「これは……?」
「衣類のようだが、それにしてはどれも布面積がかなり小さいな……」
水着を手にとって顔をしかめるクラリスとアンナ。
二人とも水着を見たことがないのか……?
そんなクラリスたち二人に、ビアンカさんが説明をする。
「それは水着といってね、海水浴をするときに着るものよ」
「着るって、これを!?」
「ええ。昔東方からの旅人が伝えたものなんだけど、これを着れば衆目も気にせず海水浴ができるの」
東方からの人、か。温泉宿に泊まったときもちらっと耳にしたけど、やっぱ俺の知る日本の文化にかなり近いな。
俺が感心する一方で、クラリスはビキニの水着を身体に添えて顔を真っ赤にしている。
「だってこれ、すごく布面積が小さいじゃないですか! こんな素肌が隠せないものなんて恥ずかしいですよ~!」
へー、クラリスにも羞恥心はあるんだな。なんかホッとしたというか逆に新鮮というか。
「あら、それじゃあ衆目で全裸になる? ここの海岸、見通しがいいから丸見えになるわよ」
「う、うう~!」
湯気が出そうな顔をうつむかせるクラリスをよそに、アンナがこんなコメントを。
「――確かに水を浴びることを考えれば、布面積は小さい方が動きやすく溺れにくいだろう。なるほど、こう見えて利に叶った衣類ということか」
「その通り。どうやらアンナちゃんは抵抗ないみたいね。それじゃあ好きなのを選んで、安くしとくわよ」
「それはありがたい」
ビアンカの誘いで水着をワンセット手に取ったアンナは、すぐそはにある個室に入る。
「む~~、アンナちゃんがそう言うならわたしも着なきゃかなあ……?」
アンナに触発されたのか、クラリスも渋々水着を手に取り個室に入った。
……俺とビアンカさんだけになってしまった。
彼女を見上げると、すごく丈の短いスカートの奥にセクシーな紫色のパンツが見え隠れする。
うへっ、あの布面積じゃ大事なところが見えちまわないか!?
目がチカチカしてたら、ビアンカさんが俺の前で屈む。
「――そういえばあんたのこと、まだ聞いてなかったわね。使い魔なんだろうけど何の種族かしら?」
抱き上げて俺をじっくりと観察するビアンカさん。
うう、ビアンカさんも結構美人だからこうじーっと見られると恥ずかしいな。
「……クカ」
「ふふふ、可愛いわね」
ビアンカさんの細い指で鼻を突っつかれて、俺はすっかり弄ばれてる気分になってしまう。
こいつが大人の魅力って奴か……!
しばらくビアンカさんに相手されてると、アンナが先に水着に着替えて出てきた。
「とりあえず着てみたが、……変じゃないな?」
ほんの少し戸惑いを見せるアンナが今身に付けているのは、ホルターネックの黒いビキニ水着。
最低限の布面積が彼女のスタイルの良さを際限なく引き立てて、すげーきれいだ。
「クカッ」
「あら、良く似合ってるじゃないアンナちゃん」
「そ、そうか。これだけ布面積が小さいとまるで裸でいるような気分なんだが、変でないというならこれもいい」
どうやらアンナもこの水着が気に入った様子。
少し遅れてクラリスも水着を着て出てきたんだけど。
「えへへ、これなら露出も少なくていいかな~って」
クラリスが着てきたのは、白いワンピースタイプの水着。
これはこれで彼女のムチムチさが引き立っていいと思うけど、どうせならもっと大胆なのも着てほしいな。
「「…………」」
「え、どうしたの二人とも?」
「クラリスちゃん。守りに入るのもいいけど、あんたはもっと大胆になってもいいと思うの」
「ふええ~!? そんなの無理だよお!!」
ビアンカさんも俺と意見が一致してるのか、ヒラヒラのビキニ水着をクラリスに勧める。
「助けてよアンナちゃ~ん!」
「クラリス、お前ももっと自信を持っていいんだ。結構いいぞ、水着とやらもな」
「うええええん! アンナちゃんのバカ~~~!!」
泣きべそをかくクラリスは、半ば強制的にビアンカさんの手で個室に押し込まれてしまった。
それから少しすると、
「うう~っ、こんなのやっぱりおかしいよ~!」
真っ赤に染まった顔をくしゃくしゃにするクラリスが着ているのは、ほんのりピンク色のフリルビキニ。
白く肉付きのいい肢体が惜しげもなく晒され、彼女のたわわな巨乳がこれでもかと存在感を主張している。
「おお……!」
「予想はできてたけど、これはかなりの逸材ね……!」
「クカァ……!」
俺たちが目を釘付けにしていると、クラリスは慌ててお腹を隠した。
「ふええ~、そんなに見ないでよお~! 裸よりもむしろ恥ずかしいんだけど~!」
「自信を持ちなさいクラリスちゃん。これでみんなの
「みんなってだれ!?」
「良く似合ってるぞ、クラリス」
アンナのコメントに、慌てふためいてたクラリスがピタリと止まる。
「え、そう?」
「ああ。こいつはお前だから似合うんだ」
「え、えへへ。そうかな~?」
アンナにおだてられて、クラリスはにへらと笑った。
二人が水着を手に入れたところで、俺たちは改めてサンサン日の光降り注ぐアラナギ海岸に繰り出したんだ。