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第3話 俺、上げて落とされる。

 仕留めたキツネを平らげたら、レベルがさらに8に上がった。


 能力値が上がったのもそうだけど、さっきの戦いで少し減った体力も回復したのは嬉しい。


 さてと、成り行きで洞窟を出たことだし今度は外の世界で狩りをしよう!


 レベルをあげまくって目指すは人化、そしてモテモテハーレムコース!


 うへへ、夢を思い浮かべたら自然とにやけてきた。


 洞窟を出た先は森の中みたいで、射し込む木漏れ日が肌に優しい。


 やっぱ日の光は清々しいよな。


 少し歩くと俺の生命感知ライフセンサーがいくつかの反応を感知する。


 あの茂みの向こうか。


 まだ小さな身体で茂みの中を覗いてみると、そこには角が生えたウサギのような生き物の群れ草を食んでいる。


 ついでにそいつらの頭上に【ツノラビット】ってテキストが表示された。


 ツノラビットって名前なのか、あいつらはうまそうな気がするぜ。


 そそられる食欲に浮き足たって、うっかり小石を蹴飛ばしてしまう。


 あ。


 その途端ツノラビットたちが長い耳をピクン!と立てて辺りをキョロキョロと見回し始めた。


 しまった、気づかれたか。


 慌てて茂みから飛び出した俺を嘲笑うかのように、ツノラビットは軽やかに跳躍してみんな逃げてしまう。


 くそっ、狩りは失敗か。


 その後も手頃な小動物を何回も見つけたんだけど、その都度先に気づかれて逃げられてしまう。


 洞窟の外の方が獲物の動きが俊敏で、なかなか近づけないぜ。


 茂みからとぼとぼと出たら、ふと石ころのようなものが頭に当たる。


 痛てっ。今のは?


 頭上を見上げると、木の上で【スリングモンキー】の名前を冠するサルみたいな奴が虚空から石ころを出しているのが見えた。


 あいつの仕業か。……待てよ、あいつを食えば便利な飛び道具スキルが手に入るかも!


「クカァ!」


 スリングモンキーがいる木に向かう俺だけど、この身体じゃ木登りは無理そうだ。


 くそっ、木の上でやつがケラケラと嗤ってやがる。


 そうやって馬鹿にしてられるのも今のうちだ!

 そうだ、あのスキルが使えるかもしれない。


 打撃竜尾ストライクテール


 スリングモンキーが石を投げつけまくるのをかわしながら念じたところで、俺は白く閃光を放つ尻尾を木に思い切り打ち付けた。


「キキィ!?」


 するとこの衝撃でスリングモンキーが木から落ちる。


 なるほど、打撃技も使いようだな。


 ついでに仕返しだ、咬牙バイトファング


 そこを俺が噛みつき、スリングモンキーの頭を噛み砕いて瞬殺した。


 よっしゃあ!


 ウキウキしながらスリングモンキーの肉をかじる俺。


 こっちはなかなか肉質が筋張ってるな。


 固い肉にもめげずに食べ尽くすと、早速吉報が頭に流れ込む。


【スリングモンキーを補食したことにより、スキル投擲石礫スリングストーンを習得しました】


 思った通りだぜ。早速見てみよう。


投擲石礫スリングストーン】→物理攻撃スキル。離れた相手に石を投げつけて土属性物理小ダメージを与える。


 他のスキルより威力が低いというのが気になるけど、こっちは初めての遠距離攻撃ということで重宝しそうな気がする。


 新しいスキルを習得して勢いづいた俺は、さらに狩りを重ねることにした。


 投擲石礫スリングストーンのおかげで素早い獲物にも一撃を当てて接近のチャンスを作れるから、もう取り逃がすことはもない。


 そのおかげでレベルも順調に上がっていった。


 はっはっは、俺も強くなったなあ! この森でもう上位捕食者なんじゃねーの?


 そんなことを思いながら威風堂々と森を歩いていると、生命感知ライフセンサーが一際大きな反応を捉えた。


 お、こいつは食べ応えありそうな反応だ!


 反応をたどると、華奢な小鹿【リトルカリブー】が地面に座っているのを発見。


 小鹿といっても俺よりだいぶ大きい、けど今ならいけそうな気がするぜ!


 ソロリソロリと忍び寄るけど、リトルカリブーはくつろいだ様子で全く警戒してない。


 これならラクショーだぜ!

 咬牙バイトファング


 鋭い歯を光らせながら俺は、リトルカリブーの尻にかぶりついた。


「ピュイーー!?」


 驚いたリトルカリブーが慌てて立ち上がっても、俺は食らいついて離れない。


 こんな大物、逃してたまるか!


 鳴き叫ぶリトルカリブーの尻の皮がちぎれた時だった、突然硬質な蹄のようなものが迫って、とてつもない衝撃と共に俺は吹っ飛ばされてしまう。


「クゲッ!?」


 地面を転げてから足腰を震わせながら立ち上がると、目の前には見上げるほど巨大なトナカイ【ギガントカリブー】がどっしりと構えていた。


 あばら骨が折れたのか横腹の激痛でかすむ視界に写り込む、俺の何十倍はあろうかというギガントカリブーの巨体。


 次の瞬間振り下ろされる、奴の太い脚!


 すんでのところで身をかわしたけど、固く巨大な蹄で打ち付けられた地面が陥没する。


「ブルルルルルル……!」


 リトルカリブーを庇うように怒りの唸り声をあげるギガントカリブー。


 間違いない、あのリトルカリブーの親だ……!

 あんなデカい奴、敵うわけがない!


 間髪いれずに脚を振り下ろすギガントカリブーから、俺は逃走を図ろうと背を向ける。


 ……それがいけなかった。掬い上げるように振るわれたギガントカリブーの角で、俺は空高く投げ飛ばされてしまったんだ。


 あれ、俺死ぬのか……?


 あっさりと迎えた命の危機にポカーンとしながら俺は森の上空に打ち上げられて、ついには地面に叩きつけられるように落下した。

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