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第24話 銀色の湖と温泉宿

 続いてサラに連れてこられたのは、銀色に輝く水を湛えた不思議な湖。


「あれれ~、この湖の水銀色だよー?」

「白銀の湖っす。どろどろに溶かした金属にこの水をちょっと加えるだけで、硬度が飛躍的に増すっす! それだけじゃないっす、薬の原料としても高く売れるんすよ」

「この水も採取するのだな?」

「その通りっす。だけどちょっと厄介者ががいてっすね……」


 眉を潜めたサラが見通す先には、水面から長い首を出す何かの影が。


個体名:――

種族:プレッシー

レベル:35

体力:200/200

筋力:220

耐久:160

知力:340

抵抗:240

瞬発:100


「あいつらか」

「プレッシー、この湖にだけ生息している水棲のドラゴン種っす。縄張り意識がものすごく強くって、湖に近づくと鉄砲水を発射してくるんすよ。だからお二人であいつらの気を引いてくれないっすか?」

「そういうことなら任せてよ! ね、アンナちゃん」

「ああ。乗りかかった船だ、最後まで付き合うさ」

「ありがたいっす! それじゃあ早速お願いするっすよ」


 そう告げて目配せしたサラが泉に歩み寄ると同時に、俺たちは別方向から目立つように泉に接近する。


「それじゃあいっくよー! 種子爆弾ナットボム!」


 クラリスが唱えて発射した種が、ボトンボトンと銀色の水に落ちていく。


 その音を聞き付けたプレッシー共が、長い首を一斉にこちらに向けた。


「プルウルルルルルルル!!」


 水面を震わすほどの雄叫びをあげてから、プレッシーが口から鉄砲水を放つ。


魔法障壁マジックバリア!」


 クラリスがバリアを張ってこれを防ぐけど、水の勢いで後ろに押し戻されてしまう。


「ううっ!」


 クラリスも足を踏ん張って堪えるのが精一杯だ。


「私も援護するぞ! 疾風走踏ソニックステップ!」


 俊足で水面を渡ってアンナが接近し、プレッシーに剣で斬りつける。


「プルルルル!?」


 その途端にプレッシーが怯んで鉄砲水が止まったのをきっかけに、クラリスが次なる魔法を唱えた。


閃光弾道ライトミサイル!」


 クラリスの杖から放たれた光弾が着弾し、プレッシー共はたまらず湖の底に潜っていく。


 二人ともすげえな……。


「お二人共ー、もういいっすよ~」


 それと同時にサラが両腕で丸を作って完了を示してくれた。


「いやー、あいつらの気を引いてくれるだけで良かったんすけど、まさか撃退してしまうなんて。ホントにすごいっす、先輩としてこれからが楽しみっすよ!」

「えへへ、そうかな~?」


 サラの称賛にクラリスは照れ隠しに後頭部をさする。




 そしてサラが一通りの素材を集め終わる頃には、空はすっかり夕暮れになっていた。


「いやー、集めたっす~。アンナさんたちのおかげでいつもの半分の時間で全部集められたっす、感謝っす!」

「礼には及ばないさ。その代わりと言っては難だが、今後もよろしく頼む」

「もちろんっす! ご贔屓させてもらうっすよ」

「これからも仲良くしようね、サラちゃん!」

「わぷっ!? だから苦しいっす~」


 抱きついたクラリスのおっぱいに顔を埋められて、サラがジタバタと腕を振り回す。


 あ、ずるいぞサラ! 俺も入れてくれ!


「クカァ!」


 続いてその胸に飛び込んだ俺も、クラリスは笑って受け入れてくれた。


「あはは、ダイナもわたしのおっぱい大好きだもんね~」

「ダイナも相変わらずだな」


 そうは言うアンナもどこか微笑ましそうに見てくれている。


 クラリスから解放されたサラが、続いてこんなことを告げた。


「ぷはーっ、苦しかったっす~。仕事も一段落ついたし、これから温泉宿に行くっす」

「おおー、温泉宿~!」

「実に楽しみだ」

「クカッ!」


 こうして俺たちは馬車をおいたところまで戻って、谷のそばにあるという温泉宿に向かうことに。


 サラの言った通り温泉宿にはすぐ着いた。


「これが温泉宿なんだ~」

「なんというか、独特の雰囲気だな」

「クケ?」


 何だろう? この温泉宿、やけに日本的な外観である。


 しかものれんに描かれているのはどう見てもお馴染みの温泉マークだ。


 のれんを潜ると、浴衣みたいなのを着た女将とおぼしき女の人が出迎えてくれた。


 この世界でこの日本的な服装、妙だな。


「いらっしゃい。おや、サラちゃんじゃない。久しぶりねえ」

「どうもっす! 今回はお友達も連れてきたんすけど、大丈夫っすよね?」

「もちろんよ~。ヨネさん、あとは頼んだわよ」

「はい~」


 ヨネさんと呼ばれた中居とおぼしき女の人の案内で、俺たちは和室のような部屋に連れられる。


「ゆっくりしてくださいませ~」


 中居のヨネさんがふすまを閉めたところで、クラリスとアンナが畳の床に腰を下ろした。


「ふ~、なんか心安らぐ不思議な部屋だねー」

「しかしこの草を編んだような床もそうだが、見たことのないものでいっぱいだ」


 確かにエルフの二人には馴染みがないものなのだろう。

 だけど元日本人の俺には懐かしさ満載だぜ。


「ここの女将さん、東方の島国出身って言ってたっすからね~」

「東方の島国か」

「確かここからうんと東の海に浮かぶ島々だよね、確か」


 なるほど、東方の島国か。間違いなくこの異世界で日本に当たる場所だな。


 遥か遠くにあるだろう和風の国に想いを馳せていたら、伸びをしたサラがこう持ちかける。


「それじゃあ早速温泉っす!」

「クカァ!」


 おお、待ってました!!

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