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2-8: The Arrival of Hope (希望の到来)

「これ、私たちの手には負えないって!」


水上凪みなかみ なぎの焦りの声が、緊張感を一層高めた。


目の前には、無数の敵がひしめき、その中央に異様に大きな敵がゆっくりと動き出していた。

その巨体が生み出す圧倒的な威圧感に、俺たちは一瞬で飲み込まれてしまう。


「どうする……この数相手に、勝てる気がしない……」


クリアゲートはもうすぐそこなのに……。


頭が真っ白になり、焦燥感だけが募っていく。

ここで逃げるわけにはいかない。

俺には、妹の葉奈はなを助けるという絶対的な目的があるんだ。引けるはずがない――。


その時だった。


「あれ……!」


凪の鋭い声が、俺の意識を引き戻す。

上空から、何かが閃光のような速さで降ってきた。


「えっ……?」


驚きで声が漏れる。

敵の群れの真ん中に、それは着地した。

強烈な風圧が周囲を吹き飛ばし、瓦礫が舞い上がる。


「誰だ……?」


信じられない光景に、言葉を失った。


「まさか……矢神やがみ臣永しんえい?」


凪が、息を整えながら小さく呟く。


「矢神? 誰だ、そいつは」


「日本支部のエースプレイヤーで、ピーターパン部隊のリーダーよ」


「エース……この人が……?」


矢神臣永。

――日本支部のエース、ピーターパン部隊のリーダー。


矢神が手にしているのは、圧倒的な威圧感を持つ大剣。

だが、それはただの剣ではない。

その刃からは、力強いエネルギー波が漂い、瞬時に戦況を支配しているのがわかる。


「すごい……」


俺はただ圧倒されるばかりだった。

矢神は無駄な動き一つなく、冷静に敵の弱点を見極めて一撃で仕留めていく。

まるで、彼の存在が戦場全体を支配しているかのようだった。


「これが……ピーターパン部隊の実力か……」


矢神の圧倒的な力と冷静さに、俺は立ち尽くすしかなかった。

戦場の支配者とは、まさに彼のことだろう。


すべての敵を一掃した矢神が、静かに俺の前に降り立つ。


「お前は、仕組まれてここに来た」


その冷静な声に、俺は動揺を隠せなかった。


「……どういうことだ?」


「お前の家のゲームは、何者かによってSENETに繋がれた。gray_sageグレイ_セージを、この世界に引き込むためにな」


「gray_sage《グレイ_セージ》……俺を……?」


俺がかつて使っていたハンドルネームが、こんな形で――。


「誰かが、俺をこの世界に引きずり込んだのか?」


疑念と不安が頭を駆け巡る。

矢神に問い詰めるが、彼は冷静に続ける。


「そうだ。だが、まだ調査は途中だ」


矢神の冷静な口調が、まるで俺の焦りを見透かしているかのようだった。

しかし、そんな簡単な説明で納得できるはずもない。


「待て、もっと詳しく――」


その瞬間、矢神が素早く剣を振り上げ、空気が震えた。


「きゃっ!」


凪と美雪が小さな悲鳴を上げる。

剣が巻き起こした風圧に、俺たちは一瞬で吹き飛ばされた。


そうして、クリアゲートに体が突っ込み、次の瞬間、視界が歪み、意識が急速に現実に引き戻された。


「一体……何が……」


混乱したまま、呆然と立ち尽くす俺。

矢神に強制クリアさせられたことよりも、伝えられた情報に混乱していた。


誰かが俺をSENETに引き込んだ。

そして、そのせいで葉奈まで巻き込まれた

――胸の中に疑念と不安が広がっていくのを感じた。

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