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4-3: Clash of Talented (才女の激突)

「マジで……すげぇな」


俺の隣で、黒磯風磨くろいそ ふうまが呟く。

腕を組んでいるが、その目は二人の動きを追って離さない。

彼もまた、目の前の模擬戦に集中している。


「二人ともまさに怪物級だ。雷の槍、あれはただの炎じゃねぇ。エネルギーの密度が桁違いだよ」


雷の槍から放たれる紅炎が、まるで生き物のように翠を追い詰めている。

その炎はただの火ではなく、強力なエネルギーが凝縮された攻撃だ。

一方、翠も負けてはいない。

彼女は無数の泡を生成し、雷の攻撃をかわしつつ、笑顔を絶やさない。


「それに、翠もやべぇ……あの泡、防御だけじゃねぇ。雷の攻撃を吸収して、その力を利用して自分の動きを加速させてるんだ。だから雷のスピードについていける」


黒磯の言葉に俺は驚きを隠せなかった。

翠の動きは、雷の攻撃をかわすたびにますます速くなっているように見える。

まるで、雷の攻撃自体を力に変えているかのようだ。


「でもよ、これがどこまで通用するか……」


黒磯がそう呟いた時、雷が槍を高く掲げ、周囲の空気が一気に熱を帯びた。

彼女の全身から放たれるエネルギーが、会場全体を圧倒し、まるでその空気さえ燃やし尽くすかのようだ。


「さすがに……頭にきたわ……ッ!」


雷の叫びと共に、彼女の槍が紅く輝き、一瞬で巨大な炎の柱が翠に向かって放たれた。

それはまるで世界を焼き尽くすかのような力だ。

しかし、翠も負けていない。

彼女は楽しそうに笑みを浮かべながら、両手を広げ、大量の泡を生み出した。


「雷ちゃん、いつも熱いね~。でも、私もまだまだ負けないよ~!」


翠の無邪気な声が響くが、その背後には確かな自信が感じられる。

泡が雷の炎を吸収し、一瞬でそれを打ち消していく。

俺はその光景に釘付けになり、どちらが勝つのか全く予想がつかなくなっていた。


「どっちが勝つんだ……?」


俺は息を呑んで戦いの行方を見守っていた。

次の瞬間、勝敗が決まる――そう感じた時、


「そこまでだ」


突然場内に冷静な声が響き渡った。


その声は、場の緊張感を一瞬にして解いた。


俺たちは一斉にその声の主に目を向ける。


そこには龍崎修一郎りゅうざき しゅういちろう指令が立っていた。


彼の冷静で鋭い眼差しが、戦場の熱気を鎮めている。


「ふたりとも。もう十分だ」


その言葉に、雷は槍を下ろし、悔しそうな表情を浮かべる。


翠も泡を消し、同じく不満げな顔をしていた。


二人とも、まだ戦い足りないという思いが見え隠れしているが、龍崎指令の命令には逆らえない。


「なんで止めるのよ! あと少しでこいつを倒せたのに!」


雷が不満げに声を荒げる。その顔には明らかに悔しさが滲んでいる。


「そうだよ~、もっと遊びたかったのに~」


翠も頬を膨らませ、軽く文句を言う。

さっきまでの緊張感が嘘のように、子供じみた態度だ。


「指令ぇ~、もうちょっとだけ延長しよ~?」


翠が無邪気にお願いするが、龍崎指令は首を横に振る。


「ダメだ。これ以上は意味がない」


「あるもん! 雷ちゃん、まだ本気出してないでしょ?」


翠が不満そうに腕を組みながら言う。

それに対し、雷もすぐに声を上げた。


「そうよ! あと一撃で勝負がつくはずだったのに!」


雷は大きく溜息をつき、槍を肩に担ぎ直す。

そして、ふと郭 かく りょうの方を見やり、声をかけた。


「亮、あんたもそう思うでしょ?」


郭は困惑した表情を浮かべながらも、龍崎指令に視線を送り、静かに言った。


「いや、ここで終わりだ。次の任務が控えている」


「えぇぇぇ~!?」


翠と雷は同時に声を上げ、まるで子供が駄々をこねるように抗議する。


「任務なんて後でいいじゃん! ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ延長してよ~!」


翠は龍崎指令に詰め寄る。


「私もよ! 勝負がつかないままじゃ納得できない!」


雷も同じく声を荒げた。


「二人とも黙れ。任務優先だ」


龍崎指令の冷静な声が場を一瞬で静めた。


雷と翠は、一瞬だけ黙り込む。


だが、その後すぐにお互い顔を見合わせ、不満げな表情を浮かべる。


「はーい。じゃあこれでやめまーす。でも、次も絶対に勝ちまーす」


翠がわざとらしく手を上げ、雷に挑発的に言った。


「ふん、言ってなさい。てか、勝ってないでしょ。次はその減らず口、徹底的に黙らせてやるわ」


雷は冷静な表情を保ちながらも、瞳には鋭い闘志が宿っている。


結局、二人はぶつぶつと文句を言いながらも、任務のために去っていった。


その背中を見送りながら、俺と黒磯は同時に同じ言葉を言った。


「もっと……強くならなねえとな……」

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