編入試験は、訓練用のSENETで行われた。
どうやら、この学校は本格的にプレイヤーの養成に特化しているようだ。
SENETでは、個人の専用の武器と、フィールドで拾える武器を駆使して戦うことになる。
専用の武器は意志の力で動き、特殊な能力を使える。
だが、砕かれたらそのゲーム中は使えなくなる。
俺の武器はガン・ダガー。
拳銃と双剣が融合した、ユニークな武器だ。
中距離の射撃攻撃と、近接戦の双剣を自在に切り替えられるのが特徴で、この戦闘スタイルは俺の得意とするところだ。
状況に応じて柔軟に戦う、それが俺の強みだ。
どうやら、個人資質や性格から専用武器は生成されるらしい。
一度ゲームが始まれば、クリアするか、ゲーム内で死亡するまでログアウトは不可能。そういう厳しい条件の中での戦いになる。
「まあ、変わったゲームではあるな」
肝心の試験は、驚くほど順調に進んだ。
射撃訓練では、的を一発で仕留め、全弾命中。
訓練官の驚いた顔が、頭に焼き付いている。
障害物レースでも、歴代の最高記録に近い速さで駆け抜け、気がつけばゴールしていた。
試験中、俺は体が自然と動き、頭が先に勝手に次の手を考えていた。
「……俺、結構やれるじゃん」
実際に自分の成績を見ると、トップクラスだ。周りの生徒たちが驚いた表情で俺を見ているのが分かる。
「おい、あいつが例の転校生か?」
「すごい成績だったらしいぞ。BOT相手とはいえ、あそこまで圧倒するとはな」
「ひょっとして、ピーターパン部隊狙ってるんじゃねぇか?」
背中に突き刺さるような視線と囁き声。
どうやら俺の成績は、すでに噂になっているらしい。
昨日転校してきたばかりなのに、もう注目されるとは思ってもいなかった。
そして、視線が集まる中、廊下を歩くのが少し辛くなってきた。
「おい、転校生」
その時、不意に前から声がかかった。
「お前、なんかすごい成績らしいじゃねぇか」
振り返ると、昨日肩がぶつかったあの少年がいた。
鋭い目つきで俺を睨んでくる。
俺が軽く流そうとすると、周りの生徒たちがざわざわと動き出した。
「うわ、黒磯だ……!」
「見ろよ、風磨が転校生に絡んでるぞ……」
不機嫌そうな顔で、俺を上から見下ろしている。
その圧倒的な威圧感に、俺は少し身構えた。
「編入試験、大した成績だったらしいな。でも、SENETはそんなに甘くねぇぞ」
黒磯風磨は挑発的に言い放ち、俺の前に立ちはだかる。
その場の空気がピリつき、周りの生徒たちが興味津々で注目しているのが感じ取れる。
「おい、無視してんじゃねぇよ」
「ナンパならお断りだ」
俺は冷静に返したつもりだったが、風磨の癪に障ったらしい。
「お前、転校してきたばかりで俺たちを舐めてんのか? BOT相手にいい成績出したからって、勘違いしてんじゃねぇぞ」
風磨の挑発に、俺の胸中で何かが燃え上がった。
挑まれて逃げるようなタマじゃない。
「……分かった。やるよ」
俺は静かに答えた。
風磨の口元に、ニヤリと笑みが浮かぶ。
「そうこなくちゃな。今すぐやろうぜ」
風磨が低く呟いた。「後悔すんなよ」
俺はその言葉を無視し、ただ自分の中で決意を固めた。この勝負で負けても構わない。俺が本当に守りたいのは、プライドなんかじゃない。――SENETの世界に囚われた
そのためなら、いくらでも場数を踏んでやる。腕を磨くために、どんな挑戦も受ける。
「やってやるよ」
俺は覚悟を決めた。