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9-7: Wrath of the Sovereigns(神威の猛威)

砂嵐の向こうに浮かび上がる巨影。その数は、3体。上級神徒が古城を取り囲むように現れる。その巨大な存在感に、戦場の空気が一瞬で凍りついた。

「くそ……またかよ……!」

一馬が荒い息をつきながら拳を握り締めた。

だが、その巨影の上に立つ3つの人影が、さらに圧倒的な威圧感を放っていた。

「人間……?」

俺はその姿を捉え、目を疑った。だが、確かに3人の人間のような姿が、上級神徒の巨体を足場に立っている。その中心には、俺たちがよく知る顔があった。

「……翔? 結城翔なのか……!」

一馬がその名を呟いた瞬間、場がざわめき立つ。かつての仲間であり、信頼していた結城翔の姿が、そこにはあった。だが、その目には、もうかつての温かみは微塵もなかった。

「……誰だ?」

翔は冷ややかな声を放ち、一馬と蓮を見下ろした。その声には、かつての記憶のかけらさえも感じられない。

「翔……俺たちだ! 一馬と蓮だ! 覚えてないのか!?」

蓮が叫ぶ。だが、翔の表情は揺るがない。それどころか、わずかに笑みを浮かべてみせた。

「知らないよ。僕はANATを獲りに来た。それだけ」

翔の声は冷たく、絶望を突きつけるようだった。

隣に立つ2人の特級神徒戦場を見下ろしながらそれぞれ不気味な笑みを浮かべている。

「ふぅん、あれが……翔の言ってた元の仲間ってやつかしら」

特級神徒のひとりが妖艶な声で呟く。浮遊する剣が彼女の周囲を取り囲み、その鋭い刃がきらめいている。

「ねえ、ダグモ。そうよねえ」

「そうだろうな」とダグモ。

「まあ、覚える必要はない。どうせすぐ死ぬのだ」

ダグモが退屈そうに毒霧を漂わせる。その冷たい目が戦場全体を見渡していた。

「この圧……これが特級神徒……」

俺はガン・ダガーを握りしめ、3人の特級神徒を睨む。

圧倒的な力を持つ彼らの前で、全員が動揺を隠せなかった。

「お前、本当に翔なのか……?」

一馬が再び問いかける。

「翔! 俺たちが分からないのか!? 一緒に戦っただろ!?」

だが、翔はただ薄く笑い、肩をすくめただけだった。

「……無駄だよ」

黒磯が静かに呟く。その目は冷静だったが、内に潜む悲しみが滲んでいた。

「……奴はもう、結城翔じゃない」

「そうだよ。君が正解だ」

翔が冷たく呟き、エネルギーを込めた銃を構えた。

黒磯がそのターゲットに選ばれる。

「黒磯!」

俺が叫んだ瞬間、黒磯の身体がエネルギー弾に貫かれる。膝をつきながらも必死に剣を支えようとする彼の姿に、胸が締め付けられた。

「もう一発だな」

翔が再び銃を構えたその時、眩い光が戦場に広がった。

「やらせない!」

その声と共に天草が翔の前に立ちはだかる。全身が光に包まれ、覚醒した力が彼女を守る盾となっていた。

「天草……!」

俺が駆け寄ろうとした瞬間、ダグモが毒霧を撒き散らして進路を遮る。

「くそっ……!」

毒の前に立ちすくむ俺たちの前で、翠が泡を撒き散らしながら防衛線を張る。

「みんなを守らなきゃね~!」

翠が笑顔で叫びながら泡を放つが、セラフィナの浮遊する剣がその泡を切り裂いていく。

「泡が……切られるなんて……!」

翠が初めて表情を曇らせた。

「なら……もーーーっと本気を出さなきゃね~!」

翠は再びガトリングを構え直すが、セラフィナの剣がさらに迫る。

特級神徒たちが動き出し、戦場は蹂躙され始めた。次々と突破される防衛ラインに、俺たちは完全に追い詰められていく。

「こんなの……どうすればいいんだ!」

俺はガン・ダガーを握りしめ、震える手を必死に抑えた。

時計の針が残り30分を切る。だが、この時間を耐え抜く術は、誰にも分からなかった。



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