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第16話 急成長

 オーク共を全て倒した直後、俺は強烈な空腹を感じた。


「クルルルル……クガアアア!!」

「ダイナ!?」


 クラリスのすっとんきょうな声も聞き流し、俺はオークの死体を貪り始める。


 称号【悪食グラトニー】のおかげで、どう考えても小さな俺に余るはずだったオークもどんどんと腹に収まっていく。


 そして最後の一体をも骨まで食らいつくした時、頭の中でお馴染みのアナウンスが流れた。


【レベルが16に上がりました。レベル条件を満たしたことにより、スキル咬牙バイトファング破砕咬牙クラッシュバイトに、スキル識別眼光セレクターアイ分析眼光アナライズアイにアップグレードしました。オークを補食したことにより、称号異種交配クロスブリードが移行。条件を満たしたことにより、称号捕食者プレデター:駆け出しが捕食者プレデターにアップグレードしました】


 おお!? なんかすごいことになってそうだ!

 早速ステータスオープン!


個体名:ダイナ

種族:リトルレックス

レベル:16

体力:170/170

筋力:210

耐久:158

知力:150

抵抗:134

瞬発:160

スキル:

UP↑【破砕咬牙クラッシュバイト】→強力なあごで噛み砕き、物理大ダメージを与える。

UP↑【分析眼光アナライズアイ】→相手の種族名及び能力を分析して可視化。

称号:

UP↑【捕食者プレデター】→生きとし生けるものの補食を重ねた者に授けられし称号。補食時の経験値習得中アップ

New【異種交配クロスブリード】→種族の壁を超えて子孫を残そうとする強欲な者に授けられし称号。種族に関係なく交配可能。


 どっひゃー!! 俺めちゃくちゃ強くなってないか!?


 ハンパじゃない能力値の上昇もさることながら、今までのスキルも順当にアップグレードしてやがる。


 そして新しく獲得した称号、捕食者プレデターの方はは今までの上位互換で問題ないだろう。


 問題は異種交配クロスブリードだ。これって要は相手がどんな相手でも自分の子供を生ませられるってことだよな……?


「……クカ」

「どーしたの? そんなにわたしの顔を見つめて、何かついてるの?」


 キョトンとした顔のクラリスを前に、俺はブンブンと首を振る。


 ――いやいや、なんで今クラリスを見たんだ俺は!?


 そりゃあ確かにクラリスはすげー可愛いし、できることならすぐにでも俺のモノにしたいくらいだ。

 アンナだってスタイル抜群だし、硬派だけど性格もいいから……正直こちらも好みである。


 ……だけど彼女ら自身はそれを望んでいるか?


 望まない形で子供を押しつけるだなんて、男として最低のことだと俺は思う。


 異種交配クロスブリードは封印だ。うん、そうしよう。


「んー、ダイナってば変なの~」

「それよりも服を着ようクラリス。いい加減素肌を晒してるのも肌寒くなってきた」

「そうだね」


 アンナの提案でクラリスも服を着替え直す。


 そんな二人を見てたら、今まで知り得なかった彼女たちの情報がその頭上に浮かび上がってきた。


個体名:クラリス・グリーン

種族:エルフ

レベル:24

体力:160/160

筋力:40

耐久:80

知力:300

抵抗:350

瞬発:80


個体名:アンナ・スパーダ

種族:エルフ

レベル:25

体力:180/180

筋力:200

耐久:110

知力:100

抵抗:120

瞬発:300


 なるほど、これが【分析眼アナライズアイ】の効果か。


 クラリスは見た目どおり魔法寄りのステータスで、最大値が三百超えという今まで見た中ではかなりのもの。


 一方のアンナは物理寄りの速攻型なのか、物理面と機動力を中心に比較的高いレベルでまとまっている。


 それに二人とも地味に俺よりもレベルが上。


 さっきまでの強くなった歓喜がちょっと薄れてしまうぜ。


 まあ生まれてまだ三日四日なんだからこんなものか。


「なんだダイナ? 私たちをそんなじろじろと見て」

「どうしたんだろうねー?」

「まあいい。オークを倒したことだし、町へ帰ろう。……その前に素材の回収だな」


 そう言うとアンナは俺が食べ残したオークの牙を切り取り、それを終えたところで俺たちは町へ帰るのだった。




「――さすがはクラリス様にアンナ様。これだけのオークを討伐してくるとは思いませんでしたよ、ええ」


 カウンターで山盛りにしたオークの牙に、受付嬢のリコッタさんは若干顔をひきつらせている。


「いや、私とクラリスだけではここまでの数は狩れなかった。今回の功労者は紛れもなくダイナだ」


 そう告げるなりアンナが俺をカウンターに上げた。


「クカッ?」

「あれ、その子心なしか前よりも大きくなってません……?」


 眼鏡を指で上げ下げして俺を見つめるリコッタさん。


 言われてみれば確かに、今の俺は周りとの比較から小型犬から中型犬サイズになっていることが分かる。


 急激なレベルアップで、身体も大きくなったっていうのか……?


 それでも俺が身につけてる防具は全然キツくなってない。


 確か成長に合わせてサイズも大きくなっていく魔法がかけられてるんだっけか、これ。


「――ともあれ依頼達成お疲れ様です」

「これからも頑張ります」

「今後ともよろしく頼む」


 腕を柔らかく構えるクラリスと恭しく頭を下げるアンナの前で、リコッタさんがいつものように二人のカードにスタンプを添える。


 こうして俺たちはまた順調に実績を積み重ねたんだ。

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