毒の液体が槍となって襲い掛かる。
翠と雷は互いに援護しながら、ダグモへと迫っていた。
「よ~し、いっくよ~!」
翠がガトリングを構え、毒霧を吹き飛ばしながら弾幕を展開する。
「そんなもので、俺の毒を打ち消せると?」
ダグモが怠そうに呟くと、彼の周囲に漂っていた毒の霧が一気に濃くなった。
「なら、燃やすまでよ!」
雷が炎を纏った槍を振るい、毒霧を焼き尽くすように突進する。
「へえ……派手だねえ。でも……」
ダグモは片手を上げると、地面から毒液でできた大蛇を無数に生み出し、雷に向かって飛び掛からせた。
「チッ!」
雷が槍を振り払いながら後方へ跳ぶ。
だが、その瞬間、毒液の大蛇が弾け、毒の霧が戦場全体へと広がり始めた。
「おやぁ……さっきまでの威勢はどうしたんだい?」
ダグモが煽るように言う。
翠の顔から笑みが消える。
毒の濃度が異常に高い。このままでは味方の戦線が崩壊する。
「これは……ちょっとまずいかも~」
その時――
「臣永ェェェェェェェェェェェィィィィィィ!!」
突如、戦場に響き渡る轟音のような叫び声。それは、空に描かれる流星の軌跡と共に現れた。
「な、なんだ!?」
俺は驚きながら声のする方向を見上げた。
夜空に浮かぶ無数の星たちの中を、燃え盛る一筋の光が貫いていく。
それは、次第にその速度を上げ、地平線を照らす光となった。
「流星……いや……」
梓が息を呑みながらその光景を見つめる。
その流星は戦場のど真ん中に衝突すると、轟音と共に砂嵐を巻き上げ、目の前に広がる敵の群れと毒の霧を吹き飛ばした。
「なに、あれ……!?」
雷が驚きの表情を浮かべながら呟く。
砂塵が徐々に晴れていくと、その中心には一人の男が立っていた。
黒く艶やかな髪に、引き締まった体躯。
堂々たる立ち姿が、彼がただの人間ではないことを物語っていた。
彼の目は鋭く光り、その全身から放たれる圧倒的な気迫が戦場を支配していた。
「ガドラ……ホリシャシャ……エンコシ!」
俺の近くにいた三輪が息を呑んだ。
「ガドラって……世界ランク2位の……」と秋月一馬も驚く。
「ああ、矢神臣永なきいま、間違いなく、世界最強の男……!」
ガドラは砂埃を払いながら、前方の特級神徒たちを睨みつけた。
その目には、揺るぎない覚悟が宿っていた。
「少年たち、下がっていなさい」
結城翔と対峙していた三輪蓮と秋月一馬にそう言い放つ。
「いや、ちょっと待てよ、翔は俺たちが!」と一馬。
「君たちの事情は聴いた。だが、私も――……」
ガドラは静かに言った。「私も、怒っているんだ」
ガドラが拳を構える。
「臣永を返してもらうぞ!」
彼の叫び声が戦場を震わせる。戦場の空気が明らかに変わった。
全身から湧き上がるオーラが、敵の群れを押し返すほどの威圧感を放っていた。
「なんだ……この気迫……」
俺はその光景に圧倒され、立ち尽くした。
ガドラはゆっくりと足を踏み出し、戦場の中心へと向かう。
その歩みは静かでありながらも、確実に敵の注意を引きつけていく。
「特級神徒ども、この俺がまとめて排除する」
その言葉には絶対的な自信が宿っていた。
「まずは貴様からだ。銃の少年」
「おー、こわ」
結城翔が飄々と笑いながら銃を構えた。