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第53話 次なる進化

「グォエエエエ!!」


 野太い声をあげながら太いタコ足を絡ませてくる、巨大なタコの魔物。


 よく見ると腕が一本欠けている、俺が昨日撃退したメガオクトロットで間違いない!


 絡みつかれたまま立ち上がろうとする俺だけど、メガオクトロットのタコ足がそれを許さず間接技みたいなのまで決めてくる。


「グルウウ!?」


 デカイだけで今の俺より能力的に格下なメガオクトロットに遅れをとるなんて、不覚だったぜ……!


 もがけばもがくほど奴のタコ足が変な感じに決まって、俺の巨体を締め上げていく。


「ダイナ! くそ、邪魔だああ!!」


 アンナも大勢のサハギンとオクトロットに囲まれて身動きをとれない。


 さらに悪いことに後方で今まで降り注いでいた光線が、パッタリと止んでしまった。


 どうしたんだ一体!?


「クラリス……ついに限界が来てしまったか。あれだけ大がかりな魔法、長く打ち続けられるはずがないんだ……!」


 苦々しく漏らしたアンナの言葉に、俺は絶句してしまう。


 クラリスの奴、そんな無理をしていたのか!?


 かすかに目を開けて見通してみれば、座り伏したクラリスにおびただしい数の魔物が迫るのが見える。


「グルウウウン!!」


 クラリスのもとに駆けつけようと俺が懸命に立ち上がろうとするも、メガオクトロットの拘束は力を緩めてくれず身動きがまるでとれない。


「グギャオオオオオオオ!!」


 くそがあああああああ!!


 無念にとらわれた次の瞬間、クラリスを守るように渦潮が周囲を包んだ。


 隣で舞を踊っているのは、ソフィーか!


 ソフィーの魔法はそれだけにとどまらない、続けざまに大波を立てて、クラリスに迫ろうとしてた魔物共をまとめて押し流したんだ。


「あれがソフィーの魔法か! 大したやつだ」


 海の魔物を蹴散らしたアンナが、俺をがんじがらめにするメガオクトロットに駆け込む。


「今助けるぞ、ダイナ! 雷鳴斬刃ライトニングスラッシュ!!」


 そして雷電をまとったアンナの剣が、メガオクトロットの目と目の間に深々と突き刺さった。


「グォエエエエ!?」


 そこがたまたま致命的な弱点だったのか、メガオクトロットはたちまち真っ白になって萎びていく。


「グルウウ!!」


 拘束の力が弱まったのを見計らった俺は、タコ足を噛みちぎって脱出した。


「グルルルル……」


 俺が感謝を込めて顔を寄せると、アンナは目の前に拳を突き合わせてくる。


「礼を言いたいのか? ならばそれには及ばない、私とお前は戦友なかまだろ」

「グルル」


 それもそうだな、アンナ。


「しかしクラリスが心配だ、すぐに戻るぞ」

「グルウウウン!」


 アンナに続いて俺も大またで仲間のもとに戻ると、クラリスは座り込んで顔色を青くしていた。


「クラリス! 大丈夫か!?」


 早速アンナが抱擁をすると、クラリスは力なく笑みを浮かべる。


「……えへへ、わたしちょっと張り切りすぎちゃったみたい」

「全く……。クラリス、お前は無茶しすぎなんだ」


 アンナにたしなめられて、クラリスは小さく舌を出してはにかんだ。


「グルル……」

「ダイナ……、心配してくれてるんだね。ありがとう、ダイナもすごくかっこよかったよ」


 顔が青いながらもにこやかなクラリスの微笑みに、俺はドクンと来てしまう。


 クラリスやっぱ可愛すぎる!


「ドルルルル……」

「もー、ダイナってばやっぱり甘えん坊さんなんだから~」


 巨大な顔をおっぱいに擦り寄せる俺にも、クラリスは笑顔でなでなでしてくれた。


 相変わらずクラリスのおっぱい柔らけー、そしてなでなで気持ちいいー。


 続いてアンナはソフィーに向き直る。


「それとソフィー、クラリスを助けてくれたこと礼を言う」

「……いえ、自分はただできることをやっただけでございます」


 アンナの感謝をソフィーは謙遜して受け取ったようだった。


 ふと海の方を見通してみると、さっきまでのとてつもなく大きな反応は忽然と消えている。


「グルル……」

「どうやら魔物たちの動きも落ち着いたようだな。しかしこの静寂がいつまでもつか……」


 アンナも俺と同じように静けさを取り戻した海を見つめてそう呟いた。


 そうだ、身体が大きい今のうちに確保しといた海の魔物を食っちまおう。

 そう考えた俺は、無限収容ブラックボックスからサハギン・マッチョとシードレイク、それからさっき倒したばかりのメガオクトロットを取り出した。


「これが無限収容ブラックボックスですか、話には聞いてましたがいざこの目で見ると驚きですね……」

「いつ見てもすごいよね~」


 目を丸くするソフィーに、クラリスがのほほんとフォローをいれる。


 それじゃあいただきまーす!


 足元に転がる海の魔物を、俺は夢中で頬張った。


 うん、うん、どれも新鮮な海鮮もので旨いぜ!


 獲物を平らげた頃、お馴染みのアナウンスが頭に流れる。


【レベルが42に上がりました】


 おお!? 一気にレベルが5も上がったぜ!!

 だけど驚くのはまだ早かった。


【条件を満たしたことにより、進化が可能になりました】


 次の進化か! そいつは楽しみだぜ!!


【進化先が二つに分岐してます。任意でどちらかを選んで進化しましょう】


 ん、二つに分岐?


 詳しく見てみるとこんな感じだった。


【進化先1:コダイレックス】

【進化先2:マジカレックス】


 コダイレックスにマジカレックスか。どれも強そうだぜ!


 さらに詳細が表示されていたので見てみると。


【コダイレックス:タイラントレックスとしてのパワーと身体能力を純粋に強化した、古代より伝わる進化形態。レベル42に達することで進化可能】

【マジカレックス:肉体能力はそのままに魔法の装甲をまとって火力と機動力に特化した、新たなる進化形態。レベル42に達することで進化可能】


 なるほど。コダイレックスは今の能力を順当に高める正当進化で、マジカレックスはさらなる可能性を秘めた分岐進化ってところか。


  魔法的進化も気になるだけど、ここは正統派進化のコダイレックスを選ぶぜ!


【進化先としてコダイレックスを選択、これより進化を開始します】


 次の瞬間、俺の巨体がまばゆく光り出した。

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