらく黙祷をした後、俺たちの背後にいつの間にかキザそうなエルフの青年がやってきていた。