緋野翠の泡が上級神徒を包み込み、戦場の一角が激しい爆発に包まれる。
その壮絶な光景を横目に、俺たちは必死に4の門を守り続けていた。
だが――その時、新たな影が砂嵐の向こうから現れた。
「またかよ……」
秋月一馬が拳を握り締め、呆然と呟く。
「中級神徒……!」
俺はガン・ダガーを構え、迫りくる巨影を睨んだ。
戦況はさらに悪化していく。通信機から聞こえてくる報告が、戦場の空気を一層重くした。
「5の門が突破された! 現在、残った部隊はメインゲート死守のため王の間付近まで後退中!」
その報告に場がざわめき、空気が一瞬で凍りつく。
「くそっ……!」
俺は唇を噛み、目前の状況を整理しようとするが、次々と押し寄せる神徒たちに思考が追いつかない。
その時、通信機から梓の声が響いた。
「浮水くん、メインゲートまで来て! 防衛の要を任せる!」
「えっ、浮水がいなくなったらここは――」
俺は慌てて叫ぶが、その声は梓の冷静な指示にかき消される。
「4の門の指揮は黒磯風磨、灰島賢! 二人でその門を守って!」
「なっ…! 臨時隊長ってことか!?」
「そう! ちなみに私が暴走したんじゃなくて、これ、龍崎司令の命令だから!」
梓の声は落ち着いていたが、その裏には焦燥が滲んでいた。
「……了解。4の門へ急行する」
続けて、黒磯風磨の冷静な返答が通信機越しに届く。その声には迷いがない。
「んだよ……黒磯のやつ、やる気じゃねえか」
俺は手で前髪をがしがしと掻き、
「しゃあねえ、やるか!」
と、ガン・ダガーを握り直した。
中級神徒が次々と接近し、その巨体が城壁を圧迫していく。
その間にも、周囲には毒を撒き散らす下級特殊個体が再出現し、戦場はさらなる混乱に陥っていた。
「前方から来る! バリスタはまだ動かせるか?」
俺の声に、一般プレイヤーたちが慌ててバリスタを操作し始める。
「総力戦だ! この門は必ず守り抜くぞ!」
俺は拳を握り締め、力強く叫ぶ。
秋月と三輪も協力し、次々と迫る神徒を撃退していく。
凪のリボンが敵の動きを封じ、美雪がその隙を逃さず正確な一撃を加える。
俺たちは互いに声を掛け合いながら、戦場の混乱を何とか抑え込んでいた。
「おい、でっけえのが来るぞ!」
秋月が叫ぶ。俺は息を整え、冷静さを保つよう努めた。
「みんな、コアを狙うんだ! 隙を作れ!」
俺が指示を出すと、現着した黒磯が即座に動いた。
「前線は俺が張る! 援護を頼む!」
彼の力強い声に応じ、全員がその背を守るように動き始めた。
ドゴォォォンッ!!
黒磯の巨剣が中級神徒の肩を砕き、その巨体がよろめく。
「くそっ! 黒磯にばっかおいしいとこ取られてたまるかよ!」
秋月もやる気を見せて黒磯の背を追う。
「秋月、一人で突っ込むな!」
三輪が鋭く叫ぶが、一馬は拳を燃え上がらせながら飛び込んだ。
「燃えろおおお!!!」
燃える拳が炸裂し、中級神徒の腹部にめり込む。
その衝撃で神徒の体が反り返るが、それでも崩れない。
「チッ……しぶてぇ!」
秋月が舌打ちをした瞬間、凪のリボンが中級神徒の動きを束縛した。
「今よ!」
美雪が鋭く叫び、その一瞬の隙をついて黒磯が再び巨剣を振り抜く。
ゴオオォォン――!!
中級神徒の首が一閃され、巨体が轟音と共に地面へと崩れ落ちた。
決意の叫び
「よし……俺は俺のやれることを全うしよう!」
俺は自分に言い聞かせるように叫び、ガン・ダガーを構え直した。
塔の時計が再びカチリと音を立てた。
残り40分――。
だが、この時間がどれほど長いものになるか、俺には想像もつかなかった。
黒磯と俺が前線に立ち、一馬や三輪、凪、美雪がその背を支える形で、最後の防衛ラインを必死に守る。
「絶対に守り抜くぞ!」