「準備はいい?」
俺は無言で頷いた。
SENETの世界に入る準備はすでに整っている。
これが妹、
緊張と期待の入り混じる中、俺は目の前にある特殊なカプセル——「クレイドル」と呼ばれる装置に足を踏み入れた。
俺は装置の中に体を横たえ、目を閉じた。
全身が徐々に重力から解放されるような感覚に包まれていく。
瞼の裏に、『SENET』という文字が青く浮かび上がる。
驚いて目を開けようとしても、もう景色は変わらない。
「大丈夫です。深呼吸してください」
だが、俺の心臓はすでに激しく鼓動を打ち始めていた。
現実とは異なる戦いの始まりだ。
「目が覚めたら……もう、そこは戦場なので」
「あ、ああ」
『|Login sequence starts《ログインシーケンス開始》』
英語の音声が鼓膜を叩く。
骨端線が閉じる前の子どもしか、このVRシステムは使えない。
普通のVRゲームとは一線を画すこのシステム。
クレイドルの中で意識を電脳空間にダイブさせることで、SENETの世界にアクセスすることができる。
『
次の瞬間、強烈な引力に引き込まれるような感覚が体全体を包み込んだ。
俺の意識は急速にSENETの世界へと転送される。
鮮やかな光に包まれ、体が軽くなる。
急速に変化する周囲の景色。
そして目の前に広がったのは、荒廃した都市のようなフィールドだった。
ビルが崩れ、道路はひび割れ、機械の残骸が至るところに散乱している。
「やっぱり……無駄にリアルだな」
俺は思わず呟いた。
まるで映画の世界に飛び込んだような感覚だ。
「気をつけてね、賢くん。この世界では何が起こるかわからないから」
凪が通信機越しに警告をくれる。
「ああ」
俺は気を引き締め、SENETの世界に集中する。
この世界で妹を見つけ、助け出す。
どんな困難が待っていようと、俺は前に進まなければならない。
だが、その決意もつかの間、俺はすぐに窮地に追い込まれた。
「敵が来た! 正面!」
凪の警告が耳元に響いた瞬間、俺の目の前に巨大な機械兵が姿を現した。
「くそっ……いきなりかよ!」
その圧倒的な存在感に、俺は一瞬で硬直してしまう。
「賢くん、後ろにも!」
美雪の声がさらに焦燥感を煽る。
俺は振り返るが、すでに背後にも別の敵が迫っている。
「どうすりゃいいんだ……!」
改めてきたSENETの戦場で、俺は自分の無力さを痛感した。
この現実と変わらない戦場は、想像以上に過酷だ。
焦りと恐怖が頭を支配し、冷静な判断ができない。
「冷静になれ……落ち着け、俺……!」
そう自分に言い聞かせるが、体は思うように動かない。
その瞬間、目の前の機械兵が俺に向かって突進してきた。
巨大な拳が迫る。避けられない——
「賢くん!」
凪の叫びと同時に、俺は咄嗟に横に飛び退いた。
が、動きが微かに遅れた。
敵の拳が俺の体をかすめ、衝撃が全身に走る。
視界が揺れ、地面に叩きつけられた。
「……やべぇ……これ」
まるで現実のような痛みが体を走り、息を詰まらせた。
この世界では、現実と同じように痛みを感じる。
SENETがただのゲームではないことを、改めて痛感した。
「賢くん、大丈夫!?」
凪が心配そうに呼びかける。
「……油断してた、すまない!」
俺は何とか立ち上がり、拳を握りしめた。
ここで負けるわけにはいかない。
「これからだ……!」
そう自分に言い聞かせ、俺は再びガン・ダガーを構えて敵に向かう。
だが、次の瞬間、フィールド全体に大きな振動が走った。