驚いたことに俺の倍以上も大きなグラトードを、骨まで残さず平らげることができてしまった。
味はというと、ちょっと生臭いけど淡白な鶏肉ってところか。不味くも美味くもないって微妙な感じ。
でもこれでまたレベルが上がって、今の俺はレベルが3になった。
よーし、この調子で食って食って食いまくるぜ!
それから俺は出くわした生き物を選り好みすることなく食らっていった。
大きめのモルモットみたいな奴の他にもファンタジーらしくスライムもいたから喜んで食ったな。
味のないゼリーみたいな食感だったスライムはともかく、モルモットは歯応えあってさっきのカエルよりもうまかった。
ついでに他の生き物の対比から、今の俺が豆柴くらいの大きさであることも判明。
さっきのグラトードも入れてこの洞窟にいる主な生き物であるそいつらを手当たり次第に食いまくっていたら、ステータスがこうなりました。
個体名:なし
種族:リトルレックス
レベル:5
体力:20/20
筋力:26
耐久:11
知力:10
抵抗:8
瞬発:13
スキル:
【
【
【
【
【
【
称号:
【
【
どっちも優れものなスキルで前者は隠れている獲物を簡単に見つけられるし、後者は余った肉を保管するのに使える。
まあ
他にも
……というか人間の頃には当然なかった尻尾の扱いがまだよく分かんないんだよな~、やじろべえみたいに身体のバランスを取るにはいいんだけど。
とまあこの洞窟、チュートリアルには最適だぜ。
意気揚々と
「クケッ!?」
今の可愛い声は俺のです、ってそんなことはどうでもいいんだよ。
とっさに飛び退いたら、元いた地点に灰色のキツネのような獣が上から奇襲を仕掛けたところだった。
振り下ろされた爪が一瞬光っていた、ということは奴もスキル持ちか!
「グルルルル……!」
奇襲をかわされて不機嫌なキツネが不機嫌そうに唸り声をあげて、こちらをにらむ。
「ギュルルルルル……!」
こちらも負けじと鬼の形相……のつもりでにらみつけて唸り声を返す。
「ジャアウウウ!!」
先に仕掛けたのはキツネの方だった、鋭い牙を白く光らせてこっちに飛び付いてきた。
「クエッ」
すんでのところで噛みつきをかわした俺だけど、すぐ奴に脚を払われて転ばされてしまう。
「クゲッ!?」
転倒の衝撃で目がチカチカしたのもつかの間、俺の小さな身体はキツネに噛みつかれた。
誇らしげな奴の目、だけどまだ終わっちゃいねえ!
返しの
こうなったら倍返しだ!
今度はこちらがキツネの喉元に食らいつくと、奴は苦しげにもがく。
「キャアアアアン!!」
振り払われた俺だけど、奴の首の肉は持っていったぜ。
それに恐れをなしたキツネは、尻尾を巻いてとぼとぼと逃げていった。
待ちやがれ!
沸き上がるアドレナリンに身を任せ、俺は逃げるキツネを追う。
だけど俺はすぐにキツネを見失ってしまった。
くそっ!
……あ、身体が。
さっきのダメージで痛む身体に舌を鳴らした俺だけど、まだ諦めちゃいない。
奴も深傷を負っている、ならばたとえ見えなくても血の痕をたどれば……!
そう考えた俺が地面に顔を寄せると、鉄臭い匂いが鼻をくすぐる。
そうだ、ティラノサウルスは鼻も利くんだ。
血の匂いをたどるうちに、俺はいつの間にか洞窟を出ていたようだ。
「クケッ」
今生初めての日の光に、俺は目を細める。
この異世界にもしっかりと太陽はあるんだな。
そんな思いで見上げると、大空を横切る影が。
あれはプテラノドンみたいな翼竜というよりは、ファンタジー世界でもお馴染みなワイバーンっぽい。
おっと、それよりも取り逃がしたキツネを探さないと。
再び血の匂いをたどると、すぐに草陰で横たわるキツネの亡骸を見つけた。
よし、まずはこいつを一かじり。
……うえっ、獣臭い。モルモットの方がまだマシだぜ。
【グレイフォックスを捕食したことによりスキル
お、来た来たあ!
個体名:なし
種族:リトルレックス
レベル:6
体力:15/22
筋力:30
耐久:15
知力:12
抵抗:10
瞬発 :15
スキル:
【
【
【
【
【
【
New【
New【
称号:
【
【
お、これはファンタジー小説でいう鑑定眼の簡易版かな?
こいつは便利そうだ。
それともう一つ獲得したのは爪のスキルか。
でも今の俺の腕ってすげー短いから、使い道はないかもな……。
獣臭さを我慢しながら、俺は仕留めたキツネを平らげたのである。