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4-6: The Revelation (正体露見)

夜、あずさとの対話を終えた俺は、寮に向かいながら心にさまざまな思いを抱えていた。


廊下を歩く俺の足音だけが、静まり返った空間に響き、昼間の喧騒が嘘のように、建物全体が静寂に包まれていた。


部屋に戻ろうとしたその時、談話室の扉がふいに開いたのが目に留まり、俺は思わず覗いてみた。


そこにはバスタオルを肩にかけた緋野翠あけの すいがいた。


彼女の髪はお団子にまとめられ、頬は湯上がりのせいかほんのり赤い。

普段の明るい笑顔とは少し違った、柔らかな雰囲気を纏っている。


「あー! 転校生くんだ!」


翠は俺に気づくと、ニコニコしながら近づいてきた。


「こんな時間に何してるのー?」


「いや、ちょっと散歩してたんだ」


俺はそう答え、彼女の無防備な姿に思わず視線をそらした。


「緋野さんこそ、こんな時間に何してるんだ?」


俺が問い返すと、翠は悪戯っぽく笑いながら答えた。


「んー、お風呂上がりにね。ゲームでもしようかなーって! あ、それと、私のこと知ってるなら、翠でいいよー」


「あ、ああ、わかった」


翠は期待するような目で俺を見つめてくる。


「……わかったよ、翠」


「うん! よし! じゃあさ、転校生くんも一緒にどう? 絶対楽しいよ!」


翠の提案に、俺は一瞬戸惑った。

彼女とゲームをするなんて想像もしていなかったが、断る理由も特にない。


「まあ、少しだけなら……」


そう答えると、翠は嬉しそうに目を輝かせた。


「決まりー! じゃあ早速VRブースに行こー!」


俺たちは談話室の奥にあるVRブースに向かい、翠はあっという間にセットアップを済ませていた。


俺もヘッドセットを装着し、ゲームが始まった。


選んだのは、人気のシューティングゲーム。

敵を撃ち倒して進むシンプルな内容だが、SENETの訓練とは違い、リラックスできる。


ゲームが始まると、自然と集中モードに入った。

ゲーマーのさがだ。


敵が次々に現れる中、翠も軽快に敵を撃ち倒していく。

彼女の反射神経は抜群で、戦場でもその腕前が活かされているのだろうとすぐに分かった。


「転校生くん、やるねー!」


翠が楽しそうに声をかけてくる。


「いや、翠こそ……負けてないじゃんか」


俺も負けじと返すが、ゲームが進むにつれて俺の集中力はどんどん高まり、無意識に本気を出している自分に気づいた。


「すごーい! 君、強いじゃん!」


翠が驚いたように声を上げた。


ゲームが終わり、翠がゴーグルを外して俺に振り向く。


そして、少し考え込むような顔をしたあと、にやりと笑った。


「ねえ、転校生くん……もしかしてさ」


「ん? どうした?」


「君、gray_sageグレイ_セージじゃない?」


その名前を聞いた瞬間、俺の心臓が一気に跳ね上がった。

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