エリーシャがジャミルへの返事をどうするか考えていると、
「ジャミル、その手を離してくれないか」
後ろからダリルが二人に声をかけてきた。
「なんだよ、ダリルか。俺は今エリーシャ嬢とお近づきになろうとしてるんだ。見てわかるだろ、邪魔するなよ」
そう言ってジャミルがエリーシャの手をより強く握ると、ダリルはジャミルの手を掴んで捻る。
「いてててて、何するんだよ!」
「離してくれと頼んだだろう」
ダリルは静かだが怒りを孕んだ瞳でジャミルを見つめている。
「お前に何の権利があってそんなこと言うんだよ!」
ジャミルが吠える。
「俺は彼女の弟に頼まれているんだよ。お姉さんに変な虫がつかないように見張っててくれって」
その言葉にエリーシャは思わずダリルを見るが、ダリルは気にも止めない。そしてそのダリルの言葉に、先ほどエリーシャに話しかけていた令嬢が思わず口を開く。
「だからダリル様とニシャ様は最近異常に仲が良かったのですね」
なるほど、とその場にいた他の令嬢も騎士達も納得した顔になる。
「エリーシャ嬢は年齢も年齢だからニシャはとても心配していたんだ。だから姉さんのことは任せる、と言われていて」
またその言葉に思わずエリーシャはダリルを見つめるが、ダリルはにっこりと頬笑む。
「それって、つまり殿方としてエリーシャ嬢のことを任されたってことですか」
令嬢達がきゃー!と賑わいの歓声をあげると、周りから確かにお似合いかもな、とか弟から直々に頼まれたんじゃ断れないだろとか勝手な発言が飛び交っている。
「な、な、な、」
エリーシャが顔を赤らめているとダリルがエリーシャの手を取って膝まずく。
「そういうことなのでエリーシャ、これからどうぞよろしくお願いします」
きゃー!!とまた令嬢達から喜びの歓声が上がり、騎士達からはなんだちゃっかりしてるなあいつ、と妬みの声が上がる。
「ダ、ダリル様、ちょ、ちょっとこちらへ!」
エリーシャが慌ててダリルの手を取り歩き出すと、背後からまた令嬢達の黄色い歓声が聞こえてきた。