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9-5: Defenders of the Gate(門の守護者たち)

緋野翠の泡が上級神徒を包み込み、戦場の一角が激しい爆発に包まれる。

その壮絶な光景を横目に、俺たちは必死に4の門を守り続けていた。

だが――その時、新たな影が砂嵐の向こうから現れた。

「またかよ……」

秋月一馬が拳を握り締め、呆然と呟く。

「中級神徒……!」

俺はガン・ダガーを構え、迫りくる巨影を睨んだ。

戦況はさらに悪化していく。通信機から聞こえてくる報告が、戦場の空気を一層重くした。

「5の門が突破された! 現在、残った部隊はメインゲート死守のため王の間付近まで後退中!」

その報告に場がざわめき、空気が一瞬で凍りつく。

「くそっ……!」

俺は唇を噛み、目前の状況を整理しようとするが、次々と押し寄せる神徒たちに思考が追いつかない。

その時、通信機から梓の声が響いた。

「浮水くん、メインゲートまで来て! 防衛の要を任せる!」

「えっ、浮水がいなくなったらここは――」

俺は慌てて叫ぶが、その声は梓の冷静な指示にかき消される。

「4の門の指揮は黒磯風磨、灰島賢! 二人でその門を守って!」

「なっ…! 臨時隊長ってことか!?」

「そう! ちなみに私が暴走したんじゃなくて、これ、龍崎司令の命令だから!」

梓の声は落ち着いていたが、その裏には焦燥が滲んでいた。

「……了解。4の門へ急行する」

続けて、黒磯風磨の冷静な返答が通信機越しに届く。その声には迷いがない。

「んだよ……黒磯のやつ、やる気じゃねえか」

俺は手で前髪をがしがしと掻き、

「しゃあねえ、やるか!」

と、ガン・ダガーを握り直した。


中級神徒が次々と接近し、その巨体が城壁を圧迫していく。

その間にも、周囲には毒を撒き散らす下級特殊個体が再出現し、戦場はさらなる混乱に陥っていた。

「前方から来る! バリスタはまだ動かせるか?」

俺の声に、一般プレイヤーたちが慌ててバリスタを操作し始める。

「総力戦だ! この門は必ず守り抜くぞ!」

俺は拳を握り締め、力強く叫ぶ。

秋月と三輪も協力し、次々と迫る神徒を撃退していく。

凪のリボンが敵の動きを封じ、美雪がその隙を逃さず正確な一撃を加える。

俺たちは互いに声を掛け合いながら、戦場の混乱を何とか抑え込んでいた。

「おい、でっけえのが来るぞ!」

秋月が叫ぶ。俺は息を整え、冷静さを保つよう努めた。

「みんな、コアを狙うんだ! 隙を作れ!」

俺が指示を出すと、現着した黒磯が即座に動いた。

「前線は俺が張る! 援護を頼む!」

彼の力強い声に応じ、全員がその背を守るように動き始めた。

ドゴォォォンッ!!


黒磯の巨剣が中級神徒の肩を砕き、その巨体がよろめく。

「くそっ! 黒磯にばっかおいしいとこ取られてたまるかよ!」

秋月もやる気を見せて黒磯の背を追う。

「秋月、一人で突っ込むな!」

三輪が鋭く叫ぶが、一馬は拳を燃え上がらせながら飛び込んだ。

「燃えろおおお!!!」

燃える拳が炸裂し、中級神徒の腹部にめり込む。

その衝撃で神徒の体が反り返るが、それでも崩れない。

「チッ……しぶてぇ!」

秋月が舌打ちをした瞬間、凪のリボンが中級神徒の動きを束縛した。

「今よ!」

美雪が鋭く叫び、その一瞬の隙をついて黒磯が再び巨剣を振り抜く。


ゴオオォォン――!!


中級神徒の首が一閃され、巨体が轟音と共に地面へと崩れ落ちた。

決意の叫び

「よし……俺は俺のやれることを全うしよう!」

俺は自分に言い聞かせるように叫び、ガン・ダガーを構え直した。

塔の時計が再びカチリと音を立てた。


残り40分――。


だが、この時間がどれほど長いものになるか、俺には想像もつかなかった。

黒磯と俺が前線に立ち、一馬や三輪、凪、美雪がその背を支える形で、最後の防衛ラインを必死に守る。

「絶対に守り抜くぞ!」


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