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1-6: The Chase(追撃)

「一体、どこに連れていくつもりですか?」


俺は声を震わせながら問いかけた。


目隠しされ、手足を拘束されたまま、車の中に押し込まれている。


何が起きているのか全くわからない。


「すぐにわかるわ。安心して、危害は加えないから」


前方から、女性の声が響く。


「安心……できるわけないだろ!」


俺は息を詰まらせ、冷静さを保とうと必死だが、全然状況が掴めない。


早乙女美月さおとめ みつきよ。これから長い付き合いになると思うから、名前だけでも覚えておいてね」


その女性は、穏やかでありながらも、妙に自信に満ちた声で自己紹介をした。


「早乙女さんね……。で、どうして俺をこんな目に……」


「それもすぐに説明するから。でも、今はおとなしくしててくれる?」


そう言って、美月は軽く流すように会話を切った。


車内は静かだ。


俺は何に巻き込まれたのか頭を巡らせながらも、手足の拘束の不快感が頭に重くのしかかる。


あずさと別れてから、一体どうしてこんな状況になったんだ?


現実に戻ったはずなのに、むしろ状況が悪化しているようにしか思えない。



やがて、車が停車し、誰かに引っ張られるようにして降ろされた。


目隠しが外され、周りを見渡した瞬間、俺は思わず息を呑んだ。


「なんだ、このバカデカい施設は……?」


目の前には、まるで要塞のような巨大な建物がそびえていた。


高い壁と、重厚な鋼鉄の門。


普通の施設とは思えないその威圧感に、俺は圧倒される。


「ようこそ。ANAT《アナト》の日本支部へ」


美月は俺の驚きを楽しむように微笑んだ。


「は……? なんだそれ……?」


「ANAT――世界二百カ国以上が加盟している組織の名よ。正式名称はAssociation of Nations Against Threats――脅威に対抗する国家連合」


「だから、意味わかんねえって!」


「要するに、SENETプレイヤーを支援するための国際軍事同盟ってとこね。ここはその日本支部ってわけ」


「SENETのプレイヤーを……支援する? 待て、なんで俺が?」


俺は混乱し、美月に問い詰めた。


「だってあなた、SENETをプレイしたでしょ?」


「いや、プレイしたくてしたわけじゃないんだ!」


「意図的じゃないことはわかってる。あなた、そしてあの子の強制ログインの原因については、こちらとしても現在調査中だから」


「あの子? あの子って……誰のことだよ?」


俺の胸に不安が募る。


その時、俺の目の前に、ゆっくりと移動式ベッドが運ばれてきた。


ベッドには、小さな人影が静かに横たわっている。


「……葉奈?」


俺の心臓が一瞬止まったかのように感じた。


ベッドに横たわっているのは、俺の妹、葉奈はなだった。


葉奈はすやすやと眠っているように見える。


だが、その様子は異様に穏やかで、深い眠りに閉じ込められているかのようだった。


全身に冷たい汗が流れ、体が硬直する。


「どうして……どうして葉奈がここに……?」


俺の混乱は限界に達し、言葉にならない。


美月は俺の肩に軽く手を置き、落ち着かせるように語りかけた。


「これからすべて話すわ。あなたがどうしてここにいるのか、そして妹さんがどうして目を覚まさないのか、ね」


俺はただ立ち尽くし、眠る葉奈を見つめながら、自分が何に巻き込まれたのか。


――そしてこれから何が起こるのかを考え巡らせていた。

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