宿の朝食として提供される料理は軽めな物で、昨日の昼食と同じように必要な者が追加で頼むことで食事量を調整していく仕組み。
並べられたのは野菜やゆで卵、湯で海老、鶏ハムなどがパンの上に載せられた
(高級宿だけあって、日に三度の食事が本当に美味しい~。寮食と学校の食堂もだけど、基本的に貴族子息令嬢が口にするものだら、味と質が担保されてて助かるよ。母さんの料理が悪いとは言わないけどね)
転生者であるリンは調味料や添加物のある現代の食事に慣れた状態で、異世界の田舎に産まれてしまった。最初の頃は気にする余裕もなかったのだが、ふとした瞬間にアレを食べたいコレを食べたいと思い出して、手が届かないのだと肩を落としていた。そういった時期と比べれば、今現在の美味な料理を楽しめる日々は天国そのもの。舌が肥えてしまうこともお構いなしに楽しんでいく。
(そういえば、煎餅があるから米と醤油はあるんだよね)
「チマ様ってお米に生魚が乗った料理って食べたことあります?」
「お寿司のこと?美味しいわよ、あれ」
(あるんだ)
「リンさんはドゥルッチェ西部のご出身ですよね?そちらの方からの知名度が非常に低いはずですが、よくご存知でしたね」
「え…、魚食が好きなもので、はははー」
(行くか、ドゥルッチェ東部っ!)
「魔法道具での冷凍、そして鉄道技術の発展のお陰で王都にいる私も食べれるのだし、
「本格的に習うのは二年生からでしたっけ?」
「そうよ。本格的なのは専門の学院に行ったりして学ぶみたいで、学校の方では触りの分を教えて興味を持った人を引き込むって算段らしいわ。家庭教師の先生がいってたの」
どちらの技術にも関わってくるのは
神族によって資源が失われた、
―――
「衣装の丈…短すぎない?
そういって運動場に表れたのは半袖の上衣に短い丈のスカートをいう、肌色の…体毛の多く見られる庭球衣で表れたチマと同じ意匠の女性陣。動きを阻害しないためとはいえ、大なり小なり羞恥心が働いてデュロたちへと視線を移す。
男性陣はチマたちを刺激しないようにと気遣いをしつつ、バァナは彼女たちの生足を目に顔を赤らめて距離を老いてしまった。彼是騒ぎ立てるような為人ではないことに安堵して、四人は道具を手に庭球の遊び方を確認していく。
「要は玉が二度跳ねる前に打ち返せばいいのね」
「なんとなくで遊びましょうか」
ものの見事に四人は素人で、庭球というよりは庭球の道具を使った玉遊びと化しているのだが、本人たちは案外に楽しくしているので、騎士や男性陣は茶々入れること無く見守っていた。
「いいのですか
「昨日の釣りもだがな、チマがあんなに楽しそうにしている場所に割って入りたくはないのだ。何か稽古事に打ち込むか、屋敷でちょっとした娯楽に笑みを零すくらいの姿しか見てこれなかったから、友人にはなれない従兄の私ではなく、心の許せる友人と過ごせる大切な時間の邪魔はしない。色々と気を利かせてくれたのに悪いなバァナ」
「そう仰有るのなら構いませんが。私的にも、大切な友人には悔いのない時間を過ごしてもらいたいのです。昼後の演奏はお二人だけとはいきませんし、……少ししたらチマ様と一対一で庭球の勝負でも如何ですか?チマ様は案外に勝負事がお好きみたいですし」
「あいつが熱くなる勝負事は布陣札くらいだと思うが…。ふっ、今は良いさ、出来立ての友人との時間を優先して欲しいから」
「案外に奥手ですよね、殿下って」
「お前に言われたくないさ」
信用の置けるバァナを茶化しつつ、二年と三年の面々で庭球に熱をいれる。
「ふぅ…、とりあえず一旦の休憩にしたいわ。昼前なのに陽射しが暑くって困っちゃう」
「夏ですからねぇ。私達は休憩としましょうか」
「あちらに
「そうね、シェオにでも用意させるわ」
手振りで休憩と茶の用意を伝えれば、シェオは頷き荷物置き場へと歩いていき、四人のおやつを順位していく。
「チマ様とシェオさんって本当に以心伝心っすよね、なんかカッコいいし憧れちゃいますよ」
「決まった合図があるだけよ。…それと長く仕えてくれてるってくらい」
「へぇそうなんすか、へぇ」
「私を見て何のお話しですか?」
「私とシェオは付き合いが長いって話しよ」
「そういうことですか。よく考えてみれば、人生の三分の一はアゲセンベ家に仕えていますからっ」
「じゃあ私は半分も顔を合わせているのね、ふふっ」
「お嬢様からするとそうなるのですね」
にこやかにおやつの準備をするシェオは何処か誇らしそうにしていた。