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異世界ティラノ無双!
月光壁虎
異世界ファンタジー冒険・バトル
2024年09月26日
公開日
113,060文字
連載中
不慮の事故で命を落とした少年は、異世界にて恐竜の赤ん坊として転生する。
本能のままに捕食すればするだけレベルアップして強くなるという、ゲームみたいな世界観の中で少年は捕食を重ねていく。
ある時無謀な戦いで深傷を負った彼に手を差し伸べたのは、冒険者として活動する二人のエルフ少女だった。
ダイナと名付けられた彼は、彼女たちの元で強くなることを決意。二人と共に彼は戦い、そしてさらに強くなっていくのだ。
※なろうとカクヨムでも掲載しております。

第1話 俺、異世界転生す。

 ピトン、ピトンと頭上で雫の落ちる音がする。


 だけど周りは真っ暗で、どこか狭苦しい感触もある。


 ここはどこだ? 確か俺は学校帰りにお気に入りのファンタジー小説を買って帰るところだったはずじゃ……。


 身動きをとってみると、足が当たったところから暗闇にヒビが入る。


 そのヒビめがけて何度も蹴りつけると、急に身体が放り出されて青白い光に照らされた。


 青白い光の元はホタルか? 光る点があちこちでフワフワ浮いてるんだけど。


 てかこの場所はどう考えても俺が慣れ親しんだ町じゃない。

 なんていうか暗くて静かでひんやりとしていて、まるで洞窟の中だ。


 後ろを振り返れば二つに割れた卵の殻のようなものが転がっている。


 殻の内側はまだ濡れているように見える、あそこから俺は出てきたのか……?


 しかもさらに奥にはまるで恐竜のような骨が鎮座している。


 あれは何なんだ? なんか妙に親近感を覚えるんだけど。


 おぼつかない足取りで少し歩き、足元の小さな水溜まりを覗き込むと、まるで子犬のように小さくてあどけない恐竜の姿が写り込んでいたんだ。


 う、ウソだろ……!?


 鋭い歯が並ぶ口に大きな頭、不釣り合いなくらい短い腕とたった二本の指。


 これは間違いなく太古の暴君ティラノサウルスの特徴だ。

 ついでにいうとさっき見た骨も博物館にあるようなティラノサウルスの骨格そのもの。


 しかも俺の動きに合わせて、写り込むちびティラノも動く。

 まさか、これが今の俺なのか……!



 ――やったぁ~!!


 絶対これは転生って奴だ。ファンタジー小説でもよくあったから間違いない。

 転生きたーー!!


 だけどこんな生き物は元の世界には現存してないはず、もしかして恐竜時代に転生してしまったのか……?


 いやいや、恐竜時代と見せかけて実はよく似た異世界って可能性も捨てきれない! というかそうであってくれ!!


 それはさておき転生した主人公はほぼ例外なくチートなりなんなりで大活躍して、モテモテになる。繰り返す、モテモテだ!


 恋とは無縁な青春でひそかに憧れていた転生ファンタジーに飛び上がって喜ぶ俺だけど、ふと思い出す。


 だけど今の俺って完全に人外だよな、モテるにしてもこのままじゃ同じ恐竜相手……。

 第一この世界に人がいるかさえ怪しい……。


 いや諦めるのは早い、これが恐竜時代じゃなくて異世界なら人がいる可能性もあるし、ここから人の姿に変わる可能性だってあるんだ!


 希望がムクムクと膨れ上がったところで、俺の腹からキュルル~と可愛い音がする。


 そういえば今の俺は生まれたての恐竜なんだ、多分まだ何も食べてない。


 目の前をふわりふわりと飛ぶホタルなんて食べても腹の足しにならないだろうし、第一虫を食べるのはちょっとな……。


 生まれたばかりなのと空腹でふらふらな足取りで、俺は食べられそうなものを探すことに。


 同じ二足歩行でも恐竜は前傾姿勢な上、ティラノサウルス特有の頭のデカさ故に気を付けないと前につんのめりそうになる。


 慣れない足取りに苦戦しつつ少し歩くと、突然ワシャワシャとコウモリみたいなのが頭上で飛び乱れるのを見て、思わず腰を抜かしてしまう。


 うわっ、ビックリしたぁ!


 コウモリか、食べたらなんかヤバい病気になりそうだからパス。


 ていうか恐竜時代にコウモリなんていないよな? じゃあ恐竜時代じゃなくてそう見せかけた異世界ということになるぞ。


 騒ぎながらまとわりつこうとするコウモリを振り払おうにも、この短い腕ではそもそも頭上まで届かない。


 仕方なく全身を振り乱してコウモリを追い払いながらひたすらに進むと、何かの視線がどこからか刺さるのを感じた。


 この視線はもしや、俺を狙ってる……?


 そんなことを気にしてたのもつかの間、横から何かが飛び込んできた!


 おわっと、危ねっ!?


 とっさに後ろに飛び退いてかわした途端、目の前にずんぐりとした大きなカエルのようなものがいた。


 あいつが俺を食おうとしたのか。


「クルルル……」


 角みたいなとんがりが生えた目が、ギョロりとこっちを向く。


 あの姿はペットショップでもたまに見たツノガエルって奴にそっくりだ。


 コロコロとして可愛いからそのうち飼いたいと思っていたが、まさかこんな形で会うことになるとは。


 だけど奴は今の俺を見下ろすほどの巨体、しかも完全にこっちを狙ってやがるぜ。


 逃げるか? いや、逃げたところで背を向けた瞬間あのジャンプ力ですぐに捕まってしまうだろう。


 だけど大ガエルはそれ以上動こうとしない。


 もしかして俺が見えてないのか?

 そういえばカエルは動いてるものしか見えないって、ネット情報にあった気がする。


 このままずっと動かなければ……いや、空腹を抱えながら我慢比べをするのはこっちが不利だ。


 なら一か八か……!


 一瞬踵を返した俺は、飛びかかる大ガエルにすぐ向き直って前につんのめる勢いで突っ込む。


「ケゴ!?」


 口をこれでもかと開けた大ガエルの舌に俺は思いきって食らいつき、そのまま噛み切ってやった。


【スキル習得条件を満たしたことにより、咬牙バイトファングを習得しました】


 ん、今のってもしかしてスキル!?


 異世界ならそう来なくっちゃなあ!


 舌を噛み千切られてのたうちながらひっくり返る大ガエルを前に、俺はニヤリと口角をつり上げる。


 お前が今生最初のメインディッシュだ。食らえ、咬牙バイトファング


 俺が念じた瞬間に歯が白く閃光を放ち、瞬時に大ガエルの腹を食い破った。


【グラトード撃破により称号悪食グラトニー獲得。レベルが3に上がりました】


 んん!? 大ガエルを仕留めた途端この身体に力がみなぎってきたぞ。


 しかも称号まで獲得とは、どんなものなのか。


 んーと、こういうときは小説の展開でお馴染みなあれだ。ステータスオープン!


個体名:なし

種族:リトルレックス

レベル:3

体力:16/16

筋力(物理攻撃を示す力):18

耐久(物理防御を示す力):7

知力(魔法攻撃を示す力):5

抵抗(魔法防御を示す力):5

瞬発(敏捷性を示す力):7

スキル:

頑丈顎門ストロングバイト】→噛みつきの威力大アップ

技食強奪スキルイーター】→倒した者に準じてスキルや称号を習得。不適合なスキルは経験値に還元

New【咬牙バイトファング】→噛みついて物理中ダメージを与える

称号:

New【悪食グラトニー】→無尽蔵に食らい続ける者に授けられし称号。胃袋の容量に関係なく捕食が可能


 おお、本当にステータスが開いた!


 どれどれ、個体名はなしだから今の俺は名無しの権兵衛ってところか。


 種族はリトルレックス、やっぱりティラノサウルス絡みなんだな。


 能力値の配分から想像するに、俺は物理攻撃気質ってところか。


 レベルも今ので上がったっぽいし、スキルと称号とやらも増えている。


 どの称号も食に関係してるから、とにかく他の生き物を捕食しまくれってことだな!


 よっしゃ、やってやるぜ!


 ――その前に目の前のグラトードとかいう大ガエルを食わねえと

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