朝食が終わったところで、クラリスがこんなことを。
「それじゃあわたし外出してくるけど、アンナちゃんはどうする?」
「私はいつものように素振りでもしようかと思う」
「そっか。メイドさんたちにあんまり迷惑かけちゃダメだよ~?」
「私を何だと思っているんだお前は!?」
声を張り上げたアンナだけど、クラリスとは見つめあってくすりと吹き出してしまう。
「それじゃあ行ってきまーす」
「「「いってらっしゃいませ、クラリスお嬢様」」」
メイドたちに見送られて外出するクラリスを、俺はトコトコと追いかけた。
「ダイナも来るんだね?」
「クカッ」
ニッコリ笑顔のクラリスの後をついていくように、俺は歩く。
ちび恐竜な俺の目線で見上げると、ちょうどクラリスのスカートの中が見えるんだよな。
白いドロワーズっぽい下着に包まれたお尻がフリフリと揺れるのを眺めるのも、目の保養になっていいぜ。
クラリスのお尻を追いかけながら歩いていると、俺たちは街の花屋に着いていた。
「いらっしゃいませ~。あ、クラリスお姉ちゃんだ!」
「おはよう、サリーちゃん」
赤毛を三つ編みにした看板娘のサリーが、クラリスを出迎えてくれる。
最近クラリスが度々足を運んでいた花屋だから、もうすっかり顔馴染みだよな。
「ダイナちゃんもこんにちはっ」
「クカッ」
しゃがみこむサリーが、ついてきた俺の頭をなでてくれる。
「それで今日は何を見に来たの~?」
「えへへ。今日はね、庭に植えるきれいなお花を買いに来たんだ~」
「え、うちのお花を買ってくれるの!?」
目を丸くして驚くサリーに、クラリスはニコッと微笑んだ。
それから店の中に入ったクラリスが花々を一通り眺めて、特に気に入った花の苗をいくつか選ぶ。
「おばさ~ん、これくださーい」
「はいよ~。いつも見に来てはくれていたけど、買ってくれるなんて初めてだねえ」
店主のおばさんから苗を買ったクラリスは、すぐに屋敷に帰って庭に足を運んだ。
「ハクナさ~ん、このお花を植えてもいい?」
「もちろんいいわよ。どれも可愛いお花ね~、庭が賑やかになっていいわ」
「えへへっ」
ニコニコしながら庭をいじろうとするクラリスを、メイドのハクナさんが慌てて止めようとする。
「お待ちなさいクラリスお嬢様、土仕事なら私たちメイドが……!」
「え~、別にこれくらいわたしでもできるよー」
「けど……」
歯切れの悪いハクナさんをよそに、クラリスは買ってきた花の苗を自分で庭に植えていった。
続いてクラリスが目を向けたのは、庭の芝生で剣の素振りをするアンナの姿である。
「アンナちゃーん、今日も頑張ってるね~」
「ああ。私にはこれくらいしかすることがないからな」
そうは言って謙遜するアンナだけど、その素振りはまるで舞を踊っているようで見事だった。
そんなことをしているうちに昼になって、俺たちはまたダイニングで食事を取ることにした。
今度はこんがり焼いた分厚いベーコンを丸かじりだぜ。
「やっぱりすごい食欲だね~」
「ああ。この分だとまた大きくなるかもな」
こんな俺の様子をクラリスとアンナが微笑ましく見守ってくれている。
秒でベーコンを平らげたところで、俺は向こうで掃除をしているプラムにちょっかいをかけに行った。
「クカア!」
「ひいっ!?」
わざと大きな声を出すと、プラムは大げさにビビってバケツをひっくり返してしまう。
あ、ここまでやるつもりはなかったんだけどな。
お詫びにバケツを元に戻すと、プラムがこんなことを。
「……す、すいません……」
「クゥ?」
うつむくプラムの足元に、俺は顔をすり寄せる。
「……こんなプラムにも、懐いてくれているんですね……」
恐る恐る手を近づけるプラムに俺が顔を向けると、彼女はまた驚いて腰を抜かしてしまった。
「ひっ!?」
おっと、腰を抜かした拍子にプラムのロングスカートがめくれてる!?
……ヒラヒラのついた結構可愛いのをはいてるんだな。
「…………っ!」
俺の目線に気づいたのか、顔を真っ赤に染めたプラムが慌ててスカートの裾を押さえる。
「も、申し訳ございませんでした~!!」
そしてプラムはこぼれた水を大急ぎで拭き取ると、そそくさとその場を走り去ってしまった。
……なんかすげー申し訳ないことしちまったな……。
そんなことを気にしながら一日を過ごしてたら、いつの間にか夜になっていて。
俺たちが来ていたのは屋敷に新造した大浴場だ。
「うわ~! 広いお風呂だあ!」
「わざわざ造ってもらった甲斐があったな」
湯気が立ち込める広々とした湯船に、裸のクラリスとアンナが感嘆の息を漏らす。
「クカア~!」
早速大浴場に駆け込もうとした俺を、クラリスが背後から抱き上げた。
「まずは身体を流すんだよ。サラちゃんに教わったでしょ~?」
「クケ」
それもそっか。
言われるがままに俺はクラリスに身体を流してもらう。
ふーっ、やっぱ一日の終わりに浴びるお湯は格別だぜ~!
それから俺はクラリスに抱かれて湯船に浸かる。
「クカア~」
「気持ちいいね、ダイナ」
「ふー、この前の温泉には及ばないがこちらもいい湯だ」
そうして裸のエルフ乙女二人に囲まれながら、俺は湯煙に身を浸すのであった。