「これ、私たちの手には負えないって!」
目の前には、無数の敵がひしめき、その中央に異様に大きな敵がゆっくりと動き出していた。
その巨体が生み出す圧倒的な威圧感に、俺たちは一瞬で飲み込まれてしまう。
「どうする……この数相手に、勝てる気がしない……」
クリアゲートはもうすぐそこなのに……。
頭が真っ白になり、焦燥感だけが募っていく。
ここで逃げるわけにはいかない。
俺には、妹の
その時だった。
「あれ……!」
凪の鋭い声が、俺の意識を引き戻す。
上空から、何かが閃光のような速さで降ってきた。
「えっ……?」
驚きで声が漏れる。
敵の群れの真ん中に、それは着地した。
強烈な風圧が周囲を吹き飛ばし、瓦礫が舞い上がる。
「誰だ……?」
信じられない光景に、言葉を失った。
「まさか……
凪が、息を整えながら小さく呟く。
「矢神? 誰だ、そいつは」
「日本支部のエースプレイヤーで、ピーターパン部隊のリーダーよ」
「エース……この人が……?」
矢神臣永。
――日本支部のエース、ピーターパン部隊のリーダー。
矢神が手にしているのは、圧倒的な威圧感を持つ大剣。
だが、それはただの剣ではない。
その刃からは、力強いエネルギー波が漂い、瞬時に戦況を支配しているのがわかる。
「すごい……」
俺はただ圧倒されるばかりだった。
矢神は無駄な動き一つなく、冷静に敵の弱点を見極めて一撃で仕留めていく。
まるで、彼の存在が戦場全体を支配しているかのようだった。
「これが……ピーターパン部隊の実力か……」
矢神の圧倒的な力と冷静さに、俺は立ち尽くすしかなかった。
戦場の支配者とは、まさに彼のことだろう。
すべての敵を一掃した矢神が、静かに俺の前に降り立つ。
「お前は、仕組まれてここに来た」
その冷静な声に、俺は動揺を隠せなかった。
「……どういうことだ?」
「お前の家のゲームは、何者かによってSENETに繋がれた。
「gray_sage《グレイ_セージ》……俺を……?」
俺がかつて使っていたハンドルネームが、こんな形で――。
「誰かが、俺をこの世界に引きずり込んだのか?」
疑念と不安が頭を駆け巡る。
矢神に問い詰めるが、彼は冷静に続ける。
「そうだ。だが、まだ調査は途中だ」
矢神の冷静な口調が、まるで俺の焦りを見透かしているかのようだった。
しかし、そんな簡単な説明で納得できるはずもない。
「待て、もっと詳しく――」
その瞬間、矢神が素早く剣を振り上げ、空気が震えた。
「きゃっ!」
凪と美雪が小さな悲鳴を上げる。
剣が巻き起こした風圧に、俺たちは一瞬で吹き飛ばされた。
そうして、クリアゲートに体が突っ込み、次の瞬間、視界が歪み、意識が急速に現実に引き戻された。
「一体……何が……」
混乱したまま、呆然と立ち尽くす俺。
矢神に強制クリアさせられたことよりも、伝えられた情報に混乱していた。
誰かが俺をSENETに引き込んだ。
そして、そのせいで葉奈まで巻き込まれた
――胸の中に疑念と不安が広がっていくのを感じた。