「先にゲートをくぐった方の勝ちだ」
俺たちは訓練用のSENETを通じて戦闘フィールドに降り立った。
静かな緊張が辺りを包む。
俺は両手に握ったガン・ダガーを構え、風磨に向かい合った。
一方、風磨は巨大な両手剣を肩に担ぎ、その重量をものともせずに立っている。
「今頃、観戦ブースには野次馬が集ってるぜ」
黒磯が挑発的な笑みを浮かべた。
俺は、手に汗を握りながら頷く。
大丈夫。ゲームに関していえば、修羅場はいくらでもくぐってきた。
「まあ、すぐ終わらせてやるよ」
黒磯が冷たく言い放つ。
自分に言い聞かせる。
ここでの勝敗は俺には関係ない。
俺がここにいる理由はただ一つ、妹の
それ以外のことは、どうでもいい。
「黒磯、俺の経験値になってもらうぜ」
その言葉に、黒磯が一瞬驚いたような表情を見せた。
が、すぐに不敵な笑みを浮かべる。
「はっ! 抜かせ!」
黒磯が一気に距離を詰めてきた。
その動きは驚くほど速い。
彼の重厚な両手剣が、信じられない速さで振り下ろされ、俺のガン・ダガーを砕こうとする。
俺は何とか双剣モードで防御したが、その衝撃が全身に走り、体が揺れる。
「ぐっ……!」
「おいおい!なんだそのビビリ方は! 俺ぁ赤ちゃんを相手にしてんのか!」
黒磯が嘲笑するように叫ぶ。
「これが本番なら、もう死んでるぞ! 転校生ッ!!」
黒磯の猛攻に俺は必死に耐えるが、そのスピードと破壊力に翻弄され続ける。
「くそっ……」
次々と繰り出される正確な攻撃に、俺はただ受け身に回るしかない。
黒磯の両手剣が俺の腹部に深々とめり込み、俺の体は吹き飛んで地面に叩きつけられる。
息が詰まり、視界がぼやけたが、それでも立ち上がろうと足に力を入れる。
「まだ立つのか? そろそろねんねの時間じゃねえのか⁉」
黒磯が冷たく言い放つ。
「……諦めるわけにはいかないんだ」
俺は歯を食いしばり、再び立ち上がる。
gray_sageとして戦ってきたゲームの世界が頭に浮かぶ。
今も同じだ。
相手の動きを読み、次の手を考え、最善の一手を打つ。
それはここでも――SENETでも通用するはずだ。
「終わりだ! 子守唄代わりに、受け取れよッ!」
黒磯の両手剣が再び迫る。
だが、俺は冷静に彼の動きを観察する。次の攻撃は見極めた……!
「ここだ……!」
俺は黒磯の攻撃をかわし、ガン・ダガーの双剣モードでカウンターを放つ。
黒磯の顔が一瞬驚きに変わる。
その隙に、俺の一撃が彼の腹に命中した。
だが黒磯は簡単には倒れない。
「はっ! ずいぶんと寝つきが悪ぃじゃねえか……‼」
黒磯が息を整えながら呟く。
しかし、俺も負けるわけにはいかない。
黒磯のリズムはつかんできた。
俺は、次の一手で勝負を決めることを心に決めた。
「これで終わりだ!」
俺は全力で黒磯に向かって突撃する。
ガン・ダガーを拳銃モードに切り替え、黒磯の両手剣の攻撃を巧みにかわしながら、決定的な一撃を放つ。
黒磯の体がぐらりと崩れ、その場に倒れ込む。
「待て……まだ勝負は……」
「待たないさ」
俺は息を整えて言った。
「勝利条件は、ゲートをくぐることだろ?」
俺はゲートに向かって駆け出した。
勝負は、俺の勝ちだった。