「クルルル……」
「どうしたのダイナ?」
うなだれる俺をクラリスが優しく撫でてくれるけど、やっぱり今の不甲斐なさはショックだぜ……。
そんな俺をアンナが慰めてくれた。
「気にすることはないさダイナ。お前もまた力になれるはずだ」
「クゥ……」
「アンナちゃん、ダイナの考えてることが分かるの?」
「いつもというわけではないが、今ばかりは同じ戦士として何か思うところがあったからな」
同じ戦士、か。アンナも俺のことちゃんと戦力だって認めてくれているんだな。
「クカ!」
一声あげてから水底を踏みしめるように立ち上がると、クラリスが手を合わせて喜んでくれた。
「おお、ダイナが立ち直った~!」
「その意気だ、ダイナ」
アンナにも撫でられて、俺はちょっとこそばゆくなってしまう。
そんな俺たちにソフィーが一声かけた。
「邪魔もいなくなったことですし、先に進みますよ」
「うん!」
「ああ」
「クカッ!」
ソフィーに促されて先を進もうとしたその時だった、正面の水底がボコッ!と盛り上がって極太のタコ足が伸びてきた。
「なっ!?」
「「きゃ~~~!!」」
アンナと俺が素早く飛び退いてかわした一方で、反応か遅れたクラリスとソフィーがタコ足に捕まってしまう。
「グォエエエエエ!」
そして全身を現したそいつは、やはり巨大なタコの魔物だった。
種族:メガオクトロット
レベル:45
体力:1200/1200
筋力:800
耐久:560
知力:720
抵抗:750
瞬発:200
メガオクトロット、つまりはこの前のタコの親分ってことか。
さすがに強さが段違いだぜ……!
「うっ、く……っ!」
「苦しい……!」
タコ足に締め上げられてソフィーとクラリスが苦悶の声を漏らす。
締め付けられた二人のおっぱいがぎゅって圧迫されてこれはこれで眼福……ってそんなこと考えてる場合かあ!?
「クラリス! 今助けるぞ!!」
早速アンナが水底を蹴ってメガオクトロットに剣で斬りかかろうとする。
だけどその刃は奴の弾力あふれる肉体に弾かれてしまった。
「なにっ!? ――うっ!!」
歯が立たず目を見開くアンナもメガオクトロットに捕まり、同じように締め上げられてしまう。
「う……くぅ……!」
美少女三人をタコ足に絡め取ったメガオクトロットの顔はどこかにやけているようで、俺の嫉妬が火を吹くことに。
あの野郎、クラリスたちを弄んで喜んでやがる!!
どことなく締め付けかたもイヤらしくなっていて、俺は放っておけなくなって小さい身体のまま飛びついた。
食らえ、
「グォエエエエエ!?」
俺の渾身の噛みつきをタコ足にお見舞いしたことで、メガオクトロットはその足で絡めていたクラリスを解放。
だけどその直後にフリーのタコ足が振り下ろされ、俺の小さな身体は呆気なく弾き飛ばされてしまった。
「ダイナぁ!!」
【条件を満たしたことにより、大恐竜モードに入ります】
突如流れた例のアナウンスと共に、俺はあの巨大ティラノの姿に変身。
「グギャオオオオオオ!!」
水底を踏みしめて咆哮をあげる俺に、メガオクトロットも動揺を隠せないのかギョロりとした目が挙動不審になる。
今度はこっちのターンだぜ!!
念じながらの俺の噛みつきで、ぶっといタコ足を容易く噛みちぎる。
それでソフィーたち三人も救出することができた。
「また巨大化したというのか、ダイナは……!?」
三人の無事を確認したところで、俺は改めてメガオクトロットと向き合う。
「グォエエ……」
だけどメガオクトロットは恐れをなしたのか、墨を吐いて目眩ましをした。
「グルウウン!?」
大量の墨に視界を塞がれ、それが晴れた頃にはメガオクトロットの巨体は忽然と姿を消していた。
「逃げたか……!」
「そのようですね」
くそっ、まさか取り逃がしちまうなんて!
悔しさに地団駄を踏んだら、クラリスたちがよろけてしまう。
「はわわわわ! 地震!?」
「違う! ダイナの地団駄で揺れてるんだ!」
あ、悪りい。
深呼吸をして心を落ち着けたところで、噛みちぎったタコ足に目を向ける。
これも奴の身体の一部ってことは、食えば経験値がたまってあわよくば新しいスキルも手に入るかも?
そう考えた俺はタコ足をくわえあげて、一口の大きさに噛みきってから飲み込んだ。
それで新しいスキルを手に入らなかったけど、俺は残りのタコ足を美味しく平らげたのだった。