――工業地帯・南部
矢神さんからの通信のあと、俺たちは嫌な予感に囚われていた。
四人そろって、黙して歩く。
ふいに、
「どうした、翠?」
「んー? なんかまた通信~。ピーターパン部隊の副隊長のAS_20JPだから~……あ~!梓ちゃんからだね~」
「梓から?」
「うん~。全部隊長にだって、なんだろ~?」
俺の胸に嫌な予感がよぎった。
「え……矢神さんが……?」
翠の口から、俺たちにも伝えられた。
それは、矢神臣永のアカウント凍結を知らせるものだった。
「……矢神さんが、凍結……?」
工業地帯の空気は一層重く、圧迫感が増している。
矢神さんが凍結された――その現実が、俺たちにのしかかる。
「どうしましょう、賢先輩……?」
翔の声が震えていた。
普段は陽気で元気な彼だが、今は恐怖と不安に飲まれたような表情を浮かべている。
俺が何かを言わなければならない、そう思うのに、言葉が出ない。
「賢くん……」
普段は冷静な美雪でさえ、焦りが見えた。
いつも落ち着いている彼女も、この状況には動揺しているのが明らかだ。
「……ねえ、賢くん。なんで下向いてるの?」
翠が、やけに穏やかだが芯のある声で俺を呼んだ。
いつもと違い、無邪気さは影を潜めている。
その声が、俺に現実に戻れと命じているように響いた。
「……すまない」
俺は息を吸い込み、落ち着こうとする。
矢神さんが凍結された今、俺たちがここで立ち止まるわけにはいかない。
時間を稼がれている間に、敵は着々と次の手を打っているはずだ。
「今は、まず俺たちができることを考えよう。敵が次に動く前に、工業地帯の中心部に行く」
矢神さんが凍結された場所――それが唯一の手掛かりだ。
何があるのかはわからないが、そこに行くしかない。
「……ここを突破して、矢神臣永を救出する」
「だよね~、私もそう思ってた~!」
翠が柔らかく微笑みながらも、その瞳には決意の光が宿っていた。
矢神さんがいない――それだけで、まるで支えを失ったような気分だ。
彼がいない戦場なんて、柱を失った城のように崩れかけている。
それでも、進まねばならない。
「おっけー、じゃあ行こっか~」
翠は素早くガトリング砲を構えた。軽やかな笑みを浮かべながら言った。
神徒の群れが迫る中、まずは翠がガトリング砲から発射した泡の弾幕を一気に放つ。
泡は軽やかに舞いながら神徒の動きを封じ込め、敵の一部を絡め取っていた。
彼女の攻撃は見た目の軽さに反して効果的だ。
「はいは~い!じゃまじゃま~!」
翔はすでに別の高所に移動しており、瞬時に敵の動きを捉え、正確に狙いをつけている。
「賢先輩、俺が遠距離で援護します!」
狙いを定めたスナイパーライフルから放たれる弾丸は、神徒の額を正確に射抜き、一体一体を確実に仕留めていく。
「サンキュー、翔! 美雪、前衛は任せたぞ!」
「了解です!」
美雪はレイピアを構え、迅速に突き刺す攻撃を連続で繰り出す。
彼女の突きは素早く、神徒の防御を一瞬で突破している。
「えいっ!」
美雪の突きが、見事に敵の中心を貫く。
俺もガン・ダガーを両手で握りしめ、前方の神徒に向けて一閃を放った。
双剣が鋭く敵を切り裂き、銃弾がその隙間を狙い撃つ。
体力を削り取られた神徒は次々に倒れていくが、その数は減る気配がない。
神徒たちは絶え間なく湧き上がり、俺たちに襲いかかる。
「数が多すぎる……!」
俺は瞬時に身を翻し、敵の攻撃をかわしながら次の一手を考える。
美雪が再び前線で猛威を振るい、華麗な動きで神徒の攻撃を回避しつつ、レイピアの鋭い突きで次々と敵を貫く。
「賢先輩、後ろも気を付けてください!」
翔が別の位置から狙撃しながら警告を飛ばす。彼は敵の動きに応じてポジションを変え、絶えず精密な射撃を続けていた。
敵の隙を見つけるたびに、彼の放った弾丸が神徒たちを正確に仕留めていく。
「わかってる!」
俺は素早く背後に振り返り、ガン・ダガーを構えて攻撃のタイミングを図った。
敵の動きが一瞬緩んだ隙に、再び剣を振るい、銃弾を放つ。
「翠、今がチャンスだ!」
俺が叫ぶと、翠はガトリング砲からさらに大規模な泡を放出した。
泡は広範囲に広がり、神徒の動きを一時的に封じる。
そして、泡が弾けるとともに、神徒が爆散していく。
「いっけ~!泡でバイバイだよ~!」
翠は楽しそうに笑いながらも、戦場全体を冷静に見渡していた。
その軽やかな動きは、敵の攻撃をまるで踊るようにかわしている。
俺たちは連携を強めながら、敵の群れを切り開いた。
神徒の群れは確かに強力だが、俺たちの連携攻撃には勝てない。
翔の正確な狙撃、美雪の華麗なレイピアの動き、翠の泡による封じ込め、そして俺のガン・ダガーが一つの流れとなって敵を圧倒していた。
「賢先輩、あと少しで群れを抜けます!」
翔が遠くから声をかける。
敵の数が次第に減ってきた。俺たちの攻撃は着実に効いている。
「このまま押し切るぞ!」
俺はさらに前進し、ガン・ダガーを構えて突進した。
敵の残党を追い詰めるように、一閃、また一閃。銃撃を混ぜつつ、俺は無駄のない動きで神徒を撃破していく。
翠、美雪、そして翔の支援を受けながら、俺たちは神徒の最後の波を押し返した。
矢神さんの不在があるにもかかわらず、俺たちは互いを信じ、戦場を支配していた。
「これで……最後だ!」
俺は最後の一撃を加え、神徒の群れを完全に壊滅させた。
疲労が全身に広がっていたが、俺たちはやり遂げた。
工業地帯の静寂が戻り、俺たちはしばらくの間その場に立ち尽くした。
「ふぅ……終わったね~」
翠がほっとした表情を浮かべ、ガトリング砲を肩にかけた。
「やりましたね!」
美雪も汗を拭いながら微笑んでいる。
翔も遠くから狙撃ポジションから降りてきて、俺たちに近づいてきた。
「さすがです!先輩方!」
俺は剣を収めながら、仲間たちの顔を見渡した。
そうだ、まだ終わっていない。
以前、矢神さんに救ってもらった記憶がフラッシュバックする。
「行くぞ。今度は俺が……俺たちが、矢神さんを救う番だ」
俺たちは再び進むべき道を見つめ、前進する意志を固めた。
これ以上の犠牲は出させない――その決意を胸に、俺たちは工業地帯の中心へと向かった。