「魔王! お前の野望もここまでだっ!」
「ファッファッファ。勇者ウェルダンよ、よくぞここまで…………む? 貴様、一人か? 縛りプレイ中か? それとも最近流行りのパーティーを追放された系か?」
「うるせえっ! くらええええええっ!」
「まあそう焦るな、勇者ウェルダンよ。よくぞここまで来たな。余は待っておった。貴様のような若者…………若者……? 貴様のような中年が――――うおっ?」
「黙れ魔王っ! 二度と復活できないよう息の根を止めた後で、お前の血を根絶やしにしてやるっ! 魔物は一匹たりとも残さずに嬲り殺しだっ!」
どちらが魔王かわからないような物騒な発言をした男は、問答無用に襲いかかってくる。
こっちはわざわざ戦闘前の口上を一生懸命覚えて、噛まないように何十回も音読したというのに、全くもって空気の読めない中年勇者だ。
「余に刃向かう愚か者め。ここまで来た褒美として、冥土の土産に見せてやろう。出でよ! 四十七剣よ!」
「四十七剣?」
「そうだ。これぞ貴様を葬る、魔王最強にして究極の奥義。今宵選ばれし剣は、どうやら貴様を一撃で死へと招く剣となるようだ」
詠唱によって生じた暗黒空間に『死』『招』という言霊が吸い込まれる。
闇から生まれ掌に収まった武器は、フライドチキンのような武骨な形の物体。剣というより鈍器に近い四十七剣は、その名の宣言と共に振り下ろされた。
「
「島根県は日本の中国地方に位置する県。県庁所在地及び最大の都市は松江市。全国では、鳥取県に次いで二番目に人口が少ない。県の木はクロマツ。県の花はボタン。県の鳥はハクチョウ。特産品としては米、葡萄、西条柿、牛肉、メロンなどおおおおお!」
とてつもなく長い断末魔を叫びながら、勇者の身体は消滅する。
静寂に包まれた城の中で、余は両手を顔に当てると大きく溜息を吐きつつ呟くのだった。
「…………まともな技が欲しい……」