マルスと手合わせした後、俺たちは改めてギルドの受付にワイバーンの爪を提出する。
「――はい、確かにワイバーンの爪ですね。この依頼も達成ですね、お疲れさまでした」
受付嬢のリコッタさんに依頼完了を認められたところで、俺たちはギルドを出て宿の部屋に戻った。
「マルスさんにも力を認めてもらえたし、わたしたちもどんどん強くなってるよね!」
「ああ。これなら里を飛び出した甲斐があったものだ」
語り合うクラリスとアンナは、達成感に満ちているように見える。
そんな時俺の腹が鳴った。
「……クカ」
「お腹が空いたんだね。そうだ、ワイバーンの肉が残ってるよね?」
お、そうだった。ギルドに提出した爪以外は俺の
俺が
「うひゃあ!」
「何もここで出す必要はないだろ!?」
ぶったまげるクラリスとアンナの二人。
おっと、こいつは失礼。
それじゃあいただきまーす!
おお、ワイバーンの肉もなかなか歯応えあってうめえじゃねえか!
「「…………」」
貪るようにワイバーンの肉を食らう俺に、クラリスたちは目を丸くしていた。
【レベルが21に上がりました。捕食によりスキル
お? 新しいスキルだぜ!
でも今はこの大量の肉を食べてしまうのが先だ。
【レベルが22に上がりました】
全部食べ尽くしたところで、俺のレベルは前より二上がっていた。
「……やはり凄まじい食欲だな……」
「いつ見てもすごいね……」
なんかアンナたち二人がドン引きしてるように見えるけど、それは置いといて新しいスキルの確認だぜ。
New【
想像はついてたけど、まさにドラゴンらしいスキルだぜ!
……さすがに
ふふふ、レッドドラゴンとやらの対決が楽しみだぜ!
翌日、俺たちはギルドでマルスたちと待ち合わせすることに。
一足早くギルドに俺たちが脚を運ぶと、先に来ていたのかサラが出迎えた。
「お二人ともおはようっす!」
「サラちゃん! もしかしてサラちゃんもレッドドラゴン討伐に?」
「もちろんっす! そのつもりでクラリスさんたちを誘ったんすから!」
「――おいサラ、その手はどうしたんだ?」
アンナが気づいたとおり、サラの腕には赤く滲んだ包帯が巻かれている。
「あーこれ? 昨日そちらが折ったマルスさんの剣を修復してたんすけど、あの剣なかなか厄介なモノだったんすよ。おかげでボクも傷だらけっす」
剣を修復しただけで怪我なんてするのかよ!?
「聞いたことがある。確かマルスの剣にはいくつもの加護がかけられていると。それで修復にも危険が伴うというのか……」
「よく分かんないけど、大変だったんだねサラちゃんも。
「あはは、どうもっす」
サラの治癒魔法で手当てされたサラは軽くお礼を言う。
そこへ大層な前ぶりでやってきたのはマルスたちだった。
「やあやあ皆さん待たせたね!」
「少し遅かったな、マルス」
「ニャハハ、英雄は遅れてやってくるものニャよアンナちゃん!」
チャオだったか、マルスの連れの猫耳少女が馴れ馴れしくアンナの肩を叩く。
もちろん岩石のような鱗で身体を覆うロックもその背後にちゃんといる。
最後にこの場に歩み出てきたのは、いつものオネエギルマスことシュワルトさんだ。
「待たせたわね。クラリスちゃんにアンナちゃん、あなたたちは今日から晴れてBランク冒険者よ」
「本当か!」
「わー! ありがとうございますギルマスさん!!」
Bランク昇格と聞いて色めき立つアンナとクラリスの二人。
「それでクラリスちゃんたちはこの依頼を受けるってことなのよね……? Bランクに昇格したんだから問題はないのだけれど……」
「心配はいらないですよギルマスさん! わたしたち強くなってますので!」
案ずるシュワルトさんの前で、クラリスは両腕を構えて自信満々だ。
「クカッ!」
「そうそう、ダイナもいるもんね~」
バッグから顔を出した俺を、クラリスがなでてくれる。
「それじゃあ早速出発しようじゃないか! 我々が力を合わせれば無敵だ!!」
「「「「「おーー!!」」」」」
「クカーーーッ!!」
急ごしらえではあるけど結成されたレッドドラゴン討伐隊で、俺たちは団結の一声をあげた。
*
某所、一帯は火の海に包まれていた。
「グルルルルルル……」
黒煙巻き上がる空で翼をはためかせるのは、赤く巨大な体躯を誇るレッドドラゴンである。
少し離れたところでその様子をうかがう黒づくめの人物がいる。
「くくくっ、実験は順調のようだ。これならあのお方の復活にも……ふふふ」
猛るレッドドラゴンを目下にほくそ笑む黒づくめの人物、彼の目的とは一体……?