それから目当てのオークを探すクラリスとアンナだけど、当のオークはなかなか見つからない。
「なかなか出てこないねー」
「クケッ」
のほほんとした感じで呟くクラリスに、俺は一声鳴いて返事する。
「もしかしたら我々を警戒しているのかも知れないな。オークはゴブリンよりも知能が高い、魔力量の多いクラリスと得体の知れないダイナは警戒するに値する存在だと認知されてしまっているだろう」
「アンナちゃん、ダイナは得体の知れない
俺に対してのアンナの言い様に、クラリスは不満げにぷくーっと頬を膨らませた。
こんな些細なところまで俺を想ってくれているなんて、嬉しい限りだぜ。
でも俺はアンナの見解も悪く思ってない。
俺を強い存在だと認識しているってことだからな、むしろ誇らしい気分だ。
そんな俺をアンナはにっと笑って見つめる。
「どうやらダイナはお前が思ってるほど軟弱ではないようだぞ、クラリス」
「え、そうなの?」
キョトンとするクラリスに、アンナは続けた。
「しかしこのままでは埒が明かないのも事実だ。そこで私に考えがある。この辺りに水場があるか、探知はできるな、クラリス」
「もちろんだよ!
目を閉じたクラリスが杖を構えてそう唱えると、彼女の二つに結んだ金の髪とスカートがヒラヒラとたなびき始める。
「――近くにちょうど小さい泉があるみたい」
「よし、行ってみよう。案内を頼む」
「うん、分かった」
クラリスの案内でアンナと俺は森の中にポツンと点在する小さな泉に行き着いた。
「はわ~、きれいな水だねー」
「うむ、これなら私の作戦に好都合だ」
二人揃って手を浸す泉の水は、彼女たちの顔が写りこむほど清く透き通っている。
それにしてもこの水、うまそうだな。
気がつくと俺は泉の清水に口をつけていた。
うん、清々しく喉が潤って快感だぜ。
「クカッ」
「美味しい? ダイナ」
膝に手を添えて屈むクラリスに、俺がこくんとうなづいた時だった。
なんとアンナが着ていた服を脱ぎ始めたのだ。
「クカッ!?」
「ちょっとアンナちゃん!? お外で服を脱ぐなんて、危ないよ~!」
「いや、これでいいんだ。オークは若い娘が好物だと言っただろ。奴らをおびき寄せるにはこれが一番だ」
「そっか、それもそうだね」
あごに指を立てて納得したクラリスもこの場で服を脱ぐ。
二人が裸になっても俺はもう日和ったりしないぜ?
「クカーッ!」
「あはは、ダイナも一緒に水浴びしたいんだね。おいで、ダイナ!」
「クカッ!」
腕を伸ばして招くクラリスの胸元に、俺は一思いに飛び込む。
「きゃっ!」
飛びついた俺の勢いで尻餅をつくクラリス。
むふふ、やっぱクラリスのたわわなおっぱいはムニムニしてて気持ちいいや。
「このまま水遊びしちゃおっか!」
「クケッ!」
それから俺は一旦オークのことは忘れて、クラリスと一緒に水遊びを楽しむ。
泉の水も冷たくて気持ちいいし、何よりこんな可愛い女の子が一糸まとわぬ姿で構ってくれるんだ。
最高という他ないね。
「全く、二人とも呑気なものだ」
一方のアンナは独りで均整のとれた身体を清めている。
確かにあれならオークが鼻の下伸ばしてやってきそうだ。
そうかと思ったらクラリスがアンナに水を吹っ掛ける。
「むっ!?」
「ほらーっ、アンナちゃんも遊ぼうよ~!」
そんな風に誘うクラリスに水を顔にかけられたアンナが、ニヤリと笑みを浮かべてこっちに歩み寄ってきた。
「――私をその気にさせたな? いいだろう、私の本気を見せてやる!」
「わーい、そう来なくっちゃ!」
恥も外聞もなく水場で戯れる、一糸まとわぬエルフの乙女たち。
それを
「ブヘヘ……」
いつの間にか豚面の巨漢が何体も木陰から顔を覗かせているのに、俺は
「クケッ」
水遊びに夢中なクラリスの尻を、俺は口でツンツンと突っついて彼女に知らせた。
「ん、どうしたのダイナ?」
俺の視線の先に気づくなり、クラリスとアンナが泉から上がってそれぞれの武器を拾い上げる。
「どうやらまんまとかかったみたいだな」
「アンナちゃんの作戦通りだね!」
「ブヒッ!?」
得意気な二人の顔に、オークもハメられたと気づいたのか粗末な棍棒を握る手を強めた。
アンナたちはやる気だろうけど、裸の乙女を戦わせるなんてとんでもない!
「クカーッ!」
「え、ダイナ!?」
前線に躍り出た俺に、クラリスは宝石みたいな緑色の目を丸くする。
「クカッ、ギャアギャア!」
「もしかしてダイナが戦ってくれるの?」
どうやらクラリスは俺の言わんことを察してくれたみたいだ。
「よーっし、それじゃあやっちゃえダイナ!」
「クガーーー!!」
クラリスを背後に雄叫びをあげる俺に、オーク共がニマニマと侮るような笑みを豚面に浮かべる。
俺をナメていられるのも今のうちだぜ?
「クカーッ!」
「
クラリスが唱えると、突撃する俺の身体に力が湧いてくるのを感じる。
これは確かアンナがギガントカリブーを倒すときにクラリスが使った魔法! こんなにも力が溢れてくるのか!
「クカーッ!!」
早速実践投入だ、
念じるや否や俺の牙を雷電がまとい、食らいついたオークの手首を瞬時に焼き切った。
「ブヒ……ッ!?」
「クカーッ!!」
恐れおののくオーク共に、俺は猛る牙を剥く。
すると背後からアンナも裸のまま出てきた。
「私も負けてられんな! 【
アンナも剣に雷電をまとわせて、オーク共をぶった斬っていく。
そして俺たちがオーク共を一掃するのにそう時間はかからなかった。