教室の窓から差し込む午後の柔らかな日差しが、俺の机を照らしている。
黒板には数式が並び、先生の声が淡々と教室に響く。
「次の問題は、x³の関数の極値について考えてみましょう」
普通の日本の高校二年生の数学の授業。
しかし、ここUNPIS《アンピス》では、むしろこんな日常がおかしく思える。
俺はノートに数式を書き込みながら、ふとクラスの全体を眺めた。
やはり、
同じ学年ではないのだろうか。
最初の出逢いから、まだ一度も再会できていない。
「ねえ、賢くん」
そんなことを考えていると、隣の
「この問題、どう解くんだっけ?」
凪が見せたノートには、関数の問題がまだ解かれていない。
俺は一瞬考えてから、簡単に説明を始める。
「こういうときは、まずここをこうして……それから、これを使えばいい」
凪は俺の説明をじっと聞きながら、うんうんと頷いてノートに書き込んでいく。
「あ、そうか……ありがとう、賢くん!」
凪の表情がぱっと明るくなるのを見て、俺は小さく笑った。
「そんなに難しくないさ」
と言いつつ、俺もノートに手を動かす。
授業が終わると、クラスの生徒たちは一斉に席を立ち、廊下へと繰り出していく。
「賢くん、今度の試験、どうするの?」
凪が荷物を整理しながら、俺に話しかけてきた。
「そうだな……」
俺が答える前に、凪の後ろから
「賢くん、訓練いきましょう!」
美雪の元気な声に振り向く。
訓練の時間が来たらしい。
俺も席を立ち、二人と一緒に廊下を歩き始める。
「今日は司令官から、特別な作戦の話があるみたいですよ」
と、美雪が言う。
「特別な作戦って、前にちょっと話してたやつか?」
俺が聞き返すと、美雪の表情が少し真剣なものになる。
「そうです。SENETには普通のクエスト以外に、特別なクエスト――キークエストがあるんです」
「ほお……キークエスト」
「キークエストは、クリアすれば上位存在を追い払う手がかりが手に入る超重要なクエストなんですけど、普段はピーターパン部隊のメンバーしか参加できないんです」
「難易度がやばすぎて、危険だからね」
と、凪が補足する。
「でも、大規模なキークエストになると、ピーターパン部隊だけではさすがに攻略できないので、一般プレイヤーの中から選抜して参加させることもあるんです」
「……なるほどな」
「選抜メンバーの発表、緊張するよねー。美雪なんて、昨日から緊張するから賢くんと一緒に発表聞きたいーって言ってたんだから」
凪がからかうように笑うと、美雪は顔を赤らめて慌てて反論した。
「ち、違いますよ! 凪ちゃん、もう……!」
二人のやり取りに、俺も少し笑ってしまったが、気を引き締めて訓練場に向かうことにした。
この学校の本番は、放課後にある。