脚を折り曲げたうつ伏せの状態で眠っていた俺が目を覚ますと、左右からこの上なく柔らかな感触に顔を挟まれているのを感じた。
わぷっ、これはおっぱい……!?
右がクラリスで左がアンナか、二人の巨乳に挟まれたらまた夢の中に落ちてしまいそう……。
二人の間でゴソゴソ身動きしてると、クラリスの表情がムズムズと動き始めた。
「ん、んん……。あ、ダイナ。もう起きてたんだね~」
「クカッ」
どうやらクラリスも目を覚ましたようで。
今の彼女はふんわりとした白いネグリジェのよう寝間着姿で、その豊満なバストがこぼれ落ちそうでドキドキしてしまう。
「ん~っと」
そうかと思っていたら上体を起こしたクラリスが、ネグリジェを一思いに脱ぎ捨てた。
今身に付けてるのはふんわりとした桜色の下着一式、ほんわかとしたクラリスにはとてもよく似合ってると思う。
「んー、どうしたのダイナあ?」
じーっと見てたらクラリスがのほほんとした感じで顔を近づけてきた。
無自覚な色気と圧倒的おっぱいのダブルパンチが俺を襲う!
「クケッ!?」
「んふふ、可愛い~」
その笑顔は反則だろクラリス……。
それからすぐに昨日と同じ服装に着替えたクラリスは、アンナがくるまる毛布をひっぺがした。
アンナの寝間着は丈が短い紺色のキャミソールと短パンか。
「ほらアンナちゃ~ん、朝だよー」
「むん……、あと少し寝させてくれクラリス……」
「そんなこと言わないの! ほら、今日もお仕事頑張ろ!」
そう言いながらクラリスが窓のカーテンを開けて、日の光がアンナの顔に降り注ぐ。
「んん……。まだだ、もう少しだけでいいから……」
「む~、今日はなかなか手強いなー。――それっ!」
続いてクラリスが自分のおっぱいでアンナの顔面をふさいだ。
おお、なんて羨ましい!!
「――わぷっ、苦しい!」
「これでよしっと」
腰に手を当てて得意気なクラリスに、無理矢理起こされたアンナは釈然としない様子。
それからアンナはクラリスに身を任せるように着替えさせられて、二人は俺を残して部屋を出た。
なんでも朝食を食べに下へ行ってくるとのこと。
どうやらここは宿屋らしい。
フカフカのベッドでうつ伏せに休んでると、しばらくして二人が戻ってきた。
「ダイナ~、きみにもご飯だよー」
「クケッ!」
そうだ、朝だから俺も腹が減ってたところだったんだ!
飛び起きた俺が駆け寄ると、クラリスはにっこりと微笑んでハムみたいなものを差し出してくれる。
「ダイナってお肉が好きなんだよね? だったらこれあげる~」
「クカァ!」
クラリスのくれたハムを、俺は引ったくるようにかぶりついた。
うん、この塩味もいい感じだぜ!
「おお~、朝からすごい食べっぷりー! アンナちゃんとは全然違うね~」
「なにもこいつと比べることないだろ!? 私だって寝起きなんだ!」
頬をほんのりと染めながら反論するアンナに、クラリスは軽く笑う。
やっぱり二人は仲良しだな。
「ほらダイナ、ハムだけじゃなくてソーセージとかもあるよー」
そうして俺はニコニコ顔のクラリスが持ってきてくれたハムとかソーセージを夢中で食べたんだ。
腹が膨れたところで俺はクラリスのボストンバッグに入って外出のスタンバイ。
「それじゃあ行こっか」
「クカッ!」
ボストンバッグに揺られながら俺がクラリスとアンナの二人と一緒に向かったのは、昨日もちょっとだけ足を運んだギルド。
中に入ると朝っぱらだっていうのに早速酒臭い香りが……。
うへえ、朝からおっさんどもが酒盛りしてるよ……。
酔っぱらいどもからクラリスをさりげなくガードするアンナ。
朝弱そうな彼女だけど、こういうときは頼りになりそうだな。
二人が向かったのは、依頼書が貼り出されてる大きな掲示板。
「ん~、どれがいいかなあ?」
指であごをトントンと叩きながら張り紙を吟味するクラリスに、アンナが一枚の依頼書を差し示す。
「今日はこれにしよう」
「んーとどれどれ~? 森の洞窟でスライム退治、かあ。うん、これなら昨日よりも楽そうだね」
森の洞窟って、もしかして俺が生まれたところかなあ? あそこなら確かにスライムも結構いたと思うけど。
「それじゃあ決まりだな」
依頼書を剥がしとったアンナが、受付に申請をする。
「おはようございます。今日はこちらの依頼を受けてくださるんですね?」
昨日と同じ眼鏡の可愛いリコッタさんに、アンナは率先して答えた。
「ああ、今日はこの依頼を受けようと思う」
「はい、確かに承りました。昨日ギガントカリブーの角をお持ち帰りしたお二人なら危険はないかと」
リコッタさんに見送られて、俺たちは早速森の洞窟に向かうことに。
町を出て目的地に向かうところだけど、何だろう。嫌な気配を感じるぜ。
「どうしたのアンナちゃん、何か気になるの?」
「あ、いや。なんでもないクラリス」
のほほんとしたクラリスにそう答えるアンナだけど、彼女も俺と同じく怪しい気配に気づいているはず。
俺とアンナで警戒しながら、スライムのいる森の洞窟にたどり着いた。
「クカッ」
「ん、どうしたのダイナ?」
ボストンバッグから飛び出した俺を、クラリスはキョトンと見つめている。
間違いない、ここは俺が生まれた洞窟だ!