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第32話 ティラノVSドラゴン

「あれがダイナきゅんっすか……!?」

「なんて大きさだ……!」


 巨大化した俺を見上げて目を白くするサラとロック。


 そうだよこの姿だよ! 力がわいてくるぜ!!


「グギャオオオオオオ!!」

「こいつ……!」


 咆哮をあげる俺を目の当たりにしたマルスが剣を抜こうとするのを、クラリスが止める。


「待ってマルスさん! ダイナは味方だよ!!」

「そうなのか!?」

「暴走しないかニャ……?」

「心配は無用だ。ダイナはこの姿で私たちを助けてくれたこともあるからな」


 フォローをどうもだぜ、アンナ。


 ――さてと。正面で翼を広げて唸り声をあげるレッドドラゴンをどうするか。


「グルル……!」

「グルル……」


 にらみ合いもつかの間、先にしかけてきたのはレッドドラゴンだ。


「グオオオオオオオオン!!」


 初手から猛烈な火を吹いてくるレッドドラゴン、それを俺は敢えて受け止める。


「ダイナあ!!」


 心配はいらないぜクラリス、見てなって。


 巨体に力を込めて、俺はレッドドラゴンの火を思いきり振り払った。


「グギャオオオオオオ!!」


「グオオ!?」


 自分の火炎を払われてさぞかし面食らっているだろう、レッドドラゴンは目を白黒させている。


「あのレッドドラゴンの火炎を耐えただと!?」

「しかもダイナきゅん、まだまだ余裕そうっすよ!?」


 口をあんぐりと開けるロックとサラ。


 次はこっちの番だ!


「グルウウウウン!!」


 極太の牙が並んだ顎門あぎとを開け放ちながら、俺はレッドドラゴンに突進する。


 食らえ! 三色牙トライエレメンタルファングアイス


 冷気を放つ牙でレッドドラゴンに食らいつくと、噛んだところから瞬時に凍結した。


「グシャアアアアアアア!!」


 苦痛に満ちた絶叫をあげるレッドドラゴン。


 よし、効いてるぜ!


「ダイナ、危ない!!」


 クラリスの呼び掛けで、俺は迫るレッドドラゴンの爪に気づき、瞬時に対応した。


 三色牙トライエレメンタルファングサンダー


 今度は雷電をまとった牙で、振るわれたレッドドラゴンの片腕を焼き切る。


「グシャアアアアアアア!!」

「レッドドラゴンの強靭な腕を一撃で……!」


 驚くのはまだ早いぜ、マルス。


 反撃に振るわれたレッドドラゴンの尻尾を、今度はスキルを使わずに俺は食らいつく。


「グルウウウウン!」


 そのまま豪快にぶん回してから、俺はレッドドラゴンの巨体を投げ飛ばした。


 焼け焦げた草原の地面に巨体を打ちつけるレッドドラゴン。


「グオオオオオオオオン!!」


 するとレッドドラゴンは翼を羽ばたかせ、空へと舞い上がる。


 空から攻める気か、だけどそうはさせないぜ!


 投擲石礫スリングストーン


 俺の放った大岩が奴の翼に命中。


 翼を折られたレッドドラゴンはそのまま地響きを立てて墜落した。


「グルル……!」


 おもむろに歩み寄る俺に、レッドドラゴンは苦し紛れに火を吹こうとする。


 だけど俺はその寸前で奴の喉元に食らいついた。


「ゴガア!?」

「グルウウウウン!!」


 その瞬間、俺が下からくわえあげたことで上向きになったレッドドラゴンの口から火が天に向かって放射される。


 これで終わりだ! 破砕咬牙クラッシュバイト!!


 光る牙に力を込めると奴の喉笛が咬み潰されて、レッドドラゴンは巨体を力なく倒れ伏す。


【レベルが25になりました。レッドドラゴン撃破により称号竜王殺しドラゴンスレイヤーを獲得しました】


 おお、レベルが一気に3も上がったぜ!

 それとなになに、新しい称号も手に入ったぞ?


New【竜王殺しドラゴンスレイヤー】→ドラゴン種族の上位種を倒した者に授けられし称号。ドラゴン種族に対し威圧と特攻――特定の相手に対して技の威力上昇――発生。


 これはなんかすごそうな称号だぜ、今後ドラゴンと戦うときに役立つかもな!


 そんな分析をする俺をよそに、みんなはレッドドラゴンを倒したという事実にまだ呆然としていた。


「なんということだ……!」


「本当に……やっつけちゃったんだ!!」


 興奮のあまりクラリスはその場でピョンピョン跳び跳ねている。


 へへっ、どんなもんだい。


「グギャオオオオオオ!!」


 俺は高らかに勝利の雄叫びをあげた。


【時間経過により大恐竜モードが解除されます】


 はあ? また~!?


 頭の中に例のアナウンスが流れた途端、身体から急に力が抜けていく。


 そして気がつくと俺はまたちび恐竜の姿に戻っていた。


「ダイナ~!」


 慌てて駆けつけたクラリスに、俺は抱き抱えられる。


「大丈夫!? 死んじゃわないよねえ!?」

「く……クカ」

「どうやら大丈夫なようだ」

「良かったあ……!」


 アンナの一言でクラリスは安堵の言葉を漏らした。


「その分だと体力をかなり使ったみたいっすね。よく頑張ったっすねダイナきゅん」

「……クカ」


 労を労うサラに頭をなでられて、俺はなんか照れ臭くなってしまう。


「一応治癒魔法をかけておくね、ダイナ。治癒施術ヒール


 クラリスの手からぼんやりと放たれる光で、俺の身体から痛みがすー……っと飛んでいくのを感じる。


 ふとチャオがレッドドラゴンの亡骸の元で何かを発見した。


「これは何だニャ?」


 チャオが見つけたのは、血のように赤い宝石みたいなもの。


「これは……ルビーっすか?」


「でもなぜレッドドラゴンから?」


 頭を悩ませる勇者ご一行だけど、次の瞬間そのルビーはどこへともなく飛んでいってしまった。


「ああっ、ルビーが!」

「何だったんだろう……?」


 頭を捻るマルスたちにクラリスが声をかけた。


「それはともかく、わたしたちレッドドラゴンをやっつけたんだよね!」

「ああ、それは紛れもない事実だ」

「ギルドに報告に帰るっす」


 こうして俺たちは強敵を倒して今回の依頼も無事に達成することができたのであった。

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