目次
ブックマーク
応援する
7
コメント
シェア
通報
4-7: Facing the Truth (向き合う真実)

ランカー時代の俺のアカウント名――gray_sageグレイ_セージ


どうして緋野翠あけのすいがその名前を知っているのか、頭が真っ白になった。


「……え?」


俺は動揺を隠せず、思わず問い返した。


翠は楽しそうにニヤニヤしながら続ける。


「やっぱり! あの動き、絶対見たことあると思ったんだよー! ねえ、どうして隠してたの?」


「隠してたわけじゃ……」


言い訳を口にしようとしたが、翠は軽く手で制した。


「まあまあ、秘密にしておきたいこともあるよねー。でも、私にはもうバレちゃったから、しかたないよね?」


彼女はおどけたように笑い、俺の背中をポンと叩いた。


「ね、本当の名前、なんだっけ?」


「名前? 灰島。灰島賢だ」


「なら、賢くんだね。安心して、賢くんの秘密は私がちゃんと守るから!」


翠はニコニコしながら言った。


「そうだ! 私、いーこと考えた!」


翠の期待に満ちた笑顔を見て、なぜだか不安な気持ちが胸をよぎった。




――翌日。


大規模攻略戦のチーム編成が発表され、俺はさらに驚くことになった。


俺が配属されたのは、なんと翠がリーダーのチームだった。


「えー! 偶然~! よろしくね、賢くん♪」


翠は全く動じることなく、いつもの明るい笑顔を見せてくる。


「……お、おう」


俺は軽く答えつつも、内心では不安と期待が入り混じった気持ちを抑え込む。


その時、後ろから元気な声が聞こえてきた。


「はじめまして!」


振り返ると、そこには小柄少年――結城翔ゆうき しょうが立っていた。

彼は無邪気な笑顔を浮かべていて、その明るさが戦場に似つかわしくないほどだった。


「俺、結城翔ゆうき しょうっていいます! ジョブはスナイパーです!」


結城は初対面にも関わらず、すぐに俺に話しかけてきた。

その様子に俺は思わず笑ってしまう。


「なんか、結城くん、緊張してる?」


俺が軽く問いかけると、結城は顔を赤くし、少し戸惑いながら答えた。


「い、いえ。緋野先輩と同じチームだと思うと、緊張して……」


「へ~? なんかごめんね~?」


翠が笑いながら言うと、結城は慌てて手を振った。


「い、いえ! 全然大丈夫です!」


「賢くんを私のチームに入れるように指令にお願いしたら、じゃあ翔も連れていけって言われちゃったの。だから仲良くしてね~?」


翠は軽く肩をすくめながら言ったが、結城はその言葉に大きくうなずいた。


「……あ、はい! ジブン、ゼンゼン大丈夫です!」


なんか不憫だな、結城くん。

と思いながら、俺は苦笑いを浮かべる。


そして、大規模攻略戦は四人一組で行われることになっていた。


残る一人は――


「遅れてすみません!」


元気な声が響き、そこに現れたのは遠野美雪とおの みゆきだった。

彼女は息を切らして、まるで全力で走ってきたかのように見えた。


「あの、緋野さん、さっきの話、本当ですか……?」


美雪は合流するなり、翠に尋ねた。


「さっきの話って~?」


「その……賢くんを私のチームに入れるように指令にお願いした……とか」


「うん!ほんとだよ~!」


翠が無邪気に頷くと、その場に、しん……と一瞬の沈黙が訪れた。


そして美雪は鋭く息を吸うと、翠を真剣な目で見据え、宣言した。


「緋野さん、負けませんからね!」


「へ~? 仲間なのに~?」


翠は美雪の気合いに全く動じることなく、にこやかに笑っている。

美雪の「負けません」という言葉は、何か別の意味が含まれているようだったが、翠は気にしていない様子だ。


「あ、そうだ。賢君、昨日の夜のことは秘密にしてあるからね♪」


翠が俺に軽く言うと、美雪は顔を強張らせた。


「賢くん? 昨日の夜のことって、一体なんですか!?」


その問いに、俺は咄嗟に顔をそらした。


これから始まる大規模攻略戦――俺たちのチームは、どうやら賑やかになりそうだ。

コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?