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心をいれかえた追放令嬢は転生してウサギのような聖獣になってイケメン王子たちにモフモフされます
鳥花風星
異世界恋愛ロマファン
2024年09月25日
公開日
19,611文字
完結
姉の婚約者を奪い贅沢極まりない暮らしをしたために愛想を尽かされて追放され、野垂れ死んだ令嬢メリア。
死に際に反省し次は誰かの役に立ちたい、存在するだけで誰かを幸せにできるようになりたいと願い目が覚めるとウサギのような見た目の不思議な生き物「聖獣」に生まれ変わっていた。
美しく可愛らしい第三王子のイベリスに拾われアリアと名付けられたメリアは、魔法使いモルガと騎士サイシアに出会いイベリスを狙う悪者からイベリスを守るために奔走する。
人の姿に変身したアリアに騎士のサイシアは何か特別な感情を抱き始めたようで……。

第三王子のイベリス、そしてイベリスに仕える魔法使いモルガと騎士サイシアのイケメンたちにアリアは毎日モフモフなでなでされて生きていく。

第1話

 あぁ、こんな最期を迎えるなんて……。




 大嫌いだった姉から婚約者を奪い、贅沢な暮らしをしていたら愛想を尽かされ結局追い出されてしまった。




 私のことを愛してる、好きなものは好きなだけ買うといいとあんなにいつも言っていたのに。でもわかったの、間違っているのは私だったってこと。


 みんな何度も注意してくれていたのに、私の耳には何も入ってこなかった。聞こうともしていなかったのだわ。




 誰の役にも立たず、疎まれてこうして追放された挙げ句に野垂れ死にするのね。




 どうか、生まれ変われるのならば今度はちゃんと誰かのために役に立ちたい。ただそこにいるだけで誰かの心を和ませるような、幸せな気持ちになれるような、そんな存在に……。






◇◆◇




(ハッ!ね、寝てた?えっ?あれっ?私、追放されて野垂れ死んだはずじゃ……)




 目を覚ました前世での追放令嬢メリアは、起き上がると違和感を感じ自分の体をまじまじと眺めた。




(なんだろうこの感覚、なんかいつもと違う、ってあれ?なんで体が毛に覆われているの?しかもなんか頭の方がちょっと重いし、音が大きく聞こえるような……っていうか何この手足!?)




 一刻も早く全身が見たい。そう思い周囲を見渡すと近くにあった池を見つけ、池の方へ歩き出す。だが、それは歩き出すという表現にはほど遠かった。




(え、なんで跳ねてるの?え?何?まさかこれって)




 恐る恐る池を覗くと、そこには以前の自分とは全く違う姿が映っていた。




(え、待って、何このウサギめっちゃ可愛い!シルバーグレーの毛並みはもふもふだしお目目もクリンとしてる。おでこになんか小さな石があるけど……金色で綺麗だわ。可愛いすぎ!って、いやいや違うでしょ。待って、なんで、なんで私ウサギになってるの!?まさか、生まれ変わった!?)




 呆然と池を眺めていると、背後から何か殺気めいたものを感じる。背筋が凍り、ゾワゾワとしてその場から立ち去りたいのに一歩も動けない。




(な、何この気持ち悪い怖い感じ、何?何がいるの?)




 そうっと、静かに後ろを見てみると、茂みの中に赤く光る目が何個も連なっていた。その光る目が少しずつ茂みから出てきて……!その姿は、一見オオカミのような姿をしてるがその口元からはありえないほどの大きな牙が出ている。




(え、オオカミ?じゃない?何この生き物!?えっ、まさか私狙われてる?食べられちゃうの!?ヤダヤダヤダ!)




 メリアは思わずダッシュするが、オオカミのような生き物たちはすぐさま追いかけてくる。ウサギの全速力でもあっという間に追いつかれてしまうのは目に見えた。




(ヤダヤダ、こんなところで死にたくない!せっかくこんな可愛いウサギに生まれ変わったのにこんなあっという間にオオカミみたいな変な生き物に食べられちゃうなんて!まだ誰のためにも役に立っていないのに!)




 メリアは走りながら祈った。もっと速く、もっと速く走りたい!




 そう祈った途端、メリアの額の石と足が金色に光ったかと思うと走る速度が異常に速くなった。




(う、え、え!?まって早い早い速い速い!いやー!)




 砂埃をあげてメリアはオオカミのような生き物をあっという間に離していった。










◇◆◇






(ういやあぁぁ!止まらないいいぃぃ!ど、どうしたらいいの、どこまで走るのこれ!?)




 ものすごい勢いでメリアはずっと走っていた。ウサギの脚は脆いはずなのに、こんなにものすごい勢いで走っていても骨折もせず異常もない脚に驚きを隠せない。




(な、なんか目の前にすごいお城みたいなの見えてきた、けどどうしよう、このまま行くと壁にぶつかっちゃうよね?え、待って、やだもうすぐ壁に、ぶつかる!)




 城のような建物が見えたかと思うと、あっという間に目の前に壁が出現した。このままでは確実にぶつかって死んでしまうだろう。




(ヤダヤダヤダ、お願いだから止まって!)




 メリアが祈ると、おでこの金色の石と共に体が金色に光り、急ブレーキをかけたかのように脚は止まった。壁の本当にすぐ目の前で。




(と、と、止まった……よかった)




 はあはあと息を切らしながらメリアはほっとする。息を落ち着かせてから辺りを見渡すと、目の前には大きな大きな城のような美しい建物がそびえ立っていた。




(このお城はどこのお城かしら?王都のものではないわよね、見たことないもの)




 首を傾げながら上を見上げると、遠くで声がするのが聞こえる。その声はどんどん近づいてきた。




「さっき窓の外に金色に光る何かが見えたんだ。こっちの方だったんだよ」


「イベリス様、お待ちください。確かにこちらの方で魔力のようなものを感じました。ですが城の結界をすり抜けるなどあり得ません。一体何かわからないのですから気をつけてください」




 小さい男の子の声と大人の男性の声。メリアは耳をピクピクとさせると、声の主は目の前の壁の曲がり角を曲がってメリアの目の前に現れた。




 十歳くらいだろうか。美しい金髪に翡翠色の瞳、色白の肌は透き通るようで可愛らしいという言葉がぴったりの少年だ。着ている服は上質なものでとても気品がある。そしてその少年を庇うかのように歩くのは二十五歳前後だろうか、若草色のローブを羽織り、薄い紫がかった白く長めの髪をゆるく一つに束ねた男がいる。




「モルガ!見て!ウサギがいるよ!」




 少年がメリアを見つけて嬉しそうに笑う。そしてそばにいた男はメリアを見て両目を見開いた。




「これは……!イベリス様、お待ちください。この生き物はウサギのようでウサギではありません、聖獣です!」


「聖獣?聞いたことあるような気がするけど、それってすごい生き物なの?」




 メリアを見て二人はあれやこれやと騒いでいる。




(え、なんだろう、この人たち。どちらもあり得ないほど綺麗……なんかすごいこっち見て騒いでるけど、なん、だ、ろ……)




 突然の眠気に襲われ、そのままメリアは気を失った。








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