目次
ブックマーク
応援する
7
コメント
シェア
通報
4-5: Hidden Truths (隠された真実)

俺たちは、まるで戦争の最中ではないかのように穏やかに話していた。

あずさの無防備な姿を見ていると、つい彼女がピーターパン部隊の一員であることを忘れてしまいそうになる。

それだけ今の彼女は自然体で、リラックスしていた。


「なあ、梓……」


俺は、ずっと心の奥にあった疑問を口にした。


「最初に会ったとき、どうしてあんな場所にいたんだ?」


あのとき、梓が突然現れたのは、俺がSENETにログインしたからだと思っていた。


しかし、思い返してみると、彼女はすでに傷だらけで、激戦を終えたような状態だった。


あれは単なる偶然ではなく、何か別の理由があるのではないか――そんな気がしていた。


「んー、まあ……それは、極秘の任務だったんだよ」


梓は軽く笑いながら、肩をすくめてさらっと流す。

その返答はいつも通りの軽さだったが、どこか歯切れが悪い。


「本当か?」


俺はつい、問い詰めるような口調になってしまった。


「だーかーらー、極秘だって言ってるでしょ?」


梓は笑顔を見せたが、その裏に緊張感が見え隠れしていた。

俺はそれ以上追及することをやめた。


きっと彼女には話せないことがあるのだろう。


「さてと……」


梓は急に立ち上がり、体を軽く伸ばした。


「そろそろ行かなくちゃ」


「もう行くのか?」


「なに? 寂しいの?」


「いや、別にそんなわけじゃな」


「ふふっ。うそ。でも今度はすぐに会えるよ」

「それ、ほんとか?」

「うん。大規模攻略戦、私も参加するから。賢も選ばれたんでしょ?」


その言葉を聞いて、俺は一瞬、息を呑んだ。

大規模攻略戦――俺たちがこれから挑む、大きな戦い。

それに梓も参加するという事実が、俺の胸に重くのしかかった。


「大規模攻略戦、梓も……」


俺は拳を握りしめた。

これまで以上に手強い相手が待っている。

それに、梓も戦うのだ。

でも、それは当然なのだ。

梓は、エリート――ピーターパンなのだから。


「ねえ、賢」


梓は俺の表情に気づき、少し優しい声で言った。


「妹さんのこと、聞いたよ。……必ず助けようね」


その一言で、心の中の緊張が少しだけほぐれた。


妹の葉奈はなを救う――それが今の俺の最優先課題だ。

梓が力を貸してくれるなら、きっと道が開けるはずだ。


「ありがとう、梓」


自然と感謝の言葉が口をついた。


梓は小さくうなずき、少し遠くを見つめながら言葉を続けた。


「全部が終わったらさ、もっと広い場所で話そうよ。こんなところじゃなくて、草原とか、風が気持ちいい場所がいいな」


彼女の提案に、俺はすぐにうなずいた。


「ああ、次はもっとゆっくり話そう」


梓は俺に軽く手を振り、背を向けて歩き出した。


その背中を見送りながら、俺は改めて自分に言い聞かせた。


大規模攻略戦――絶対に負けられない。


俺は、もっと強くならなければいけない。


妹を、そして仲間を守るために。


梓の姿が完全に見えなくなるまで、俺はその背中をじっと見つめていた。

コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?