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2-5: Beneath the Surface (水面下)

「準備はいい?」


水上凪みなかみ なぎが隣で確認してきた。


俺は無言で頷いた。

SENETの世界に入る準備はすでに整っている。

これが妹、葉奈はなを助けるための手がかりになるかもしれない。

緊張と期待の入り混じる中、俺は目の前にある特殊なカプセル——「クレイドル」と呼ばれる装置に足を踏み入れた。


俺は装置の中に体を横たえ、目を閉じた。

全身が徐々に重力から解放されるような感覚に包まれていく。


瞼の裏に、『SENET』という文字が青く浮かび上がる。


驚いて目を開けようとしても、もう景色は変わらない。


「大丈夫です。深呼吸してください」


遠野美雪とおの みゆきが通信機越しに、優しい声で励ましてくる。

だが、俺の心臓はすでに激しく鼓動を打ち始めていた。

現実とは異なる戦いの始まりだ。


「目が覚めたら……もう、そこは戦場なので」


「あ、ああ」


『|Login sequence starts《ログインシーケンス開始》』


英語の音声が鼓膜を叩く。

骨端線が閉じる前の子どもしか、このVRシステムは使えない。

早乙女美月さおとめ みつきがそう言っていた。

普通のVRゲームとは一線を画すこのシステム。

クレイドルの中で意識を電脳空間にダイブさせることで、SENETの世界にアクセスすることができる。


Connection completed接続完了


次の瞬間、強烈な引力に引き込まれるような感覚が体全体を包み込んだ。

俺の意識は急速にSENETの世界へと転送される。


鮮やかな光に包まれ、体が軽くなる。

急速に変化する周囲の景色。

そして目の前に広がったのは、荒廃した都市のようなフィールドだった。

ビルが崩れ、道路はひび割れ、機械の残骸が至るところに散乱している。


「やっぱり……無駄にリアルだな」


俺は思わず呟いた。

まるで映画の世界に飛び込んだような感覚だ。


「気をつけてね、賢くん。この世界では何が起こるかわからないから」


凪が通信機越しに警告をくれる。


「ああ」


俺は気を引き締め、SENETの世界に集中する。

この世界で妹を見つけ、助け出す。

どんな困難が待っていようと、俺は前に進まなければならない。


だが、その決意もつかの間、俺はすぐに窮地に追い込まれた。


「敵が来た! 正面!」


凪の警告が耳元に響いた瞬間、俺の目の前に巨大な機械兵が姿を現した。


「くそっ……いきなりかよ!」


その圧倒的な存在感に、俺は一瞬で硬直してしまう。


「賢くん、後ろにも!」


美雪の声がさらに焦燥感を煽る。


俺は振り返るが、すでに背後にも別の敵が迫っている。


「どうすりゃいいんだ……!」


改めてきたSENETの戦場で、俺は自分の無力さを痛感した。

この現実と変わらない戦場は、想像以上に過酷だ。

焦りと恐怖が頭を支配し、冷静な判断ができない。


「冷静になれ……落ち着け、俺……!」


そう自分に言い聞かせるが、体は思うように動かない。

その瞬間、目の前の機械兵が俺に向かって突進してきた。

巨大な拳が迫る。避けられない——


「賢くん!」


凪の叫びと同時に、俺は咄嗟に横に飛び退いた。

が、動きが微かに遅れた。

敵の拳が俺の体をかすめ、衝撃が全身に走る。

視界が揺れ、地面に叩きつけられた。


「……やべぇ……これ」


まるで現実のような痛みが体を走り、息を詰まらせた。

この世界では、現実と同じように痛みを感じる。

SENETがただのゲームではないことを、改めて痛感した。


「賢くん、大丈夫!?」


凪が心配そうに呼びかける。


「……油断してた、すまない!」


俺は何とか立ち上がり、拳を握りしめた。

ここで負けるわけにはいかない。


「これからだ……!」


そう自分に言い聞かせ、俺は再びガン・ダガーを構えて敵に向かう。


だが、次の瞬間、フィールド全体に大きな振動が走った。

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