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9-2: Skybound Assault(空への突撃)

俺は荒れた息を整えながら、目の前の戦場を見据えた。

先ほど耳にした黒磯の活躍に、内心、焦る。

「負けてられない……!」

だが、その時だった。

空に、不気味な影が広がった。


ゴォォォォォォ――――!


「な、なんだ……!?」

砂塵の向こうから、巨大な影が浮かび上がる。

「あれは……飛行型……!?」

黒い翼を広げ、上空を旋回する巨大な影――それは、通常の神徒とは明らかに異なる異形だった。

「賢くん、いま通信で、あの飛んでるやつ、中級神徒だって……!」

近くにいた凪が、焦りを滲ませながら叫ぶ。

「ああ、聞いた」

俺は周囲を見渡す。他の門の上空にも、同じような飛行型神徒が複数迫っているのが見えた。

「ちくしょう。ほかの門まで構っている余力はないか……!」

俺は唇を噛みしめ、ガン・ダガーを構え直す。


ドガァァァァン!!!


中級神徒が口を開き、黒い爆弾を吐き出した。


ズガァァン!!!


爆風が城壁を吹き飛ばし、瓦礫が飛散する。プレイヤーたちの悲鳴が響く中、俺たちは反射的に身を伏せた。

「クソッ……! このままじゃ……!」

俺はガン・ダガーを握りしめながら、なんとか対策を考えようとする。だが、その間にも爆撃は続き、地上は焼け野原と化していった。

「全員、退避しろ!」

俺の声が響くが、避けきれずに吹き飛ばされるプレイヤーたちもいる。

「くそっ……!」

俺は瓦礫の隙間から中級神徒を睨みつけた。

「あいつを落とさないと、戦場が壊滅する……!」

「凪!」

俺は彼女に声をかける。凪はリボンを駆使し、接近してくる神徒の動きを必死に止めている。

「どうしたの、賢くん?」

「俺を空に飛ばしてくれ! 中級神徒を直接叩く!」

「え、ちょっと待って。それ本気……?」

彼女の顔に戸惑いが浮かぶ。

「ああ、本気だ。他に手がないんだ!」

俺は力強く頷き、ガン・ダガーを握りしめる。

「分かった……信じるよ!」

凪は大きく息を吸い込み、リボンを振りかざした。

「いくよ! 賢くん!」

彼女の声とともに、俺の体が宙へと放り投げられた。風が頬を切り、目の前の景色が一気に遠ざかる。

「うおおおおお!!!」

俺は叫びながら、飛翔する中級神徒の背後へと接近する。


ドドドドド……!


しかし、中級神徒は俺の動きを察知し、再び爆弾を吐き出してきた。

「クソッ……!」

俺は咄嗟にガン・ダガーを逆手に構え、引き金を引いた。発射された弾がスラスターのように作用し、体の軌道を変えながら爆弾をかわしていく。

「このまま――!」

俺は勢いをつけたまま中級神徒に迫り、浮遊器官に手を伸ばした。

「捕まえた……!」

俺はその背中にしがみつき、ガン・ダガーを突き立てた。硬い殻を貫く感触があり、内部から異音が響く。

「これで……どうだ!」

俺はさらに深く刃を刺し、最後に引き金を引いた。爆発音とともに浮遊器官が破壊され、中級神徒はバランスを失い始めた。

「落ちろ……!」

俺はその場を離れると、中級神徒が地面に叩きつけられるのを見届けた。

だが、その巨体はすぐに動きを再開し、再び破壊を始める。

「まだ動くのかよ……!」

俺は目の前の光景に愕然とした。

「くそっ……! ひとりでやるしか……!」

俺は必死にガン・ダガーを構え直すが、敵の動きは止まらない。

「……こんな時、翠の泡があれば……」

その思いが頭をよぎった瞬間、自分が誰かに頼ろうとしていることに気づき、情けなく感じた。

「だめだ……! ひとりでやるんだ……! 黒磯に先を越されたままでたまるか…!」

俺は奥歯を噛み締め、再び爆撃の雨の中に飛び込もうとした。

その時――

「援護する」

静かな声が背後から響く。

俺が振り向くと、浮水が無言で俺の横に並んでいた。

「……助かる」

俺は短く頷く。

「無駄な動きはするな」

浮水は淡々とした口調でそう言うと、双閃刀を静かに抜いた。

「……最速で終わらせる」

中級神徒が口を開き、再び爆弾を吐き出す。

「よし……やるぞ!」

俺たちは同時に飛び込んだ。

俺はガン・ダガーを握りしめ、浮水の動きに合わせて中級神徒の胴体に突撃する。

「コアを狙う!」

俺が叫ぶと、浮水は一瞬で敵の間合いに入り込み、双閃刀を素早く振り抜いた。

神徒の巨体が揺れる。

「そのまま……!」

俺はガン・ダガーを構え直し、最大の力を込めて引き金を引いた。


ズガァァァァン!!!


俺と浮水の連携攻撃が炸裂し、中級神徒はついにその動きを止めた。

「……決まったか?」

俺は荒い息をつきながら確認する。

塔の時計が、再びカチリと音を立てた。


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