「だったら一緒に勉強しよう!僕が教えてあげるよアリア!」
そう言ってはしゃぐイベリスに、アリアはとびきりの笑顔を向けた。そしてまたモルガとサイシアは悶絶する。
(うっわ可愛すぎる)
(……心臓が張り裂けそうだ)
アリアはふと自分で自分の姿をちゃんと見ていないなと思い、イベリスの部屋にある鏡の前に立った。
(わぁ、自分で言うのもなんだけどすごい綺麗……!前世の自分とは大違いね。やっぱりウサギみたいな姿と同じ髪色はシルバーグレーなんだ。肌すべすべで毛穴見えないな、すごい。でも、ずっとこの姿なのかしら?もうウサギみたいな姿になってみんなにモフモフしてもらえないのは嫌なんだけど)
鏡をしげしげと見つめながらそんな疑問を浮かべていると、またアリアの額の石と体が急に金色に光り、アリアはウサギのような姿に戻っていた。
(えっ、戻っちゃった!?もしかして戻りたいって思ったからなのかしら)
「アリア、その姿に戻れるんだね!よかった、人間のアリアも好きだけど、もうモフモフできないのかと思っちゃったよ」
イベリスはアリアをそっと抱き上げ、頬を擦り寄せた。
「聖獣は獣の形も人の形も自由自在になれると言い伝えられていますからね。アリアもそれができるのでしょう」
(よかった、あのままの姿だと心臓がもたない)
(ウサギみたいな姿、なんとなく安心するな)
モルガもサイシアもホッとして微笑みながら一人と一匹を見つめる。
「でもこの姿だと言葉を覚えるのは難しいかな?」
「この国の言葉を教えるのはその姿のままでも大丈夫だと思いますよ。何せ聖獣ですから」
イベリスの疑問にモルガが答える。その様子をアリアは鼻をひくひくさせながら眺めていた。
(モルガって何かあればすぐ聖獣だからって言うけど、そう言えばとりあえずなんとでもなるって思ってる節はないかしら?まあ、伝説の生き物みたいだし仕方ないのかもだけど)
それ以来、アリアはその姿のままイベリスからこの国の言葉を教わるようになった。
◇◆◇
「アリア、どうしてこんなところにいる」
アリアがイベリスの元に来てから半年が経ち、いつものようにイベリスの部屋を抜け出してアリアは城の周辺を探索していた。最初の頃は城の中を探索するだけだったが、城内のほとんどの場所を見尽くしたアリアは飽きてしまい、城の周辺まで足を伸ばすようになっていた。
今日いるのは城のすぐ隣にある騎士の鍛錬場だ。そこでは国専属の騎士たちが鍛錬する場所でサイシアもここで日々鍛錬をおこなっている。
獣姿だったアリアはその場で金色に光り人間の姿になった。
「最近サイシアの姿が見えないから、探しに来た。イベリスも気にしてたよ」
アリアがそう言うとサイシアは一瞬目を見開きほんの少しだけ顔を赤らめるが、すぐに真顔になって口を開く。
「最近は魔物討伐と巡回でイベリス様のところに行けなかったからな。だがもう任務も終わり、そろそろまたイベリス様のところに行けるはずだ」
「そっか、それはよかった」
すっかり言葉の話せるようになったアリアはそう言って嬉しそうに笑う。それを見てサイシアは片手で顔を覆いながら顔を伏せる。
(なんでそんな無防備に笑顔を向けてくるんだ、こっちはあまりの可愛さに心臓がもげそうなんだぞ)
サイシアの心の声など聞こえるはずもなく、そんなサイシアの様子にアリアは不思議そうに首を傾げた。