山道を進んでいると、突然、矢が飛んできてカロンの足元の地面に突き刺さった。
ユースがカロンを庇うように立ちはだかり周囲を見渡すと、木々の陰から次々と物騒な武器を持った見知らぬ人間が出てくる。
「山賊か!」
いつの間にか、二人は周りを山賊に囲まれていた。
「よう、そこの色男さんよ。命が惜しけりゃその可愛い女と金品全部置いていきな」
「断る」
ユースが剣を構えて言い切ると、ヒュ〜ゥと口笛が聞こえてきた。
「女の前だからってかっこつけてんじゃねーよ色男。死にてぇなら望み通りにしてやるさ」
山賊達が武器を構えると、一斉にユースに飛びかかる。
だが、ユースは華麗に山賊の攻撃を交わすと、一人、また一人と斬り倒して行った。山賊は誰もカロンに近づけない。
(すごい、ユースさん、強い……!)
カロンの目の前で、ユースはどんどん山賊を倒していく。その美しく見事な剣捌きに、カロンは目が釘付けになっていた。
「くっそ、これでもくらえ!」
山賊がユースへ何かを投げつけた。それはユースの目の前で大きな爆発を起こす。それは火の力の宿った鉱石花だった。
鉱石花は通常の鉱石よりも魔力が強い。爆発の威力も強く、爆発が起こった周囲は砂埃が立ち込めていた。
「ユースさん!!」
カロンが思わず叫ぶ。
「へっ、口ほどにもねぇ……ガハッ!」
山賊が言い終わらないうちに、砂埃の中からものすごい勢いでユースが現れ、山賊を斬り倒した。
ユースの無事を見てカロンがホッとすると、ユースはまた次々と山賊へ斬り掛かっていく。
ユースは、命は失わないが、戦闘不能になるくらいの負傷を負わせる斬り方をしている。
斬られた山賊は地面に倒れながらうめき声をあげていた。
「て、撤退だ!」
まだかろうじて動ける山賊は、負傷した仲間を担ぎながら慌てて逃げていった。
逃げ去る山賊の背中を見送り、ユースはカロンに視線を向ける。
「怪我はないか?」
ユースがそう言ってカロンに近寄ると、戦況を呆然と見つめていたカロンはハッとしてユースを見た。
「は、はい、大丈夫です。お強いんですね!」
すごい!と両手を合わせてカロンはユースに笑顔を向けるが、その手は小刻みに震えていた。
それを見て、思わずその手をそっとユースが握りしめる。
「あ、あれ?いつもはこんなことないのになんでだろう。ユースさんがいるからホッとしちゃったんでしょうか」
慌ててえへへ、と強がるカロンを、ユースは眉を顰めて見つめる。
「強がらなくていい。今は一人じゃない。俺を頼ってくれていい」
美しい蒼色の瞳で、カロンをじっと見つめるユースは、とても真剣だ。
(う、え、そ、そんな、深い意味はないんでしょうけどまたそんな、誤解してしまいそうになるようなことをそんな美しい顔でしれっと言わないでほしい……!!)
突然のことにカロンが顔を真っ赤にしてうつむくと、ユースは戸惑ったように手をそっと離す。
「すまない、俺にそんなことを言われても困るだけだな」
「えっ、いや、その、突然で少し驚いたといいますか、ずっと一人で行動してきたのでこういうことに慣れてないといいますか!あの、ユースさんが嫌だとか困るとかそういうことではなくてですね!」
カロンがあわあわとしながらそう言うと、ユースはホッとしたように微笑む。
「それならよかった」
(う、わぁ~!イケメンの微笑みの!破壊力!!)
クラクラしそうになるのを堪えながら、カロンはなんとかユースへ微笑み返した。