「わ~! きれーい!!」
砂浜に駆け出したクラリスが、青い海を前に歓声をあげる。
水着で大胆に晒されたクラリスの白い肌が、サンサン降り注ぐ日の光に照らされて眩しいぜ。
「朝方に魔物と戦った場所とは思えない絶景だな」
黒く薄い水着をまとったアンナもあごをなでて穏やかに潮騒を奏でる波打ち際を眺める。
「ダイナもアンナちゃんもおいでよ~!」
ピョンピョン跳ねて俺たちを誘うクラリスだけど、いつの間にか大人っぽい水着に着替えたビアンカさんが呼び止めた。
「待ちなさいみんな。今日は日差しが強いんだからこれを塗らないとダメよ」
「それは何だ?」
ビアンカさんが持っているのは、ガラスの小瓶に入った乳白色のもの。
「日焼け止めよ。日差しが強い中で何も塗らずにいたら日焼けで大変なことになるわ」
「そうか。おーいクラリス、お前も日焼け止めを塗るんだ!」
「はーい!」
「それじゃあそこで横になって」
クラリスが戻ってきたところで、ビアンカさんが二人に敷物の上で横になるように指示をしてから日焼け止めを手に垂らした。
「これを塗れば日焼けしにくくなるのよ。ほら、あたしに任せなさい」
それからビアンカさんはクリーム状の日焼け止めをクラリスたちの背中に塗りたくっていく。
「ちょっとヌルヌルする~」
「なんだか妙な気分だな」
端からこうして見ると、クラリスたちのきれいな肌が日焼け止めで艶を増して、これはこれでドキドキしちまうぜ。
「あら、ダイナも塗るのよ?」
「クカ?」
そうかと思えばビアンカさんに捕まった俺も日焼け止めを全身に塗られる。
鱗肌の俺も日焼けなんてするのだろうか……?
「二人とも後は自分で塗れるでしょ?」
「ああ。あれもこれも済まないなビアンカさん」
「いいってことよ~」
日焼け止めを塗り終えたところで、俺たちは改めて波打ち際に駆け出した。
「うひゃあ! 冷た~い!」
海に足をつけるなり嬌声をあげるクラリスは、続いて指につけた海水をペロリと一なめ。
「うっ、しょっぱい。海の水ってほんとにしょっぱいんだ~!」
「ずいぶんはしゃいでるな」
「アンナちゃんも楽しもうよ~! それえ!」
アンナも海に足をつけたところで、クラリスが海水をふっかけた。
「うひゃっ!? やったなー!」
「きゃはははは!」
お互い海水をかけあって遊ぶ二人の間に、俺も意気揚々と飛びつく。
「クカーッ!」
「きゃあ! もーダイナ~」
たまたま飛び込んだのがクラリスのおっぱいだったので、俺の顔をもにゅっと柔らかな感触が包んだ。
海はサイコーだぜ!
俺たちが海水浴を満喫していたのもつかの間、俺の
「クカッ?」
「ん、どうしたのダイナ? ――きゃあ!?」
俺が警戒した矢先に、クラリスが何かに引っ張られたように転んでしまう。
「クラリス!」
気がつくと俺たちはタコのような魔物に囲まれてしまっていた。
種族:オクトロット
レベル:18
体力:120/120
筋力:230
耐久:100
知力:180
抵抗:140
瞬発:90
「いやーん! 助けて~!」
「クラリス! くっ、この!」
オクトロットのタコ足で締め付けられてもみくちゃにされてしまうクラリスとアンナ。
けしからんタコだぜ!
「クカァ!!」
すかさず俺がクラリスにのしかかる一匹に噛みつく。
さすがにタコの柔らかい身体は簡単に噛みちぎることができた。
おらおらあ! まとめてかかってきやがれ!
奮い立つ俺だけど、オクトロット共はクラリスたちに夢中のようでこっちに見向きもしない。
ちくしょう、なめやがって!!
いらついた俺はオクトロット共を噛んでは引き剥がし、噛んでは引き剥がしを繰り返す。
これにはさすがのオクトロット共も見過ごすことができないみたいで、今度は俺に向かって押し寄せてきた。
「クカァ!?」
「ダイナあ!」
一斉にタコ足でがんじがらめにされて、俺は身動きが取れなくなってしまう。
くそっ、こいつら小さい割に力が強い……!
「――
その時だった、ビアンカさんの声と共にオクトロット共の動きが止まる。
「ビアンカさん!」
「助けに来てくれたんですね!」
「お待たせ! さあ、タコちゃんたち覚悟なさーい!」
槍を手にしたビアンカさんが、動きの鈍ったオクトロット共をめった刺しにしていった。
自由になった俺ももちろん加勢したぜ。
そうして唐突に現れたオクトロット共を、俺たちはなんとか殲滅することができた。