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第38話 いざアラナギ海岸へ

 翌日俺たちは早速屋敷を出発することにした。


「それじゃあ行ってくるね!」

「その間留守を頼むぞ」


「「「いってらっしゃいませ、ご主人様方」」」


 メイドの三人に見送られて、俺たちがまず向かったのはサラが営む武器屋である。


「サラちゃ~ん!」

「あ、クラリスさんにアンナさん! どうもっす! 今日はボクにどんなご用件っすか?」

「まずはメンテナンスを頼んでいた剣を頼む」


 アンナの申し出に、サラは快く応じた。


 そういえばあの時の凄まじい報酬の一部で、いつも使ってる剣のメンテナンスを頼んでたっけ。


「はいっす! 生まれ変わった剣、とくとご覧あれっす!」


 サラが差し出した白光りする剣に、アンナは目を見張る。


「おお……これはすごい! まるで本当に生まれ変わったようだ!」

「刀身にミスリルを使ったっすからね。その分高くつくっすけど……」

「ああ、これなら大満足だ。言い値で払おう」

「毎度ありっす~」


 サラに気前よく報酬を支払う、満足げなアンナ。


「それとダイナきゅんの防具も改装したっすよ~!」

「クカッ!?」


 それは本当か!?


 サラが続いて差し出したのは、光沢の増した俺の防具。


「クカア……!」

「気に入ってくれたっすね? でもそれだけじゃないっすよ、急激な巨大化にも順応できる仕様にしたっす!」


 それはつまり、俺が巨大化してもこの防具を使えるってことか!


「クカア!!」

「あはは、どうもっす」


 いざ着てみたら素肌に馴染むような着心地である。

 やっぱサラってすげえよ!


「わたしも何かしてもらえば良かったかな~?」

「クラリスさんは魔法職だから、ボクの専門外なんす。申し訳ないっす」

「ううん、大丈夫だよサラちゃん」


 謙遜したところでクラリスは、サラにこんなことを提案する。


「そうだ、今日から仕事でアラナギ海岸に行くんだけどサラちゃんも一緒にどうかなあ?」

「誘ってくれるのは嬉しいんすけど、ボクも武器職人としての仕事が立て込んでるっすから……」

「そっか~。じゃあまた今度ね!」

「約束するっす!」


 サラと握手したクラリスは、屈託のない笑顔だった。


 新たな武器を手にしたところで、俺たちはいよいよアラナギ海岸に向けて出発することに。


 海岸の程近くにある港町に向かう馬車に乗せてもらう手はずなんだけど、アンナの方向音痴でずいぶんと迷ってしまい、危うく馬車に乗り損ねてしまうところだった。


「すまない、私のせいで遅れてしまうところだった」

「気にすることないよアンナちゃん。ね、ダイナ」

「クカッ」


 バッグの中で俺は一声鳴いてクラリスに返事をする。


 馬車の揺れにもやっと慣れてきたぜ。


 そんな感じで馬車に揺られていると、山道に差し掛かったところで柄の悪い盗賊集団が正面に立ちはだかった。


「命が惜しけりゃ荷物を置いていけ!」


「ひ、ひいいいっ!!」


 盗賊頭の恐喝にビビる馭者。


「どうやら私たちの出番のようだな」

「さくっとやっつけちゃおう!」

「クカア!」


 馭者と入れ替わりに前に出たクラリスたちを見て、盗賊共がいきなり鼻の下を伸ばす。


「うひょーっ、この馬車には可愛い娘も乗ってたか!」

「こいつらも一緒にたんと味わおうぜ!」

「ヒャッハー!!」


 息を荒げて突撃する盗賊共相手に、まずアンナが先陣を切った。


「はあっ!」


 アンナが軽く剣を振るっただけで、盗賊三人の腹を容易く切り裂く。


「「「グハッ!?」」」


「な、何だこのアマはぁ!?」


 いきなり三人やられたために、盗賊がビビってたたらを踏む。


「少し振るっただけでこの威力、さすがはサラの腕だな」


 一方アンナは強化された剣ににんまりと笑みを浮かべていた。


「ダイナもお願い!」


 クラリスがバッグを開けたところで、俺も意気揚々と飛び出した。


「クカア!!」

「何かと思えばちびじゃねえか!」


 ちびだと!? その言葉、今すぐ後悔させてやる!!


 無造作に振るわれた盗賊の鉈を、俺は防具で受け止めた。


「なっ!?」


 すると盗賊の鉈が刃こぼれを起こす。


 さすがはサラの防具、硬度も上がってるぜ!


 次は俺のターンだ!

 早速俺は一番近くにいた盗賊の腕を噛みちぎってやった。


「うぎゃあああああ!!」

「はあ!? 何だよあいつ、めちゃくちゃやべえじゃん!!」


 はははっ、どうだ思い知ったか。

 でもまだまだこんなもんじゃないぜ!


 火炎息吹ファイヤーブレス


 俺が念じるなり放たれた炎の息吹きで、盗賊共をまとめて焼き払う。


「ぐあああああ!!」


 そうして俺たちはあっという間に盗賊共を殲滅していた。


「わたしの出番なかったね」

「もしやお前もやりたかったのか?」

「まさか~」


 盗賊共の亡骸を始末しながら、穏和に微笑みあうクラリスとアンナ。


 さすがにこの殺伐とした雰囲気にも慣れてきたぜ。


「守ってくださりありがとうございます。皆さんお強いのですね」


 馭者に感謝されたところで、俺たちは馬車で山道を進むことになった。

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