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5-8: The Last Stand (最後の抵抗)

――工業地帯・南部


矢神さんからの通信のあと、俺たちは嫌な予感に囚われていた。

四人そろって、黙して歩く。


ふいに、緋野翠あけのすいが立ち止まった。


「どうした、翠?」


「んー? なんかまた通信~。ピーターパン部隊の副隊長のAS_20JPだから~……あ~!梓ちゃんからだね~」


「梓から?」


「うん~。全部隊長にだって、なんだろ~?」


矢神臣永やがみしんえいからではなく、副隊長の梓から全部隊長に?


俺の胸に嫌な予感がよぎった。


「え……矢神さんが……?」


翠の口から、俺たちにも伝えられた。


それは、矢神臣永のアカウント凍結を知らせるものだった。


「……矢神さんが、凍結……?」


工業地帯の空気は一層重く、圧迫感が増している。

矢神さんが凍結された――その現実が、俺たちにのしかかる。


「どうしましょう、賢先輩……?」


翔の声が震えていた。

普段は陽気で元気な彼だが、今は恐怖と不安に飲まれたような表情を浮かべている。

俺が何かを言わなければならない、そう思うのに、言葉が出ない。


「賢くん……」

普段は冷静な美雪でさえ、焦りが見えた。

いつも落ち着いている彼女も、この状況には動揺しているのが明らかだ。


「……ねえ、賢くん。なんで下向いてるの?」

翠が、やけに穏やかだが芯のある声で俺を呼んだ。

いつもと違い、無邪気さは影を潜めている。

その声が、俺に現実に戻れと命じているように響いた。


「……すまない」

俺は息を吸い込み、落ち着こうとする。


矢神さんが凍結された今、俺たちがここで立ち止まるわけにはいかない。

時間を稼がれている間に、敵は着々と次の手を打っているはずだ。


「今は、まず俺たちができることを考えよう。敵が次に動く前に、工業地帯の中心部に行く」


矢神さんが凍結された場所――それが唯一の手掛かりだ。

何があるのかはわからないが、そこに行くしかない。


「……ここを突破して、矢神臣永を救出する」


「だよね~、私もそう思ってた~!」


翠が柔らかく微笑みながらも、その瞳には決意の光が宿っていた。


矢神さんがいない――それだけで、まるで支えを失ったような気分だ。

彼がいない戦場なんて、柱を失った城のように崩れかけている。

それでも、進まねばならない。


「おっけー、じゃあ行こっか~」


翠は素早くガトリング砲を構えた。軽やかな笑みを浮かべながら言った。


神徒の群れが迫る中、まずは翠がガトリング砲から発射した泡の弾幕を一気に放つ。

泡は軽やかに舞いながら神徒の動きを封じ込め、敵の一部を絡め取っていた。

彼女の攻撃は見た目の軽さに反して効果的だ。


「はいは~い!じゃまじゃま~!」


翔はすでに別の高所に移動しており、瞬時に敵の動きを捉え、正確に狙いをつけている。


「賢先輩、俺が遠距離で援護します!」


狙いを定めたスナイパーライフルから放たれる弾丸は、神徒の額を正確に射抜き、一体一体を確実に仕留めていく。


「サンキュー、翔! 美雪、前衛は任せたぞ!」


「了解です!」


美雪はレイピアを構え、迅速に突き刺す攻撃を連続で繰り出す。

彼女の突きは素早く、神徒の防御を一瞬で突破している。


「えいっ!」


美雪の突きが、見事に敵の中心を貫く。


俺もガン・ダガーを両手で握りしめ、前方の神徒に向けて一閃を放った。

双剣が鋭く敵を切り裂き、銃弾がその隙間を狙い撃つ。

体力を削り取られた神徒は次々に倒れていくが、その数は減る気配がない。

神徒たちは絶え間なく湧き上がり、俺たちに襲いかかる。


「数が多すぎる……!」


俺は瞬時に身を翻し、敵の攻撃をかわしながら次の一手を考える。

美雪が再び前線で猛威を振るい、華麗な動きで神徒の攻撃を回避しつつ、レイピアの鋭い突きで次々と敵を貫く。


「賢先輩、後ろも気を付けてください!」


翔が別の位置から狙撃しながら警告を飛ばす。彼は敵の動きに応じてポジションを変え、絶えず精密な射撃を続けていた。

敵の隙を見つけるたびに、彼の放った弾丸が神徒たちを正確に仕留めていく。


「わかってる!」


俺は素早く背後に振り返り、ガン・ダガーを構えて攻撃のタイミングを図った。

敵の動きが一瞬緩んだ隙に、再び剣を振るい、銃弾を放つ。


「翠、今がチャンスだ!」


俺が叫ぶと、翠はガトリング砲からさらに大規模な泡を放出した。

泡は広範囲に広がり、神徒の動きを一時的に封じる。

そして、泡が弾けるとともに、神徒が爆散していく。


「いっけ~!泡でバイバイだよ~!」


翠は楽しそうに笑いながらも、戦場全体を冷静に見渡していた。

その軽やかな動きは、敵の攻撃をまるで踊るようにかわしている。


俺たちは連携を強めながら、敵の群れを切り開いた。

神徒の群れは確かに強力だが、俺たちの連携攻撃には勝てない。

翔の正確な狙撃、美雪の華麗なレイピアの動き、翠の泡による封じ込め、そして俺のガン・ダガーが一つの流れとなって敵を圧倒していた。


「賢先輩、あと少しで群れを抜けます!」


翔が遠くから声をかける。

敵の数が次第に減ってきた。俺たちの攻撃は着実に効いている。


「このまま押し切るぞ!」


俺はさらに前進し、ガン・ダガーを構えて突進した。

敵の残党を追い詰めるように、一閃、また一閃。銃撃を混ぜつつ、俺は無駄のない動きで神徒を撃破していく。


翠、美雪、そして翔の支援を受けながら、俺たちは神徒の最後の波を押し返した。

矢神さんの不在があるにもかかわらず、俺たちは互いを信じ、戦場を支配していた。


「これで……最後だ!」


俺は最後の一撃を加え、神徒の群れを完全に壊滅させた。

疲労が全身に広がっていたが、俺たちはやり遂げた。

工業地帯の静寂が戻り、俺たちはしばらくの間その場に立ち尽くした。


「ふぅ……終わったね~」


翠がほっとした表情を浮かべ、ガトリング砲を肩にかけた。


「やりましたね!」


美雪も汗を拭いながら微笑んでいる。


翔も遠くから狙撃ポジションから降りてきて、俺たちに近づいてきた。


「さすがです!先輩方!」


俺は剣を収めながら、仲間たちの顔を見渡した。

そうだ、まだ終わっていない。


以前、矢神さんに救ってもらった記憶がフラッシュバックする。


「行くぞ。今度は俺が……俺たちが、矢神さんを救う番だ」


俺たちは再び進むべき道を見つめ、前進する意志を固めた。

これ以上の犠牲は出させない――その決意を胸に、俺たちは工業地帯の中心へと向かった。

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