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5-4: Dual Threats (二重の脅威)

ナイトホークの斬撃が、槌の背中に深々と食い込み、エネルギー波が奴の内部で炸裂する。

その瞬間、槌の巨体が大きく揺らぎ、ついに崩れ落ちた。

鉄槌が地面に叩きつけられ、巨大な音とともに、奴の体が動かなくなった。


「……ふん」


俺は息を吐き出し、ナイトホークを下ろした。

ようやく、戦いが終わった――そう思った瞬間、工業地帯の静寂が戻ってきた。

あの異様な圧力が消え去り、空間が元の状態に戻っていくのを感じた。


「……片付いたか」


俺は周囲を確認しつつ、瓦礫の中を歩き出した。

だが、油断は禁物だ。

この戦いが終わっても、まだ何かが潜んでいるかもしれない。

この工業地帯には、まだ解き明かされていない謎が残っている。


「この先にも、まだ……」


途端に、空気が急に変わった。

冷たい刺すような風が吹きつけ、肌に違和感が走る。

――ただの風ではない。

新たな敵の出現を知らせる異質な気配だ。


「……新手か」


その言葉は自然に漏れた。


目の前には棘を無数に生やした異形。神徒・棘しんと・いばらが2体いた。


そいつらは、自慢の棘を全身に逆立たせ、俺を挟撃しようと同時に飛び掛かってくる。


だが――……


「おまえらではない」


相手にもならない。

いくら特殊固体が2体とはいえ、“下級”の雑魚にやられる俺ではない。


「さて、もういいだろう」


俺は地面に転がる棘の骸を向こうに声を放った。


「出てこい。多腕の封印者」


俺の声に反応し、低いを声を鳴らしながら、そいつは現れた。

無数の腕を持つ異形――神徒・縛しんと・ばくだ。


「上級神徒が……同時に3体とはな」


それも円、槌、縛。

過去に起きた“大規模攻略戦”や“連続通過クエスト”でラスボス――ゲートキーパーとして君臨し、各国のピーターパン部隊に大きな損害を与えた、上級神徒の中でも厄介な3体。


「……さて」


俺は息を吐き、冷静に状況を分析する。

この作戦、なにか策が巡らせられているのはたしかだ。

だが、目の前の敵を一体一体葬れば、その策ごと消し飛ばせる。


「いいだろう。えんは後回し……次は、おまえだ」


槌とは違い、縛は狡猾だ。

奴は純粋な力任せではなく、計算された動きで相手を拘束する術に長けている。

手数が多く、どの腕にも神力が込められている。

その力を喰らえば、ただでは済まない。


無数の腕が一斉に動き出し、俺に向かって伸びてくる。

触れれば即座に動きを奪われるのは明らかだ。

だが、俺の動きも無駄はない。

軽やかにかわしながら、ナイトホークを振り、斬撃を加える。

次々と腕を斬り落とし、縛の動きを遅らせるが、腕は無限に再生しているかのように湧いてくる。


「これがプレイヤーの動きを奪う、封印の力か」


全身を駆け巡る神力に体力が削られ、動きが鈍る。

だが、ここで焦る必要はない。

俺の攻撃も確実に縛の防御を崩している。


「攻略可能……」


静かに呟き、視線を鋭くさせる。

俺は最小限の動きで縛の腕をかわしつつ、次の一手を打つ準備を進める。

数々の腕がじりじりと俺を包囲し、逃げ場を無くそうとしている。

だが、その意図を見抜いている以上、俺にはまだ勝機がある。


「……見えた」


瞬間、俺は身体を低くし、攻撃の隙を突く。

ナイトホークを構え、最も脆弱な部分に向けて一閃。

剣が再び縛の腕を斬り裂くと同時に、本体にもダメージが加わる。

縛が一瞬よろける。


「これで終わりだ」


さらに斬撃を加えようとしたその瞬間、縛は全ての腕を一斉に収束させ、俺を完全に包囲しようとした。


「……そういう手か」


奴の全ての腕が襲いかかるが、俺はその動きを巧みにかわしつつ、再びナイトホークを振り下ろす。

縛の本体に確実に斬撃が入った。


「捨て身で封印にくるとは、だがその程度では俺は――……」


その時――背後から不吉な気配がした。


「……ォォォォオオオ!」


振り返ると、そこには再び神徒・槌しんと・ついの巨体が迫ってきていた。

奴が鉄槌を振りかざし、俺に向かって突進してくる。

縛だけでなく、槌も再び現れたとなれば、戦況は一気に厳しくなる。


「同時に二体か……」


だが、俺は動じない。

槌と縛、この二体が連携していることは予想していた。

二体同時に相手取るのは確かに厄介だが、俺にはまだ冷静さが残っている。

これまでの戦闘で得たデータを基に、次の一手を考える。


「やれなくはないな」


剣を構え直す。

焦りは禁物だ。

冷静さを保ち、敵の動きを完全に読み切ることがこの戦いの鍵だ。

槌の巨大な鉄槌が振り下ろされ、縛の腕が再び動き出す。

だが、その連携には隙がある。


槌の一撃を避け、縛の攻撃を紙一重でかわす。

そして、目の前の縛に向かって間合いを詰め、再びナイトホークを振り下ろした。


再び振り下ろされたナイトホークが縛の本体に食い込み、奴の動きが一瞬止まる。

だが、勝利を確信するにはまだ早い。

背後には再び神徒・槌しんと・ついが迫っている。


「……甘い」


振り返った瞬間、槌の鉄槌がすでに俺の背後に迫っていた。

即座に身を翻し、鉄槌を回避するが、その衝撃で周囲の廃材が宙に舞う。

槌の破壊力はやはり圧倒的だ。

だが、奴の動きには再び隙が生まれていた。


「……お前たちの動きは、すでに見切った」


二体を相手にするのは厄介だが、こいつらを俺が倒せば戦況は大きく変わる。

他のプレイヤーの負担は大きく軽減されるだろう。


「さあ、いくぞ」

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